第57話 因習村破壊RTA(3/8)

「た、大変失礼いたしました」

「いえいえ」


 あれから、ミクモちゃんはしばらくたって正気にもどった。

 元々、緊張から気が動転していたのである。

 ミクモちゃんはあくまで、俺になついているだけ。

 別にこう、恋愛感情とかはないだろう、十歳近く年離れてるんだから。


「そ、その……友人に年上の彼氏って憧れるよね、みたいな話をされまして」

「手近なところに俺がいた、と」

「ああいえ、手近とかそういうのではなく。単純に年上彼氏に対するあこがれが……」


 あくまで、年上彼氏という存在に憧れているということだろう。

 しどろもどろになりながらミクモちゃんに説明を受けつつ。

 俺達は言われた家に泊めさせてもらうこととなった。

 ちなみにお代はいらないらしい。

 この後人間ごと自分たちのものになるからね。


「さて、とりあえず人心地付きましたが……」

「神はこっちの動きを監視はしてるけど、この規模なら話の内容までは聞こえてるわけじゃないから、好きに話しても大丈夫だよ」

「あ、それはなんとなく感じてます。結界の規模はそこまで大きくないですね」


 というわけで、荷物を部屋に置いて作戦会議だ。

 ちなみに話の内容が聞こえてる場合は筆談での会話になる。

 筆談すら監視されるクラスのでかい神様が相手の場合は……そもそもこんなところで悠長に話してる暇はないな。


「とりあえずここまでで、概ね敵の規模と能力、それから脅威度がわかった」

「え!? いや、まだ私達ここに来たばっかりですよ? 雨を降らすことができる、くらいはわかりましたけど」


 ここらへんは、何度か因習村を破壊している俺のノウハウが生きるところだろう。

 実際その御蔭で、この村の全貌は既に俺には見えている。


「まず、この村の人間は現代的な洋服を着ていた」

「それが何かおかしいんですか?」

「外とのやり取りがあるってことだよ」

「あ、ああ……え、どうやって?」


 ミクモちゃんの疑問はもっともだが、やってることは単純だ。


「彼らが村の外に出ているからだよ」

「認識阻害ってことですか」


 そう、認識阻害のせいで、外に出ても自分の環境に疑問を抱くことはないし。

 外の人間も彼らを不思議には思わない。

 だから、表面上は現代的な生活を送れている。

 家にも電気が通ってるしな。


「次。村はあくまで普通の作りだった」

「神様の力がもう少しあれば、もっと宗教的な作りになってるってことですか」

「そう、わかりやすく社とか立ってるだろうな」


 村の規模と住人の数、それから村の施設は神の能力の高さが露骨に影響してくる。

 強い神なら、村はもっと規模がデカくなるし、宗教色が強い。

 この村は、見た感じ平均的な因習村の規模だ。


「後は、村人の態度」

「なんだか、排他的でしたよね」

「因習村だと、外部の人間は嫌われるか歓迎されるかの両極端だろ?」

「確かに!」


 これが何と関係あるかと言えば――


「村人の態度が良ければよいほど、神が村人を掌握してるってことなんだよ」 

「あ、あー……」


 態度が排他的な場合は、村人の洗脳と掌握が完全ではないということだ。

 これが完全でないと、村人の強い意思による――例えば都会に出て暮らしたいなどの――行動を神が束縛できなかったりする。

 まぁ、これはこれで外に出た人間が結婚して家族を村に連れてくる場合があるから、一長一短なんだけど。

 そもそも掌握が完全なら、そういった偶発的な束縛からの脱出すら発生しない。


 ちなみに村民が村を出て就職したり進学したりすると、そこでも認識阻害が発生するらしい。

 実際には存在しない人間が所属していることになるのだとか。

 怖いね神様。

 この真実を知ってしまった人間を村に引きずり込むのも常套手段だ。


「今回は掌握が完璧じゃないから、上手く説得すれば村人から情報を引き出したりもできるってことですか?」

「いや、むしろ個人的には掌握が完璧な方が楽だな」

「ええ? どうしてですか?」

「危険度は高いんだけど、そのかわり村人が協力的だから、資料とか見せてほしいっていうと見せてくれる」


 排他的だと、そうも行かないんだよ。

 因習村は、基本的に因習の構造はどこも似たりよったりだ。

 俺がこうして、ミクモちゃんにパターンを解説できるくらいには。

 だけど、因習村を形成している神様がどんな存在か、というのは。

 村にしか資料が残っていない。

 なので、村の資料を漁って対策を建てなきゃいけないんだが、排他的だとこれが難しくてな。


「個人的に、因習村の悪神には二種類の物差しがあると思ってる。俺はこれを危険度と邪悪度って呼んでるんだが――」

「今回はどんな感じですか?」

「どっちも中だな、低、中、高、激高、極悪の五段階で中だ」

「なんで高より上が二つもあるんですか!」


 そこはあって一つくらいでしょ、とミクモちゃんは言う。

 いやぁ、俺も最初はそのつもりだったんだけど、いろんな因習村を相手してるうちに、俺が最初に考えた物差しを越える例外みたいなものが出てきちゃって……


「あ、ちなみにリツ様はどうなんですか?」

「危険度は極悪、邪悪度は高」

「それ、絶対に本人の前で言っちゃだめですよ?」

「大丈夫、もう知ってるから」

「ええ……」


 危険度に関しては零号神魔ってところが関係していて、邪悪度に関してはリツが純粋で善にも悪にも染まりかねない危うさがあるからだ。

 まぁ、俺がいる今は邪悪度の方は低でもいいかもしれないけどな(惚気)。

 さて、話はここまで。

 そろそろ本格的にこの因習村を攻略していくとしよう。


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