包丁小説家怪物

 包丁が振り下ろされる。

 鋭利な刃に皮膚が切れて、肉が、ずっ……と捩れる。骨が軋みをあげて、手折られる百合の花みたいにれた。

 嗤っちゃうくらいに溢れ出した雫が水溜りをつくって、アカいトーンに移っているソレは――なんだかとっても、不思議ね。綺麗なのよ。



 小説家なんてものを生業にしていると時折、厭な夢を視る。

 光を吸込むみたいな黒い闇に蠢くモノ。それは木々をなぎ倒しながら、下山していく――あの闇は山中のものだったようだ――誘蛾灯に引き寄せられる蛾みたいに町明かりへ繰り出そうとしている。

 道中に人を見つけた『蠢くナニカ』はその人に喰いかかっていた。

「え、な、に……ぎッ、ぎあ、あァァッァァ!! 助ッ、助け。ダレ……!?」

 引き千切られる顎に、ばきばき折れる手足。二の腕や脛から折れたささくれみたいな白い骨が突き出ている。裂けた皮膚から溢れ出るピンクの肉は腐った鰯の缶詰を連想させる。指はひしゃげ。右の眼球は『ナニカ』の十一本の足の一本が潰して、白濁した液体が零れてる。柘榴のように割れた頭蓋から、ちらちら脳髄なかみが見え隠れ。臓物が溢れかえってオレンジの欠片が散らばる。『ナニカ』の口はおなか辺りに突っ込んで子宮――ああ、アレは女性なのか――を啜っている。『ナニカ』は人だったもののアバラ骨が眼に入っているのに全く気にした様子がない。ちなみに『ナニカ』から出血でている体液は赤だった。

 夢中になって子宮を啜ると次は乳房を咀嚼した。出てくるのが血ばかりなのでなんだか『ナニカ』は不服そうだ。そのうち『ナニカ』は頭を残骸のおなかに突っ込む。いくら突っ込んでも肉片が飛び散るばっかりで、いつの間にかアスファルトに頭突きをはじめる。何度も何度も頭部を打ち付ける。肉片が飛び散って、もう血なんか残ってない。

 そのうちに朝日が昇り始める。すると『ナニカ』は慌てるように何処かに立ち去る。その場に残されたのは、人間の面影など残っていない挽肉だけ。人間の形をしていたはずのソレをみて、尚も人だといえる者が一体どれほどいるだろうか……?

 包丁を振り下ろす。

 一斤だったパンが一切れに変わる。

 コーヒーを飲みながら、私は一切れの薄っぺらい、ぼそぼそした食パンを口に含む。口腔内に残る雑音をインスタントコーヒーで流し込む。

「……」

 眩暈がした。

 悪い夢を見た所為だと思う。

 きっと、私は今にも吐きそうな顔をしている。もとから、綺麗な顔をしているわけじゃないし。

 朝食を終える瞬間を見計らったみたいに玄関の呼び鈴が鳴る。

「……誰? こんな朝早く……」

 ぼやきながら壁に掛かっている時計を見ると、時刻は十時を過ぎていた。

 胡乱な頭で寝すぎたことに気が付いた。

 呼び鈴が鳴っている。ああ、五月蝿い。

 胡乱な頭と胡乱な足取りで玄関を開ける。

 男が二人。酒樽みたいな奴と、独活うどの大木みたいな奴。どっちもスーツを着ていて、それが果てしなく似合っていない。酒樽みたいな男が言った。

「こんにちは。ええと、戸崎さん? いま、お時間よろしいでしょうか?」

「……ええ、構いませんよ。アナタ方は?」

「では、手短に自己紹介を。私は警視庁捜査一課の伊原です。こっちのでっかいのが、狭間」

「……警察が、私に、一体何のようですか?」

 酒樽――伊原とか言う刑事はわざとらしい笑みを浮かべた。気色が悪い。

「いえね。何もアナタだけに聞いてるんじゃあ、ないんですよ。実は今朝方、近所で……」

 伊原はちょいちょいと手招きをした。耳を貸せということだろう。どこの家にも同じことを言っているのだから、その必要はないのに。本当にわざとらしい男だ。ヤニくさい息が掛かった。

「……猟奇殺人が起きたんですよ」

「猟奇殺人?」

「ええ。それがほんとにひどいものでしてね、何しろ遺体の損傷があんまりにも激しすぎて、身元も死亡推定時刻も殺害方法も何もかもまるでわからない。発見時刻は朝の六時だってことだけ。顔はつぶれてるし、手足もおが屑みたいになっちまってる。そもそも、人間の形を留めてなくて、挽肉なんでさぁ」

「……」

「おや? どうしました?」

「いえ、昼間から酷いことを聞かされたと」

「ああ、すいません」

 全くすまなくなさそうに、伊原は言った。

「で、戸崎さん、あぁた。何か心当たりは?」

「いえ、何も。私、普段から、あまり外に出ないもので」

「へぇ、お仕事は?」

「……自営業を」

「へぇ! 立派なもんで!」

 厭味だ。この手の輩はいつだってそう。自分がなれもしないものになった人間のことをよく僻む。この数十秒で、この刑事の底は知れた。

 その後も何かと無意味な質問をされる。実に無駄な時間だ。

「では、我々はこれで、ご協力感謝しますよ」

 二人の刑事はいくつかの質問をしたあと、何処かへと消えていった。

 私は家の中に舞い戻り、昨日同様、パソコンの前に座る。小説を書くためだ。だというのに、私の指はどうにも動きが鈍い。いくら私がうなりをあげても、指は動いてくれない。画面に文字を打ち込むだけだというのに。

 ――それもこれも、全て、


 どうにも書けない私は、ふらりと外に出てみることにした。随分、長い間ゴミを出していなかったので、ゴミだしのついでにだ。

 途中、人だかりを発見する。猟奇殺人の現場だと野次馬たちが騒いでいる。知らぬ存ぜぬで素通りする。

 だが。

「何、あれ……」

 何か、影がそこを横切ったのだ。

 からだは自然に動いていた。影を追いかける。路地を曲がって……影は消えていた。



 包丁を振り下ろす。

 塊の肉が断たれる。一切れを口に入れる。大して旨くもない。

 コーヒーで飲み下す。

 テレビでは連続猟奇殺人事件と馬鹿達コメンテーターが近所を紹介してる。

 くだらないテレビを消して、またゴミを出しにいく。

 薄暗い部屋から濁った曇り空の下に出る。

 しばらく歩いていくとビニールテープで仕切りのしてあるエリア――死体のあった現場に近づく。すると不意に黒い影がよぎった。あの時と同じモノだ。

 追いかける。また、逃がした。影のように消えてしまった。

 けれど、ちらりと見えたその形は、確かに、小さな男の子のそれだったのだ。

 数日後。私を例の刑事二人――伊原と狭間が再び訪ねてきた。近所で起きている連続猟奇殺人事件の捜査とかだ。

「粗茶です」

「あ、いや。これはありがとうございます。しかし、思ったより、物の少ないお宅ですねぇ。やっぱ、アレですか? ダンシャリ? とか言うやつ」

「……」

 そんなくだらないことはどうでもいい。用があるなら早く済ませて欲しい。そう催促すると伊原は前回よりも根掘り葉掘りさまざまなことを聞いてきた。それは最近起きた近所の異変や、行方不明になっている知人はいるのか。昨晩、数日前の晩のアリバイやら。話したくもないことをアホのように喋らされる。話せることを私は話した。そうして伊原は最後にこんなことを聞いてきた。

「ねぇ、戸崎先生? あなた、この事件について、どう思いますか?」

「どう、とは?」

「いえね。先生のお耳にも入ってると思うんですよ。今回の事件と数日前の事件のこと。どんな奴が犯人だ、とか、見当付いてたりしません?」

「そんなものは貴方方警察の仕事です。私の関与する所ではありません。私はただでさえ貴重な時間を貴方方に取られて僻洩しているんです」

「はは、おっしゃる通りで……」

 伊原はだらしなく頭をかいたあと、じっと私を見つめていった。

「先生、私はね。一連の事件が人間の仕業だとはとても思えんのですよ。だって、あまりにも死体が損傷しすぎている。未だに身元の特定さえできやしない。その破損ぶりといったら、食い散らかされたみたいに木っ端微塵。人間には到底できるものではないのだとか。ええ、物理的にね」

「へえ、じゃあ、犯人は何だと、アナタはおっしゃるのですか?」

「さあてねえ? 頭突きでどてっぱらに大穴開けて、アスファルト砕くような生物が何処かにいませんかねえ?」

 私は、ふ、と哂って。

「さぁ? そんな動物は、知りませんね。ソレより、さっさとおかえり願いたいのですが?」

「……わかりました。では、我々はお暇いたしましょう。いくぞ狭間」

 伊原は無表情に言って立ち去っていった。


 刑事たちが確かに家から離れたことを確認すると、私は再び現場へと赴いた。しかして、目的の人物はすぐに見つかった。其処にいたところを逃げられないように背後から声をかけたのだ。

「こんにちは。ところでボク、お名前は?」

 いつぞやの黒い影の少年は怯えるように振り返った。揺らいでる眼光。やせ細った顔と手足は震えている。見紛うことはなかった。二度、私が逃がした少年だ。何かを探すように、毎日のように死体のあった現場に来ている謎の少年。万感の思いを込めて。

「会いたかった……」



 私は少年を家に招待した。

 彼は私の用意した、焼いた肉を貪るように喰らっている。よほど、お腹がすいていたよう。

黒川くろかわたい

 肉を喰い終えるとしばらくして少年はポツリと呟いた。彼の名前のようだ。

「どうして、あんな所にいたの?」

「……別に」

 首からげたオレンジのペンダントが揺れた。

 彼に答える気がないのは想定内だ。なので。

「戸崎よ。戸崎萱子」

「……なまえ?」

「ええ。私の名前よ。好きに呼んで頂戴。ところでその首飾り、とても綺麗ね、誰に貰ったの?」

 微笑み、訊ねる。甘く、融解とかす、蜜の味。

「……姉さんから、もらった……」

「へぇ、お姉さんがいるの。素敵なお姉さんね」

「……うん。ボクを……育ててくれた」

 姉を語る彼は、まるで熱に浮かされたような恍惚とした表情をしていた。彼にとって姉は大きなキーワードだったようだ。飴がバーナーで溶かされるみたいに決壊は際限ない。脈絡もない。ただ垂れ流すみたいな妄執の匂いがする。

「そう。ご両親の代わりにお姉さんが君を養ってくれてるのね」

「うん」

 男の子とは容易いモノ。心を開かせるなんて、あんまりにも簡単。

 彼から見せてもらったオレンジの首飾りを弄びながら優しく微笑む。

「――胎芽君。私、君のことが好きになっちゃったみたい」

 嬉しそうな彼。――明日も来ると、彼は言った。まだ、知りたいことは残っているけど――――そんなことより、よいことを思いついたし、それに……。


InterludeⅠ


 もう何件目なのかわからない犠牲者がでた。手口は全て同じ。どう考えても同一犯による犯行だ。凶行といってもいい。最近の行方不明者のリストから誰が死んだかはわかっている。全て二十歳以上の女性だ。ここまで堂々とした犯行なのに未だに容疑者すら定まらない。警視庁は上を下への大騒ぎとなっている。――伊原刑事はアンパンを食べながら、事件ファイルに眼を通している。もう何度目かわからない、誰かもわからない惨い躯を眺めている。

「伊原サン」

 狭間がぬっ、と紙束を渡してきた。……あの戸崎とか言う作家のデータだ。

 伊原はあの女を睨んでいる。はじめてみたあの瞬間から、刑事の勘があの女は只者ではないと告げている。紙束をめくる。

「……ほう? あの女、赤ん坊を流産していたのか。」

 田舎で生まれ、高校卒業と同時に作家を志し上京してきた。そこまではありふれた経歴だ。奇妙なのはそこから。彼女は二十歳のときに妊娠している。しかも父親は不明、赤ん坊も流産している。それらは全て病院等から取り寄せたデータでしかない。そのときの彼女の様子はようとして知れない。全ては書類上のものだけ。誰かの証言は存在しない。そう、データでしかわからないのだ。誰も、|戸崎萱子という人間を知るものはいなかったのだ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。極めつけに奇妙なのは、彼女が引っ越して来る前にいた町でも、規模は小さくとも似たような事件が起きていたこと。

 疑惑は確信へと変わる。あの女は黒だ。

「狭間。今夜、戸崎を張るぞ」

 伊原は再び犠牲者の書類に目を向けた。犠牲者の彼女たちは何度見ても無残に喰い荒らされていた。


Interlude1 out



 アレから毎日のように黒川胎芽は私の家に来ていた。完全に私に好意を向けることに成功した。今日も今日とて彼は来て、私の微笑に陶酔し、しばらく居座った後、帰っていく。

 そうして今日も夜が来る。窓ガラスには私の嗤い貌。そっとおなかに手をあてる。温かなぬくもりが私を突き動かす。

 

Interlude


 伊原が車で待っていると一人の少年が戸崎家から出てくる。少年の顔を確認して、再び待つ。やがて夜中になる。すると、先の少年が舞い戻ってきた。


「あ、首飾り」

 どうやら戸崎家に置いてきてしまったらしい。黒川胎芽は一人になった自宅で気づく。明日、戸崎家に取りに行けば良いが、なんとなくアレがないと落ち着かない。戸崎萱子がやたらとあの首飾りを気にしていたことを思い出しながら、彼は戸崎家へと舞い戻る。


 黒川が戸崎家の玄関先に来たのと戸崎萱子が裏口から外に出たのはほぼ同時のことだった。

「あ、」

 黒川が戸崎を認識して、勢い彼女に近づこうとした所で男に肩を掴まれた。伊原は警察手帳を見せて、黒川に静かにするよう指示した。

 二人の刑事と一人の少年が戸崎萱子を尾行する。


 ――今宵は新月。ただ闇のみが世界を犯している。


Interlude2 out


 裏山の林の中に這入る。暗い昏い、闇の奥。ここらもそろそろ潮時かしら? 狂っている夜に哂う。嗚呼、嗤(な)いている声。今宵も好い餌(はは)があるかしら?

「………ひ、……ひゅ……ゅ……………ひゅう―――」

 あら。そういえば私、まだこの娘食べてなかったかしら? そうよね。まだ二十歳じゃなかったから。お母さんになれないもの・・・・・・・・・・・

 ずるり。包丁で捌く。

「――――――――――――――――――//……………!!!!」

 今日は頬肉をいただくわ。ああでも、初めて食べたときより味が落ちたわね。それにだいぶ小さくなってしまったし。もう二、三日もつかしら? 貴女には私のおつまみ以外にもう一つ仕事があるのだけど……。


「―――――姉さん?」


 あら、胎芽クン。こんばんは。あら、刑事さんもいるのね。ええと、伊原と狭間さん? でしたっけ? まあ、どうでもいいわ。おめでとう、胎芽君のお姉さん。貴女のお仕事はもう終わりよ。毎日ちょっとずつしか食べられなかったけど、今日は残りをまとめて食べてあげる。ま、もう、ちょっとしか残ってないけどね?

「う、おおおおおおおおおおおおおお!」

 あら刑事さん。いきなり女性を撃つとかひどいわ。お腹がトんじゃった。あーあ、刑事さんのせいよ。もう変身が熔けちゃった。黒い『蠢くナニカ』に戻っちゃった。あ、お姉さん。潰しちゃった。もう、汚いわ。ドロドロになった貴女が身体にこびりついちゃウ。

「ば、化けも……」

『ふ――――、ふふふふうふふふふふふふふふ』

 嗤っちゃうわね。少し『腕』を凪いだだけで、伊原さんったら、頭飛んじゃった。飛び散った脳漿を浴びて、残った下あごのうえに乗っかる舌がちょっとマヌケよ?

「い、いあや! たす、助けて! 助けて誰かァが、ギァァァァィィィィィ!?」

 ええと、はざ、ナンデしたっけ? でしたっけ? ごめんなさい。あなた目立たないものだから、名前覚えてないの。でもとりあえず両足を潰してみたけど……そんなに這い蹲ってもがかないで? 芋虫みたいよ?

「き、キサマァ!?」

 はいはい。何でしょう?

「貴様ッ! 戸崎萱子か!? そ、ソレとも、戸崎萱子の、赤ん坊か!?」

 あらあら、ハ何とかさんったら混乱しているのね。そんなの、どっちでも良いじゃない? お母さん《別人格》なんて、ちょっと前に食べちゃったもの。とりあえず五月蝿いので縦に引き裂いて差し上げます♪ ぼたぼた落ちる内臓ナカミが汚れてますよ? さてはタバコを吸いますね。私、タバコ吸う男の人は嫌いです。

 その点、胎芽クンは未成年ですし、その心配はないですね。って、あれ? 黒川胎芽クン? 何処ですか?

 あら? お腹にある頭に包丁がつき立てられてる。ああ、お姉さんを捌く時に使った包丁を胎芽クンが使って、私を刺したのですね。おっとっと。カラダのバランスが……あ、倒れちゃった。

 胎芽クンたら私に馬乗りになって、激しいのね。

 包丁が振り下ろされる。

 鋭利な刃に皮膚が切れて、肉が、ずっ……と捩れる。骨が軋みをあげて、手折られる百合の花みたいにれた。

 嗤っちゃうくらいに溢れ出した雫が水溜りをつくって、アカいトーンに移っているソレは――なんだかとっても、不思議ね。綺麗なのよ。

 ええ、とっても綺麗よ、アナタの貌。だってね私、アナタならきっとそんな貌してくれるって思ったから、お姉さんを食べないでとっておいてあげたのだもの。ねぇ胎芽クン、いつぞや食べたお肉は、美味しかった?

 嗚呼、嗚呼、その貌! その貌がみたかったの! ますますアナタのことが好きになっちゃいそうだわ! 嗚呼、何度も包丁を振り下ろさないで、感じちゃう! なんで死なないのかって? そんなの当たり前でしょう? ね、そんなことより私赤ちゃんが欲しいわ。だからね。

 アナタが私の赤ちゃんになって。

 嗚呼、発狂した貌も、本当に綺麗だわ―――。


epilogue


 玄関のチャイムが鳴る。

 煩わしさを押しのけて、玄関を開ける。

「はじめまして。お隣に越してきた戸崎先生ですよね! わたし、隣の家に住んでるものです! 先生のファンです!」

「あらそう。私の小説の、どんな所が好きなの?」

 私は隣人に差し出された色紙にサインを書きながら訊ねる。

「ええっと、すっごくスプラッタ描写と描かれる愛の形がヤバイのにリアルな所です! どうやったらあんなふうにかけるんですか!?」

「何事も、経験よ。とりあえずやってみる所から始まるわ。はい、サイン」

「ほえぇ。流石です先生! サインありがとうございます!」

「どういたしまして」

「ところで先生」

「何かしら?」

「先生って、妊娠なさっていたんですね! ちょっと意外です! 可愛い赤ちゃんが生まれると良いですね!」

「ええ、そうね」

 私はそっとお腹に手をあてて、ゆっくりと微笑んだ。

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