第13話 大勝利
息吹の提案に、葵は驚きながらも笑みを浮かべた。「大勝利の初陣…なんだかかっこいいね!」と、少し緊張しながらも胸を弾ませているのが伝わってくる。
「葵ちゃん、C地点の確保は終わったけど、その盾、だいぶ傷ついて耐久力が減っているみたいだね。次の激戦に備えて、新しい盾に交換しておこうか」と息吹がアドバイスする。
「え、盾も交換できるの?」と驚く葵に、息吹は笑顔で頷く。
「そうだよ。陣地内なら装備の補給や交換ができるんだ。耐久力が回復するから、新しい盾を持っていけば長く守れるよ」
息吹に言われた通り、葵はC地点の装備補給エリアで新しい盾を選び、交換を行った。画面に「耐久力100%」と表示され、盾が新品に戻るのを見て、葵はほっとした表情を浮かべる。
「これでまた安心して前に出られるね。次のE地点でも、盾を構えながらしっかり守っていこう!」と息吹が声をかけると、葵は頷き、「うん、今度も盾でしっかりカバーするから、息吹くんも頼りにしてね!」と意気込んで、二人は次のE地点へ向けて動き出した。
新しい盾に交換したことで、葵も自信を取り戻し、さらに集中して進んでいく。
「じゃあ、D地点は味方に任せて、僕たちは先に二人でE地点を裏取りして取ってしまおう!」と息吹が提案すると、葵は少し驚きながらも「裏取り…? どういう風にやるの?」と尋ねた。
息吹がニヤリと笑って「敵がD地点で守りに集中している間に、こっそりE地点を取っちゃおうって作戦さ」と説明する。
「わかった!それなら、私も盾でしっかり守るから、息吹くん、頼りにしてるわ!」と葵が意気込むと、二人は慎重にE地点に向けて移動を開始した。
E地点に到着すると、敵はすでに3人陣取っていた。
どうやら、息吹たちがC地点を取ったのを見て、裏取りを警戒して待ち構えていたようだ。息吹と葵は物陰から様子を伺う。
「どうしよう、読まれてた?」と葵が不安そうに呟くと、息吹は「まあ、それがオンラインの醍醐味だからね。相手もバカじゃないってことさ。でも、さすがにあの数を一瞬で倒すのは難しいね…。じゃあ、葵ちゃん、あれを使ってみようか」と言い、葵の腰にぶら下がっていたボール状の手榴弾を指さした。
「で、でも使い方わからないよ。銃だって全然当たらなかったし…」と不安そうな葵に、息吹は「大丈夫、敵に当てようと思わなくていい。ただ、ボールを投げるみたいに敵の足元へ落とすだけだよ」と優しく説明する。
「ああ、それなら!」と葵は手榴弾を構える。
ゆっくりと狙いを定めて投げ込むと、見事に敵の中心に手榴弾が落ちた。
「完璧!」と思わず息吹が感心する。
「うわあ、手榴弾だ!」
敵が叫ぶと、そのうちの一人が「俺が犠牲になる!」と手榴弾に覆いかぶさった。
その後、爆発が彼の体に抑えられ、他の二人は無事だった。
「貴様、よくも!」
怒った敵が息吹に銃口を向ける。
「すぐにリスポーン地点に送ってやる!」息吹は一人の銃口を避け、斬り捨てたが、もう一人の銃口は避けられない。
「ちっ!」
敵の銃弾が息吹に命中し、彼は倒れてしまう。
「息吹くん!」と叫ぶ葵に、敵は「次は貴様だ!」と銃口を向けたが、葵が盾持ちだと気づく。
「盾持ちか、臆病者め!」
敵は手榴弾に持ち替え、葵に投げつける。
「葵ちゃん、逃げて!」と息吹が叫ぶが、葵はとっさに息吹との過去の戦闘を思い出し、足元に落ちた手榴弾を拾って敵に投げ返した。
「そんなバカな!」
敵の目前で手榴弾が爆発し、敵は吹き飛ばされる。
「すごい、葵ちゃん…これは逸材だな。葵ちゃんならもしかしたら」と息吹は心の中で感心し、ある決意を固めた。
「息吹くん、今助けるから!」
葵は息吹を蘇生し、無事彼を戦場に戻す。
「すごいな、葵ちゃん。おっと、味方チームがD地点を確保したみたいだね」と息吹が言うと、同時にE地点も二人で確保したことが表示される。
「もしかして…?」葵が息吹に尋ねると、「ああ、全エリア制圧!俺たちの大勝利だ!」と息吹が答え、画面に「大勝利!」の文字が浮かび上がった。
葵は息吹から褒められ、感激の表情を浮かべた。「やったー!全部占領できた!」と喜びの声をあげながら、初めての戦闘での大成功に満足げに微笑む。
息吹も微笑みながら「おめでとう、葵ちゃん。立派な初陣だったよ」と温かく言葉をかけると、葵は少し照れくさそうに「これも息吹くんのおかげだよ!」と感謝を伝える。
そして、ふと優里のことが頭に浮かび、心の中で「優里もこんなふうに、ずっと頑張っていたんだな…」と、彼女が情熱を注ぐ理由を少し理解した気がした。
「次は優里ちゃんと一緒に勝利を目指すのもいいかもしれないね」と息吹が言うと、葵は笑顔で頷き、「うん、今度は一緒に戦いたいな。優里のためにも、もっと頑張るよ!」と意気込んだ。
一方その頃――。
「へっくしっ!」
くしゃみをしながら優里は自室のPCデスクの前で、くしゃくしゃの髪のまま大きくくしゃみをした。「いかん、風邪かな…そんなことよりヴァルフロで何とかしてアイツに勝たないと…」
すでにリベンジを考えている優里の姿があった。
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