第7話 おじいさん、おばあさんが居座り続ける社会
日本の社会構造を見渡すと、政治、経済、文化のあらゆる分野で「おじいさん、おばあさん」が重要なポストを占め続けている現状が見えてくる。もちろん、経験や知識を積んだ高齢者が社会に貢献することは素晴らしい。しかし、若い世代の可能性や新しい価値観が封じられる状況が続けば、この国の未来にとって大きな損失となる。
政治の世界を見てみよう。国会議員の平均年齢は50代後半から60代、さらに閣僚や主要な役職に至っては70代以上が占める割合も高い。長年の経験を重ねた政治家たちは、安定感をもたらす反面、現代の問題に対応する柔軟性やスピード感を欠くことが多い。少子高齢化、気候変動、デジタル化などの新しい課題に対し、過去の成功体験に縛られたアプローチでは追いつかないことが明らかだ。
企業の現場でも同様だ。日本特有の年功序列制度の中で、経営陣の高齢化が進み、若手の意見が十分に反映されないケースが多い。新しい技術や働き方を取り入れようとする動きが遅れ、国際競争力が低下していると指摘されることもある。現場では「もっと効率的な方法がある」と感じている若い世代が声を上げても、保守的な体制の中で埋もれてしまう。
さらに、文化や慣習の面でも、高齢者が大きな影響力を持っている。例えば、ハンコ文化や紙中心の手続き、儀礼的な形式主義が未だに根強い。これらの慣習が、若い世代やテクノロジーに精通した人々にとっては不便で非効率に映ることは少なくない。しかし、長年それを守ってきた高齢世代が「伝統」としてそのまま維持しようとするため、変革が難しい状況が続いている。
このような状況は、若い世代にどのような影響を与えるのだろうか。まず、政治や経済の場で自分たちの声が届かないという無力感を抱く。次に、変化を求めても実現されない現実に失望し、やがて関心を失う。そして、最終的には「どうせ変わらない」と諦めてしまう。この連鎖が続けば、若い世代が主体的に行動する意欲を失い、社会全体の活力が低下する。
では、どうすればこの状況を改善できるのだろうか。一つの鍵は、世代間のバランスを取り戻すことだろう。高齢者の知恵や経験を尊重しつつ、若い世代が積極的に意見を出し、意思決定に参加できる仕組みを作る必要がある。政治の世界では、若年層の投票率を上げるための啓発や、若者向けの政策を積極的に打ち出すことが求められる。企業では、若手社員がアイデアを実行に移せるようなフラットな組織づくりが必要だ。
また、高齢者自身の意識改革も重要だ。「自分たちが道を譲らなければならない」という認識を持ち、次世代のために後押しする役割を引き受けることが望まれる。若い世代の挑戦を見守り、必要に応じて支援することで、社会はよりダイナミックに変化していく。
おじいさん、おばあさんが居座り続ける社会では、新しい風は吹かない。世代を超えた対話と協力の中で、若い力が活躍できる社会を作ることが、この国が進むべき道ではないだろうか。過去の遺産に固執するのではなく、未来を築くために柔軟な変化を受け入れる。それが、私たち全員に求められる姿勢だと思う。
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