其の参 都鄙《とひ》の成らず者
――――――八咫烏のとあるメモより、一部抜粋
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
「おい、あいつなんだ?」
朝だというのに、大通りには多くの人が集まっている。
「噂だと、妖を捕まえに来たんだと」
「もしかして、〝八咫烏〟の奴らか」
「そうみたいだが、実におかしな容姿だ……」
「まあ、変わった奴なんだろう。ああいう組織の輩には、ろくなやつがいないんだからな……」
ひそひそと噂をする民衆の目線は、一人の人物に向けられていた。
その人物は、実に面妖な格好をしていた。
まず、一番最初に目につくのが、白い大きな面。天狗のようにも、鳥のクチバシにも見える、異様に長い鼻がその面にはついている。他にも華奢な身を包むように羽織っている黒いコートや、頭には若干大きめのつばのついた頭襟の上に天使の輪のような歯車が浮いていて、その奇怪な身なりは、見たことのない西洋を彷彿とさせた。
その“トリアタマ”は、民衆の視線に酔っているように大通りの真ん中を堂々と歩いていたが、やがてはっとしたように我に返り、横の小路に入って行き、見えなくなってしまった。
――――――
「でも、あいつらってなんでここに来たんだ?」
「だからぁ、なんか悪ィ妖がいたから捕まえに来たんだよ。」
「いや、あいつらが捕まえようとしているのは、きっと鼠小僧だ。」
「「鼠小僧⁉」」
「ああ、今巷では有名な指名手配犯なんだが、この都で目撃情報があったとか。」
「お前ら、何の話をしてんだ?」
話していた町の人々の会話に割り込むように話しかけてきたのは、明らかにこの町の者ではないようだ。なぜなら、キチンとした着物を着ている町の人とは対照的に、田舎くさい学ランを着ていて、第一、御面を着けていない。この町では人と会う時や外へ出るときは、御面を付けなければならない。
そのせいか周りからも「また変わったやつが来た。」と言わんばかりの視線を向けられている。
「……さっきから妙な輩ばかり来るが…お前もあいつらの仲間か」
「俺は八咫烏の隊員じゃないが、まあ、同じように仕事をしに来た。」
「はあ……」
「それより、さっき鼠小僧とか言ったが、それは妖なのか?」
「いや、俺は見ていないからまんざらでもないんだが、指名手配犯だから写真位はってあると思うぞ」
「.........そうか」
学ランの少年は去っていった。しかし、その目には決意の火がくべられていた。
〝――――――俺が倒さないと……〟
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