第19話 弥勒の事情・後編
ヒロさまから、一緒に居るというお返事をいただけた次の日、ヒロさまからおやつの枝豆をいただいて、学校に行きました。
枝豆はお弁当箱にいっぱい入っています。
業務用の、すでに調理済みの冷凍枝豆で、お昼休み頃にほどよく解凍されているそうです。
お昼休みの昼食時に、我が東城家のライバルである西城家の明奈さんが、私に話しかけてこられました。
「鈴音さん。枝豆ひとつと、このミートボールを交換してくださいませ」
不思議に思いながらも、私は交換に応じました。
すると、明奈さんが席の戻られて枝豆を置くと、ほかのクラスメイトから白身魚のフライをもらって、私のところに来ました。
そして言うのです。
「鈴音さん、枝豆ひとつと、この白身魚のフライを交換してくださいませ」
交換すると、明奈さんは白身魚のフライの持ち主だったクラスメイトに枝豆を渡して言った。「取り引き、成立ですわ」
明奈さんが再び違うクラスメイトのところに行って、おかずやおにぎりやサンドイッチを持って来て、枝豆ひとつと交換して行くのです。
あっという間に私の昼食は、豊富なメニューの立派なお弁当に変わりました。
50点が100点になった────。
私は呆然として、明奈さんに聞きました。
「どうして……?」
明奈さんは、不敵に笑って言いました。
「わたくしは、クラスメイトのみなさまと違って、家から「東城家に関わるな」と言われていませんの。もっとも、家から「東城家を助けるな」と言われていますが」
私は驚いた。
「じゃあ、なぜ、私を助けたりしたのですか?!」
私の言葉に、やはり明奈さんは、不遜ともとれる不敵な笑みを浮かべて言いました。
「助けるなとは言われましたが、取り引きするなとは言われていませんわ。オーッホッホッホ」
明奈さんは高らかに笑ってから、声の調子を真剣なものに変えて、申し訳なさそうに言いました。
「クラスメイトのみなさまは、家から「東城家に関わるな」と言われていますので、助けたくても助けることが出来ないのです。どうか、みなさまを恨まないでいてあげてくださいまし」
明奈さんがそう言って頭を下げると、クラスメイトのみなさまが、声をださずに私に向かって一斉に頭を下げてくださいました。
深い謝意を感じる所作でした。
ああ、私は、ひとりぼっちなんかじゃなかった。
こんなにもたくさんの人たちから、愛されていたんだ!
私は、泣きました。
明奈さんは、そんな私が泣き止むまで、ずっとそばに居てくださいました。
そんな明奈さんの温かさに、さらに私は泣きました。
泣き止んだ私に、明奈さんが言いました。
「鈴音さん。我が西城家の永遠のライバルである東城家が、このままであるはずがありませんわ。すぐに復興して、世界を経済で支配するような大家になりましてよ。その時にまた、わたくしとライバルで居てくださいましね」
「約束します。あなたは私の永遠のライバルです」
そう言って握手を交わしました。
明奈さんと繋いだ手は、春の陽だまりのように温かかった。
──────────
【あとがき】
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