第2話 ~高校生活~

学区内には8つの公立高校があって、中学3年間の学業成績を物差しにして、学区内で受けてもいい公立高校が決まる。

当時は、公立高校を第1志望、私立高校を第2志望に選ぶ生徒が多かった。

家庭の経済的事情を若いなりに多分に忖度していたのだと思う。

そして、いわゆる「保険」という大人の考え方を身をもって学ぶ。


自宅の近く、北に自転車で15分ぐらいの所と東に20分ぐらいのところに高校がある。

北の高校は僕には偏差値が高すぎて受けさせてもらえなかった。

東の高校は学業よりも、心身ともにタフでなければ高校生をやっていけない。

そういう高校だった。


僕は身の丈にあった高校の中で、一番遠い今の高校を選んだ。

電車通学へのあこがれと、街を離れ、遠くに行けば人との関わりに臆病な自分からも卒業できるかもしれない。

そんな、根拠のない期待もあった。


家から自転車で5分ぐらいのところに、小学生だった頃にできた駅がある。

駅の前には小さい川があって、かつてはヘドロくさい汚い川だった。

電車が通って駅ができると、土手が整備され、公園もでき、見違えるようにきれいな小川に生まれ変わった。


駅前の公園に隣接して駐輪場があって、毎朝、そこに自転車を止めて駅に向かう。

駅に向かうには、公園を抜けて行くのが近道。

駅側の公園の入り口には100円で買えるスロットマシーン付きの自販機が数台並んでいる。

僕のお気に入りは、神の飲み物と名の付く桃の缶ジュース。

週末の学校帰り、1本だけ買って公園で喉を潤す。

それは、ささやかな贅沢を味わえる幸せな時間となっていた。

まさに神の飲み物という名にふさわしい。


人からいろいろな色が見えだしたのは、憧れの電車通学と他愛もない幸せを満喫し始めた頃だった。

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