第5話 ~誰?~
恐怖の体験の後、週が明け、小雨の降る月曜日の朝、今日も駐輪場から公園を抜けて駅へ向かった。
いつも騒がしい公園も、雨の日はお年寄りの声もなく、薄暗さと「しとしと」とふる雨の音が静寂さを醸し出している。
水たまりをよけながら、公園を出て、横断歩道に向かう途中、一人の男性に声を掛けられた。
「これ、君の500円でしょ」
「え?」
「先週末さ、お金だけ入れて、何も買わずに突然逃げ出すからさぁ~」
そこには、僕の家の北の方の高校の制服を着た一人の高校生が立っていた。
「その制服で、駐輪場に向かって走っていったから、ここの近所の子だろうと思って」
どうやら500円を渡すためだけに、この小雨の中、僕を待っていたようだ。
「お金は大切にしなよ~」
「あ、うん」
「じゃぁねぇ~」
そういって、雨雲を吹き飛ばすようなさわやかな笑顔を残し、名前も告げずに青信号が点滅する横断歩道を渡って駅の反対側にあるバス停の方に走って行ってしまった。
「えっ、だれ?」
不意をつかれて記憶がおぼつかない。
「あの怖い人?」
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