くもとくも / 童話・朗読台本
よるん、
くもとくも
くもくんは、一生懸命ご飯を探していました。
お腹がすいて、たまらなかったのです。
くもくんは獲物を捕まえるのがあまり得意ではありませんでした。
だから、よく逃げられてはお腹をすかしています。
獲物を捕らえるのが得意な仲間にバカにされたり、ご飯を恵んでもらうこともありました。
「お腹がすいたなあ。」
今日も、くもくんは獲物に逃げられて、お腹をすかせていました。
「どうしたらうまく狩りができるんだろう。」
しょんぼりした気持ちで、ご飯を探しにいきます。
くも仲間によると、人間の家にはよく獲物がいると聞きます。
だから、くもくんも必死で家を回っていました。
でも、獲物を見つけてもなかなか捕まえることができません。
「ご飯を食べるのは、大変だなあ。」
お腹をすかせたままでは、元気がなくなってしまいます。
「どうにかして、獲物を捕まえないと。」
くもくんはまた人間の家に入って、獲物を狙います。
でも、追いかけても、すばやい動きで逃げられてしまいました。
「そんな動きじゃ、おれの敵じゃないね。」
獲物の虫は、笑いながらどこかへ行ってしまいました。
「うう……また逃げられちゃった。」
くもくんは、かなしくなりながら家を出ました。
上を見上げると、広いお空で視界がいっぱいになります。
くも仲間に、聞いたことがあります。
お空に浮かんでいるふわふわは、自分たちと同じ「くも」と言うのだと。
「おなじくもなのに、あっちはのんびりさんだなあ。」
くもくんは、お空に浮かぶ雲が羨ましくなりました。
「ぼくも、生き物のくもじゃなくて、お空のくもがよかったな。」
そんなことを言っていると、よくお話をするくも仲間が近寄ってきました。
「なにをぼやいているんだい。」
そのくも仲間は狩りが上手で、ご飯を恵んでくれることもあります。
「ぼく、お空のくもになりたかった。」
「でも、きみがお空のくもだったら、お話もできないよ。ぼくはきみとお話できたほうが楽しいけどなあ。」
「本当? でも、きみは狩りが上手で、ぼくは下手なんだよ。」
「そんなの、仕方ないよ。誰にでも得意なこと、不得意なこと、どっちもあるんだよ。」
「きみも不得意なことがあるの?」
「ぼくはね、隠れるのが苦手なんだ。だから、よく家に入ったら人間に見つかっちゃう。叩かれそうになることだってあるんだよ。」
くもくんは、びっくりしました。
くもくんは家に入っても、人間に見つかることがあんまりなかったのです。
「きみは隠れるのが上手いよね。見習いたいなあ。」
そんなくも仲間の言葉を聞いて、くもくんはひらめきました。
「ねえ、ぼくに狩りのコツを教えてよ。」
「え? いいけど……。」
「その代わり、ぼく、家の中でいつも隠れてる場所を教えるよ!」
「本当? 教えてくれるなら、すごく助かるなあ。」
「任せてよ!」
くもくんは、胸を張りました。
お空の雲みたいにのんびりしている訳にはいかないけれど、自分に得意なことがあると知って、とても嬉しくなったのです。
それから、くも仲間と一緒にお話したり、狩りのコツを教え合うことが増えました。
くもくんは、少しずつ獲物が捕れるようになり、くも仲間も人間に見つかることが減りました。
「生き物のくもだったら、こうやって、助け合って生きられるんだなあ。」
くもくんは、自分がくもであることに、誇りを持つことにしました。
今でも失敗することはあるし、お腹をすかせることもあります。
でも仲間と協力して学びながら、少しずつ、頑張って生きていこうと思えたのでした。
おしまい。
くもとくも / 童話・朗読台本 よるん、 @4rn_L
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