第12話 久しぶりの稽古

「…あの?クレア先生よ」

「なんですか?」

「力が強くなってないかい?」

「そうですか?お休み頂いてたからですかね?」

「そんな簡単に強くなってたまるか」

「さすがに、冗談ですよ?【魔力濃縮度エレメント数】を休暇中に高める遠出をしてました」

「なにその【魔力濃縮度エレメント数】って」

「あれ?まだ習ってないんですか?オリーブ先生に教えていただいてるかと思ってました」

「オリーブ先生は先月から育児休暇中いくじきゅうかちゅうで授業が出来ていないんだ」

「そうなんですね?なら、私直々に教えてあげましょう」

「お願いします!」

いつも、痛ぶられるだけの稽古なので飽き飽きしていたが今日はツイてる日だと思えた。


「まずですね、人族には【魔力濃縮エレメント】というふくろが生まれつき備わっています。これはどんな人でも、赤子の時からおじいちゃん・おばあちゃんになっても備わってるものです」

「ただし、具体的な説明は私は出来ません。なぜなら、研究が進めれないからです」

「それはなんで?」

「自分で調べるということはしないんですか?」

「あ、聞きすぎた?」

「いえ?そんな事ないですよ、お教えすることも出来ますがさっきも言った通り具体的な説明は出来ませんよ?」

「じゃあ、その具体的な説明が出来ない理由を教えて?」

「それはですね、…………といった問題が挙げられるからです」

「なるほどね?」

「まあ、詳しく聞きたいなら学園にいるバーレ先生を訪ねるといいと思いますよ」

「その人は?研究してる人なの?」

「そうですね、簡単に言えば【研究者へんたい】ですがイカれてますよとっても」

「そうなんだ、楽しみになってきた来星来月が」

「あ、来星来月でしたっけ?学園式」

「そうなんだよ、昨日聞かされて。僕以外は知ってたっぽいんだけど秘密ないしょにされてた」

「信用されてないんですか?」

「え、」

「真に受けないでください?冗談ジョークですから」

「冗談が冗談に聞こえないんだよねクレア先生は」

「そうですか?受け取り手の問題ばかさだと思って生きてますけど、問題もんだいになった事ないですよ?」

問題もんだいになったことないってそれ実力で黙らせてない?」

「・・・」

「図星かよ、まじかこの先生」

「まあまあ、この話は置いといてさっき話してたことはいいんですか?」

「あ、そうだ忘れてた。それで?【魔力濃縮度エレメント数】って何?」

「まあ、簡単に言えば人の能力ステータス値を上げる方法ですかね」

人の能力ステータス値を上げる?」

「そうです!慣れれば簡単らくですけどね?素人ばかがやると危ない目に合えますよ」

「危ないって例えばどんな?」

「んー、魔力濃縮度エレメント数は人によって違うので限界げんかいを超えると破裂して死にます」

「え?死ぬの?」

「ええ、死にますよ?目の前で数人死ぬの見てますし」

「こっわ、危ないで済んでなくない?それ」

「あー、でも死ぬと言っても上げる方法が特殊で実際には死なないんですよね」

「ん?矛盾むじゅんしてない?それ」

「してないですよ?」

「え、でも目の前で死ぬのを何人か見てるんでしょ?先生クレアは」

「はい」

「でも、実際は死んでないんでしょ?」

「はい」

矛盾むじゅんしてるじゃん、それ。もしかしてそういう夢を見せて死んだのを死んだと言ってるの?」

「いいえ?ちゃんと現実ですよ」

「え?どういうこと?」

素人ばかがやると、って言ってるじゃないですか!話聞いてますか?」

「え?素人ばかとクレア先生の違いってあるの?」

「あるに決まってるでしょう、一応素人ばかの枠に今の貴方ルトも入ってますよ」

「そうなんだ、でもやらない方がいいんでしょ?クレア先生的には」

「私が一緒にいる時なら大丈夫ですよ。それか、ちゃんと調べて学んだ後とかでしたら」

「そういうもんなのか、なら今はいいや学んでからにするよ学園で学べるだろうし」

「そうですね、そちらの方が楽しいと思いますよ?私も学園に行ってたので学ぶ方が先で、危険な経験をする機会は無かったんですけどね」

「いや、機会って言い方で命失うの嫌なんですけど?それは置いといて、死の定義を知りたいんだけど?」

「それも自分で知りなさい。もう説明するのめんどくさくなった」

「あ、はい」

「じゃあ、今日もやりますよ稽古」

「え、サボると思ったのにマジか」

「サボるなんてお金貰ってるんですから有り得ませんよ、きちんと貰ってる分は働きます。サービス稽古は許しません!」

「今日はないと思ってたのに!」危機察知サーチが反応してすぐ立ち上がって構えると直ぐに撃ってとんできた、なにかを。

「それ、さっきから何!!」

「これは、最近使えるようになってきた真空斬撃カマイタチですよ」

「そんな、知ってるでしょ?ってノリで撃ってこないで。今日初めて見たんだから、なんでそんなもん使えるようになってんだよ!休暇貰ったら強くなるとかやめてくれ!」僕は逃げることに必死で先生を見ることが出来なかった。


『初めに、稽古をつけるにあたって私たちなり師弟のルールを作りたいと思います、良いですね?』

『分かりました』

『では、とりあえず3つほど・・・』


という会話を何故か思い出した。

「あ・・・」気づいた時にはもう遅かったみたいだ

「よそ見厳禁ですよ、ルト・クロンド君」

最後に聞こえた先生クレアの声だけが頭に響いていた。



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