第56話 因習村破壊RTA(2/8)

「……私、それなりにいろんなことを要領よくやってるつもりなんですよ」


 なんでミクモちゃんに「探知機にしてる」なんて失礼な話をしたかといえば単純で。

 俺に対する文句から初めて、最終的にミクモちゃんの愚痴をきちんと引き出すためだ。

 大人として、親御さんの許可を経てミクモちゃんを連れ回しているわけだから。

 責任を持って彼女を助けるのが、俺の役目だろう。


「でも、私がやらなきゃいけないことって、本当に多いんです」


 普段の生活、退魔師の修行。

 父との軋轢、新世代派での活動。

 学校でのこと、友人との交流。

 いくらなんでも、一人の少女に背負わせるにはなかなか重いと、確かに思う。


「だから全部を上手くやろうとすると、結局上手くいかなくって。……どうすればいいんでしょうね」

「そうだなぁ。まあ優先順位をつけようとか、アドバイスできることは色々あるんだろうけど」


 んで、ミクモちゃんの悩みは一つ一つは小さな悩みだ。

 それらが積み重なって、身動きが取れなくなってしまっているのが問題なだけで。

 俺ができるアドバイスは、それらの悩みを効率よく解決する方法か、それらの悩みと向き合う方法だ。

 前者に関しては、俺よりミクモちゃんの方がよっぽど上手くやるだろう。

 俺は別に、そこまで要領がいいタイプじゃないんだから。


「とりあえず、アレだな。そういう悩みで頭がこんがらがってる時は、一旦意識を切り替えよう」

「今回みたいに、因習村を破壊して気分転換をしようってことですか?」

「因習村は破壊するけど、気分転換ってほど軽くはないぞ……っと、ついた」


 やがて、強くなった雨を何とかやり過ごしつつ、俺達は目的の場所までたどり着く。

 そこは山の中に作られた小さなトンネルだ。

 車で入るには、少し狭い。


「一旦車はここに置いていこうか」

「流されないといいんですけどね、車」

「その場合はロウクに迎えに来てもらおうな」

「退魔の術で強化すれば自分で帰れますよ! 抱っこ紐は絶対嫌ですからね!」


 なんて話をしつつ、俺達はトンネルへと足を踏み入れるのだった。



 ◯



 長いトンネルを抜ける。

 因習村にはこうやって、内部と外界を阻む結界みたいなものが存在することが多い。

 今回みたいに規模がそこまでではない因習村は、特に。


「……空気が変わりましたね。結界の類が敷かれているみたいです」

「探知助かるよミクモちゃん。一応、中で退魔の術を使うと支配してる神にバレるから、ギリギリまで使っちゃダメだよ」

「解ってますって。一応、対因習村のノウハウは退魔寮にもあるんですから」


 なんて話をしながらトンネルを抜けると――


「雨が弱くなってますね」

「もう、俺達を誘い込む必要がないからな」


 アレだけ激しかった雨が、小雨になっている。

 俺は誘導が効かないし、ミクモちゃんも退魔師として耐性があるので違和感に気づけるが、普通の人はそうではない。

 だったら帰ろうという話にはならず、村で宿泊できないか考えるだろう。


「ここからどうするんですか?」

「村の人に話しかける。これも結構大事なポイントだぞ」


 まず、少し歩いて村の様子を観察する。

 いくつかの田んぼと、古ぼけた家屋。

 昭和の時代に戻ったかのような光景だが、それ以外に特徴はない、と。


 んで、傘を差しながら歩いている村人に声を掛ける。

 彼らの格好は比較的現代的で、ちょっと飾り気がないかなという程度。

 ともあれ。


「……誰だ、あんたら」

「あー、すまない。俺達はこのあたりを通りかかったモノなのですが、雨で車が立ち往生してしまいましてね。一晩、宿を借りることはできないでしょうか」

「…………なら、あの家の奴に言え。外からの客を止める部屋がある」


 声をかけた壮年の男性は、こちらを怪訝そうに一瞥する。

 明らかに歓迎されていない雰囲気だ。

 少しだけミクモちゃんを俺の後ろに隠す。


「ありがとうございます。ではこれで」

「……あんたら、どういう関係だ?」

「え? か、関係ですか?」


 去り際の俺達に、ふと男が問いかける。

 これは男が聞きたくてした質問ではない。

 そう神が誘導した結果のものだ。

 もしここで俺達に血の繋がりがなかったら、そのまま夫婦として村に取り込むつもりなのである。

 優しいところあるじゃないか、と思うかも知れないが。

 村から出れなくなった俺達を、互いに依存させる形でつなぎとめるためだ。


「……恋人同士か」

「こ、こいび!? そう見えますか!?」


 おっとミクモちゃんが反応してしまった。

 なんかこう、普段から俺に身近な大人の男性としてそこそこ懐いている雰囲気のあるミクモちゃんだ。

 こういう時にお世辞でもなんでも、言われると嬉しいんだろう。


「なんでもいいがな」

「え、えへへぇそうですか。恋人ですかぁ、へへへ」


 男は、それからどうでもよさそうに帰っていった。

 俺達の関係を恋人と断定したからだろう。

 それはそれとして――


「あの、ミクモちゃん? お世辞みたいなものだから、真に受けちゃだめだから」

「えへへ……腕とか組んじゃいます?」

「まずいって、ダメだって! 後でリツに二人まとめて殺されかねないんだぞ!」

「愛の前に、障害なんてありません……!」


 ダメだから、当たっちゃうから!

 なんてやり取りをしつつ、俺はミクモちゃんから逃げ出すように案内された家を目指すのだった。


 ――

 お読み頂きありがとうございます。

 レビュー、フォローいただけますと幸いです。

 よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る