第12話 ~選択の理由~

人は、この世に生まれてから死ぬまでの間、数えきれないほどの選択をする。

積極的に関わるか?関わりを避けるのか?

その選択が、正しいか、正しくないのかは誰にも証明できはしない。

ただ、言えることは、その選択はこの世のすべてのものに影響するということ。


彼はさっき、いくつもの大胆な選択を躊躇もなくしてのけた。


彼のように自分の選択を迷わず正しいと信じられるためには何が必要なのか?

僕は学校へ向かう電車の中で彼の横顔をチラ見しながら考えていた。


車窓から見える緑が増え、乗り換え駅が近づいてきた。


「あの」

「どうして、あんな危ないことを?」


彼は、軽く口角を上げ、まっすぐ見据えてこう言った。


「助けて欲しい、っていう人を放って置くようじゃ、将来、医者になんてなれないでしょ」

「人と違うというのは個性」

「個性を力に変るのは勇気、どう上手く使うかは君の知恵次第さ」


乗り換え駅に到着した電車の扉が開いた。


「僕も頑張るから、君も頑張って」

「じゃ」


彼はそういって、反対ホームの方に行ってしまった。


「はい、がんばってみます」


人生で、二番目に大きな声で彼の背中に返事をした。


そして、一番大きな声で

「ありがとう!」


扉が閉じ、電車は1時限目が始まってしまった僕の学校がある駅へ動き出した。

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