第59話 因習村破壊RTA(5/8)

「あーあ、ミクモったら酷いのね。私の顔を忘れちゃうなんて」

「い、いえそれはその……リツ様がこちらを誤認させて……」

「なにか言ったかしらぁ?」

「な、なんでもございません……ごめんなさい」


 くすくすと、リツがミクモちゃんをからかうように見上げている。

 ミクモちゃんは怯えた様子で、しどろもどろになっていた。


「こらリツ、あまりミクモちゃんを虐めるなよ」

「はーい。もう、やっと私の出番なのね。待ちくたびれちゃったわ」

「出番……って、リツ様。どうしてここにいらっしゃるんですか!?」


 ミクモちゃんの驚きは最もだ。

 ここは因習村、他の神のテリトリー。

 リツみたいな神が入り込めば、即座に向こうも気づくだろう。


「れーばいしさんは、ミクモに祠の説明はした?」

「基地局がどうとか言ってました」

「じゃあ、そのまま説明するわね。今私がやってるのは、霊媒師さんの言葉を借りるなら電波ジャックよ」


 おお、電子機器に疎かったリツが、電波ジャックなんて言葉を使っている。

 成長だ……とか思っていたら睨まれた。


「俺とリツは契約関係にある。それを利用して、俺がリツの神力がこもった金槌で祠を破壊して――祠の機能を奪ったんだ」

「この村の神は、私と比べて圧倒的に格下。バレずに機能を奪うくらい簡単よ」


 さっきも話したけど、力の強い神相手なら祠の破壊は不要。

 正面から資料を読み漁ればいい。

 対して力の弱い神は、俺が祠を破壊してリツに機能を奪わせることで村の中でもリツの力を借りることができるようになるのだ。

 無論、向こうに気付かれず。


「といっても、今の私はいわゆる分霊。本体じゃないわ」

「それでトイレの花子さんみたいな格好なんですか?」

「これは祠破壊初体験のミクモを、脅かすためのものよ」

「普通に性格が悪いな……」

「なんですって?」


 おっと。


「だからまぁ、私が直接神をどうこうすることはできない。あくまでサトルに力を貸して、サトルがどうにかする形になるわ」

「でもこれで、俺達も因習村の中で向こうに気付かれず”魔”の力を使えるようになる」

「あ、あー……それで資料のある場所に忍び込むんですね」


 そういうことだ。

 これのいいところは、家屋を破壊しなくて住むというところ。

 因習村にこの国の法律は適用されないが、だからといって無闇矢鱈に破壊していいわけじゃない。

 俺達が村を解放したら、その後にも村人たちの生活は続いていくのだから。

 本人たちは、因習村が破壊される以前と何も変わらず、変化に気づくこともなく。

 だったら、無理に変化を起こす必要はないだろう。


「さて、それじゃあ早めに行動しよう。いくら向こうの認識を誤魔化してるとはいえ、俺達が人気のない祠に近づいたところまではバレてるわけだからな。訝しまれるとまずい」

「逆に言えば、金槌以降はバレないんですね」

「リツの神力で向こうへ認識できないようになってるんだ。強い神相手でもバレないスグレものだぞ」


 俺達が話をしている間、リツは資料のありそうな場所を探っている。

 そこへリツの転移で直接乗り込む形になるのだ。


「……あった、今回は村長宅の倉庫みたいね」

「ありがとうリツ、早速出発しよう」

「はいはい。これが終わったら、私がいいって言うまで私のことを甘やかすのよ?」

「ど、努力するよ」


 こういうリツの気まぐれは、本当にきまぐれなので。

 そもそも本人が言っていることを忘れる時もあれば、一ヶ月くらい甘やかさないと行けないときもある。

 ちなみに、言ったことを忘れていても俺が放置するとそのうち思い出してメチャクチャに怒るぞ。

 神様だからな。


 ――とか、思っていると。


 俺達の周囲の景色が一瞬にして変化した。

 古ぼけた、誇り臭い土蔵の中だ。


「うわ、本当に転移しました。私、こうして神の転移を体験するの初めてです」

「最初のうちはなれないよな」

「神にとって、これは転移ではないわ。私達はいつだって”そこ”にいるんだもの」


 言いながら、俺とリツは手分けして資料を探していく。

 もう既に何度も因習村を破壊しているから、俺もリツもこの手の作業は慣れたものだ。

 逆に初めての因習村破壊なミクモちゃんは困惑しきりの様子だ。


「んー、ぜんっぜん掃除できてないわね……」

「村長がマメなタイプじゃないんだろうな。……一番厄介だぞ、これ」

「う、うーん……」


 普段、こういう場所に潜り込むのは俺とリツとそれからロウクだ。

 ロウクはこういう時全く役に立たないので、俺もリツもそれを前提に動いてしまっていた。

 なので、ミクモちゃんは手持ち無沙汰なようだ。

 近くにあったくまのぬいぐるみを手にとって、しげしげと眺めている。


「あまり変なものに触ると、呪われるわよ」

「これは大丈夫……だと思います。神力も妖力もまとってません。ただ……」

「ただ?」

「……いえ、なんでもありません。気のせいかも知れませんけど、一応持っていってもいいですか?」


 リツが、俺に判断を投げてくる。

 んで、俺の判断だが――こういう”気になるもの”は積極的に持っていくべきだ。

 ”魔”に関わる直感というのは、時に生死に関わる。

 なんというかアレだな、CoCやってる時に目星に成功して見つけた、何の役にたつかわからないものみたいな感じ。


「じゃあ、失礼して」

「ええ、失礼しなさい。サトル、こっちは終わったわよ」

「ちょっとまっててくれ、このあたりになんかありそうなんだ――」


 と、そこで。

 ミクモちゃんが話している俺達を見て――



「……なんか、リツ様も霊媒師さん並に手慣れてますね」



 なんてことを言った。

 それにリツが――


「な、な、な、なんてこと言い出すのよ!?」

「えあ!? あ、ご、ごめんなさい! 霊媒師さんみたいって言いたかったわけじゃなくって!」


 いや俺みたいになるのが不名誉みたいな言い方はやめよう?

 それと声が大きいって!

 騒ぎすぎて村長に見つかってバレるとか、前代未聞だから!


 ――

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