第22話 貴女はすぐそこに
「・・・あれ、ルト?あの人また、勝手にどっか行ったの?ひと言私に声掛けて行きなさいよ。でも、出れないって困ってたから違うよーな?おかしいな?いやでも…」
今さっきまでそこに一緒に居たはずの男が一瞬目を離した隙に突然姿を消した。
「…ん?なんだこれは。こんなものさっきは落ちてたのか?ルトの忘れ物?」
さっきまで、ルトが座っていた場所には1つの手紙が置いてあった。
「…ふむ。この状況を見て推測する限りでは、ルトが私に声をかけないでこの場を勝手に離れたのか、はたまた、人と物の入れ替えが行われたのか?いやでも待てよ…。
・・・考えても時間の無駄な気がしてきた、この手紙から得られることがあるのか?勝手に開けても大丈夫なのか?ダメな内容の場合は次会った時に謝ろう、今回だけは振り回された代償として扱ってもらうとするか。
・・ただ、この手紙なんの細工もされていない、よな?開けたら発動トラップは無いよな?」
ルトの単なる忘れ物なのか、ルトと交換されたのか、何も内容が分からない手紙にビビりながら、一応この手紙がルトの大切なものだった時を考え、手紙の中身を確認することにした。
「無くしたことに
『あ、今日はお世話になりました。うちのルトは先に帰らせましたのでご心配なく、内容を確認しましたらこの手紙も捨ててもらって構いませんよ。また数日後にお会いしましょうね。
フロース・フィストレアさん』
こう書いてあった。
「あ、私に挨拶無しで勝手に帰ったなあの人。本当自由人なんだから!・・・ってな、なんで私の名前がバレているのよ………っえ?
お、お姉ちゃんの事じゃないよね?見間違い?
いや、これ私の名前書いてあるよね」
・・・私は貴族とバレないように庶民の登録しかしてないはずだ、こんな出会ってまだ1時間しか経ってないからルトにこの事がバレることなんて、ひとつも無いはず、無いはずなんだ。
「もしかして…。…いや、違うはず?…それなら、いつ視られていたんだ?…私は失敗していない」
失敗していないはずなんだ。
【嫌だ、あんなの】
落ちこぼれなんて呼ばれない生活をしていたのに、こんなところでバレてたまるか。
【嫌だ、嫌だ】
…あの男、とんでもない爆弾を置いていったな。
【嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ】
この事は何がなんでも隠さなきゃ、またあの生活に戻らされる。
【嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌た嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ】
比べられてしまう。あの人と。
【嫌嫌だ嫌嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌嫌だ嫌嫌だ嫌だ嫌だ嫌】
・・・嫌なんだ、もう。他人と比べられる人生は。
【嫌だ嫌嫌嫌死嫌嫌だ嫌嫌嫌殺嫌嫌嫌嫌だ嫌嫌だ死嫌】
・・・ルル姉さんと比べられる生活は。
【嫌死嫌嫌嫌…嫌嫌消嫌殺嫌嫌…嫌消嫌嫌】
もう、いいじゃないか、充分耐えただろうに、なぜ離してくれないんだ。
【嫌殺せ死殺せ嫌嫌殺せ救殺嫌せ死殺せ殺せ嫌嫌殺せ救殺せ嫌嫌嫌殺せ】
私が…
【…ヶせ…i…んだ°…のomい…nら…なr。。。】
…から消さなきゃ、ルト君には痛い思いをしてもらわないと。
【──1─☆─」──~──こ─ろ─#──】
あぁ、やっと1人目の友達が出来ると思ったのに。
コこへ来れバ、楽しィ学園生活を送れるト思ったのに。
もう、終わりなのか
【固有(やめて)魔術・(
やめて!殺そうとしないで!もう、嫌なの!
「お…ね。。。。い──、…や───…て」
絶対に、
…また、頼られる、ここは
…また、
・・・また、
また、失望される──────────────
また───は───ぜ───運命が。
「……っは!すっ───はぁ。また、まただ、【アブナイ】、意識を、持っていかれる、【アブナイ】ところだった。【アブナイ】この力は絶対。使わせない」
意識を取り戻し、一旦呼吸を整えてからいつものクスリを飲み
一方その頃。
「…た、助かったー。アイツらのお陰で実技試験はクリア出来てそうだ。いやー、助かった助かった。変な魔術使いが出てきた時は終わったと思ったが、何とかなって良かった。それにしてもなんだ、あの子。突然意識失ったように倒れて。突然苦しみ悶えだしたと思ったら背後から黒いモ…え、」
突然世界が逆さまになった。
『かわいい坊や。でも、ここで知るものでは無いわ?真実は隠し続けてこそ運命を感じるものよ?』
──────現れた黒いモヤが消えた─────
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