第58話 因習村破壊RTA(4/8)

 因習村を破壊するために必要なシークエンスは三つある。

 一つは侵入。

 これに関しては、今までの行動が全て侵入だ。

 村に入り込み、泊まる宿を確保するまでがここに当たる。

 宿を確保するまでに、村に誘引されるまでの状況と、村の景観、そして村人の態度から敵の危険度と邪悪度を図るのだ。


 そして二つ目が――調査。


「調査するのは、神の本体がいる社の位置と神の来歴だ」

「前者はともかく、後者ってそんな簡単に見つかるものなのですか?」

「絶対にあるよ。それはある意味で、神がこの因習村を維持するための楔の一つなんだから」


 神とは、忘れられてしまえば力を失う。

 人が神を忘れないための一番の方法は、記録すること。

 たとえその記憶を村人が覚えていなくとも、自身が祀られている村に記録があるということはそれだけで力になるのだ。


「そもそもこんな村を作る悪神は、世間から忘れられている。多少リスクはあったとしても、記録を残さないとそもそも村を維持する力すら生み出せないんだ」

「で、資料には社の場所も書いてあるだろうから、まずは資料を探す、と」

「正解。ミクモちゃんも慣れてきたね」

「あんまり慣れたくないような……というか、どうやって探すんですか」


 これが親しげに接してくる村人ならば、村人に直接聞けばいい。

 しかしそれだと、こういう排他的な村では上手く行かないだろう。

 ミクモちゃんもそれが解っているから、聞いてくるのだ。


「一つは、地道に協力者を探すこと。排他的って言っても、こっちに好意的な人はいるだろう」

「部屋を貸してくれたおばあさんとかですか?」

「そうだな、そういうところから少しずつ情報とコネクションを集めて資料にたどり着くんだ」


 これのいいところは、資料にたどり着く道中でも情報収集ができるという点。

 ただ資料を紐解くよりも、ずっとこの村の背景を理解しやすくなる。

 なにせ、因習村というのはあくまで外界と隔絶しているだけで、村の中にも歴史は存在するからだ。


「とはいえ、これは却下だ。時間がかかりすぎる」

「ええ……すっごく正道って感じの方法だと思いますけど」

「確実だけど、それだけ向こうに怪しまれる時間が増えるってことなんだよ」


 時間というのは、基本的にこちらの敵だ。

 元々俺達は、相手のホームに乗り込む形で喧嘩を売っている。

 向こうはこちらの一挙手一投足を概ね把握しているわけで。

 大事なのは、とにかく相手にこちらの狙いを把握されないこと。


「あくまで俺達が、誘導され迷い込んだ一般人であると思われているうちに決着をつけるぞ」

「な、なんだか霊媒師さんがプロみたいです!」

「プロだって! 肩書は胡散臭いけどさ」

「い、いつもの霊媒師さんは、もっと胡乱なことしか言わないじゃないですか!」


 そ、それは否定できないけど……俺が何かを言うと周りをドン引きさせるけど……!


「というわけで、別の手段を取るぞ」

「えっと……どういう手段を取るんですか?」


 そんなミクモちゃんの言葉に、俺はプロとして方針を示す。



「祠を壊す」



「やっぱり胡乱なことしか言わないじゃないですかー!」


 はい。



 ◯



 祠破壊といえば、前世でミームになってたアレだ。

 この世界だと今のところミームになっていないが、祠破壊に対するイメージは共通しているのでいつか流行る時もあるかもしれないな。

 とにかく、祠を破壊するとやばいものが出てくるというのが一般的なイメージだ。

 この世界においてもそれは変わらないし、何より実際にやばいものが出てくる可能性もある。


 だがそれは、あくまで外の世界の話。

 因習村内部では、祠の役割はまた少し違ってくる。


「因習村内部の祠は、言ってしまえば基地局なんだよ」

「はぁ」

「神の力を、村に伝播させるためのアンテナってことだな」


 俺達は、村の一角にある祠の前にやってきていた。

 祠はアンテナなので、村のあちこちに存在する、少し探せば簡単に見つけることができた。

 そこでこっちをなんとも言えない目で見てくるミクモちゃんに語る。

 一度上がった信頼を下降させると、それを取り戻すのは難しいようだ。

 普段より視線が痛い。


「これを破壊すると、どうなると思う?」

「……向こうに思いっきり気付かれるんじゃないですか?」

「危険度の高い神相手ならそうだな」


 だが危険度の高い神は、そもそも村人が親切な場合が多い。

 ようするに、危険度の高い神相手に祠を壊す必要はないのだ。

 危険度の低い神は村人が排他的だし、祠を壊しても気付かない。

 正確には――


「……よし、壊すぞ」

「おー……って、待ってください霊媒師さん、その金槌――」


 俺は、荷物の中に入れた金槌を取り出す。

 そしてミクモちゃんがそれに言及しようとするよりも先に――


 ガツン、と石でできた祠を破壊した。


 その瞬間。

 不意に周囲の気配が変化する。

 重苦しくなったというか、なにか別のものに乗っ取られたと言うか。


 ふいに、足音がした。


「だ、誰ですか!?」


 を伴って、一人の少女が俺達の前に立っている。

 異様な雰囲気だ。

 それは、どこか彼女の人間離れした様子が、そうさせているのだろう。


「くすくす、くすくす」

「な、なんですかこの子……」


 緑がかった白髪の、人とは思えない色の髪。

 浮世離れした、白い服と赤いスカート――トイレの花子さんを思わせる姿。

 そして――



「その祠、壊しちゃったんだぁ」



 俺を守ろうと、前に出たミクモちゃんに、祠を破壊した時の定番セリフを口にする――



「……って、リツ様じゃないですか!?」



 俺と契約した神魔、リツが何故か花子さんルックでそこに立っていた。

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