第11話 古いルールが若い力を縛る

日本社会の特徴として、古くから続くルールや習慣がある。それは時に、秩序や安定をもたらす重要な役割を果たしてきた。しかし、時代が変わり、新しい価値観や技術が求められる現代において、こうした「古いルール」が若い世代の可能性を縛り、社会全体の成長を阻む要因になっているのではないだろうか。


たとえば、年功序列の文化だ。この仕組みは、かつて経済成長期の日本においては労働者の安定を支え、社会の発展を促す重要な役割を果たした。しかし現在では、成果よりも年齢や勤続年数が重視される風潮が、新しいアイデアや挑戦を抑制している。若い世代が斬新な提案をしても、年長者の前では「経験不足」として却下されることが少なくない。その結果、才能ある若者たちは挑戦の機会を失い、次第に無気力になってしまう。


また、就職活動や働き方においても、古いルールが変化を妨げている。就活の場面では、いまだに画一的な「新卒一括採用」が主流だ。これにより、学生たちは大学生活の大半を「就活」という一つのゴールに向けて費やさざるを得ない。多様な経験を積むよりも、企業が求める「型」に自分を押し込むことが求められる。この仕組みの中で、個性や才能が十分に発揮されることは難しい。


さらに、職場の慣習や働き方にも目を向けてみると、「根回し」「忖度」「会議のための会議」といった無駄なルールが数多く残っている。これらの習慣は、若い世代にとって非効率であるだけでなく、ストレスの原因にもなる。それでも、「昔からこうしてきた」という理由だけで継続され、改善の兆しが見えない。これでは、創造性や効率性を重視する若者たちが働き甲斐を感じることは難しい。


さらに、社会全体を見渡すと、伝統や慣習を重視する姿勢が新しい技術や価値観を受け入れる障壁となっていることがわかる。たとえば、デジタル化の分野では、ハンコ文化や紙中心の手続きがいまだに根強く残っている。その結果、行政手続きや企業の業務効率が大幅に遅れている。このような状況で、デジタルネイティブ世代がもつ技術力やスキルが活かされる場が少ないのは、大きな問題だ。


では、どうすればこの「古いルール」による縛りを解くことができるのだろうか。一つの方法は、ルールそのものを問い直すことだ。慣習や制度が「なぜ必要なのか」「今の時代に適しているのか」を定期的に見直すことで、不必要なルールを排除し、新しい仕組みを取り入れる柔軟性を持つべきだ。


もう一つは、若い世代にもっと発言権を与えることだ。年齢や経験に関係なく、意見やアイデアが尊重される文化を育むことで、若い世代の力を引き出すことができる。そのためには、年長者が「教える側」から「共に学ぶ側」へと意識を変える必要がある。


古いルールが若い力を縛る社会には限界がある。変化を受け入れ、柔軟な思考を持つことで、私たちは新しい時代に対応することができるはずだ。この国の未来を担う若者たちが自由に羽ばたけるようにするために、私たちは何を変えるべきなのか、一人ひとりが考え行動することが求められているのではないだろうか。

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