第21話 2日目の収支計算

アンブレラとの話し合いが終わって家に帰ってくると、俺は早速、今日1日の収支計算を始めた。


「今日は、いっぱい稼いだからな。収支計算が楽しみだ。うひひ」


俺は、アンブレラのサカイのような気味の悪い笑みを浮かべて、財布の中身をひっくり返した。


チャリンチャリン


財布からは、硬貨がいくつか落ちてきただけだった。


「ほへっ?」


俺は間抜けな声を出して固まり、みるみるうちに顔色が真っ青になっていった。


『おおおおお、落ち着け、俺。とりあえず冷静になろう』


「そっ、 そうだな、オレ。ととととと、 とにかく落ち着こう」


『お茶漬けだ、お茶漬けを食おう。お茶漬けを食えば落ち着くはずだ! お茶漬けは落ち着けに通じる』


「天才だな、オレ! とにかく、お茶漬けだ。お茶漬けを食うんだ!」


俺は、お茶漬けを作って勢いよく掻き込んだ。お茶漬けは火傷するほど熱かった。


「あっちい! お茶漬け、あっちい!」


『おおおおお、落ち着け、俺ぇ!』


その時、隣の部屋に通じる壁がドンという音を立てた。


「夜中に何やってんだ! うるせえぞ、おっさん!」


『「マジ、すんません!!!」』


俺は飛び上がって土下座して、壁の向こうに謝ったのだった。







「ふ~、やれやれだぜぇ」


俺は、額の汗を拭って、とりあえず硬貨をじっと見つめ、今日の1日の行いを振り返ってみた。


そして思い出す。ギルドに併設された食堂の料理長のおっさんに、財布に入っている札全てを叩きつけてしまったことを。


………………。


しっかり考えて、俺は結論を導き出した。


「あれはどうしても必要な経費だった。違うか? オレ」


『うん、そうだな、俺。あれは絶対に必要な経費だ。じゃあ、経費で落とせるな』(※落とせません)


「やっぱり天才だな、オレ。そうだ、経費を抜いて計算してみよう」


スライムの討伐報酬が、合計13万3100円。


荷運びの子供たちに払った報酬が、合計1800円


計算して、本日の稼ぎは、13万1300円!


『やったー! 大金持ちじゃないか、俺!』


「財布の中に516円しかないけど、大金持ちだ、オレ!」


納得してスッキリした俺は、その心地よい空気の中、布団に飛び込んだ。


うん。明日から頑張ろう。


──────────

【あとがき】

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