第11話 ~バタフライ効果~

「君、人の感情が色で見えるって言ってたね」


「そ、そうですけど。。。」


「この沢山の人の中で、色の濃い~人、いる?」


そういわれて、あたりを見渡すと、ひときわ紫色がにじむ中年の男性がいた。


「一人、あそこに濃い紫色の人がいます」


と、ゆびを指した。


「じゃ、その人に意識を集めてみて」

「鏡が見えたら、鏡の中の彼に、『やめた方がいいよ』って言ってみて」


ぼくは、うなずき、その紫色の中年男に意識を集めた。

やがて、人の流れが時間とともにゆっくりと静止して、合わせ鏡が現われた。

彼の言うように鏡に向かって「やめた方がいいよ」と声を掛けた。

すると、鏡の中の男は大きく目を見開いて、「なに?」と怪訝な顔で睨みつけ、僕の胸倉をつかもうと手を伸ばしてきた。

僕は驚き、意識が戻ってしまった。


彼が僕に問いかける。

「どうだった?」」


「怪訝な顔で僕の胸倉をつかもうとしました。」


「右手?左手?」


「右でした」


「そう、じゃちょっと待ってて」


といって、彼は紫色の男の方に走り出した。


彼が紫色の男性のとこまでたどり着くと、何やら声をかけた。

すると、紫色の男性は右手に持っていたカバンを左手に持ち替えて、彼の胸倉をつかもうと右手を突き出してきた。


「あっ」


思わず、声が出た。


彼は、その右手をつかみ、左側に受け流して中年男をホームへ転がした。

何事か?と、駅員が彼らの元にかけよってくる。

中年男は慌てたように、改札の方に走って行ってしまった。


逃げていく男からは青と黒が交互に点滅しているような光が見えた。


残された彼は、事情を説明している様子である。

話し終わると何事もなかったかのように駅員は職務に戻って行った。


彼が、僕の所に戻って来た。


「これで何人もの女性と、一人の男性の未来が変わった」

「そう思わない?」


彼は、満足そうな笑顔で僕に語り掛け、また僕の腕をつかんで郊外へ戻る電車に飛び乗った。


「じゃ、戻ろうか」

「今からなら、2時限目ぐらいまでには間に合いそうだね」


そういって、またさっきまで読んでいた参考書に目を向けた。

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