第5話【閑話】思い出の幼なじみ
「その名前は嫌いじゃ。我を縛る呪いなのじゃ」
俺が名前を呼ぶとソイツは、しかめっ面して口を尖らせた。
「じゃあ俺が名前をつけてあげるよ。お前の名前は今日から『リボン』だ」
「少女向け漫画雑誌のような名前じゃな。可愛いのう。その名前にどのようないわれがあるのじゃ?」
「リボンを借りるよ」
俺はソイツの髪からリボンを解いて、リボンで数字の0、数字の1、そして∞を描いて見せた。
「数字の0が無、つまり『無い』数字の1で有、つまり『有る』数字の∞で『無限大』」
「ほう『無い→有る→無限大』とつながるのか。まるで宇宙誕生のようではないか。壮大な良い名なのじゃ」
「リボンは髪を結ぶから『縁を命で結ぶ』という意味もあるよ。その上『リ・ボーン』Re bornで再び生まれる『生き返る』とか『生まれ変わる』という意味もある。何よりリボンは可愛い!」
「まったくもって良い名じゃ! いいぞいいぞ、我は今ここから『リボン』じゃ!」
そう宣言した途端、ソイツ────リボンが虹色に神々しく輝きだした。
「すごいすごいぞ! この世界の神格も得て生まれ変わった! 我を縛る呪いも消えてなくなったのじゃ!」
「シンカク? なにそれ?」
俺の幼なじみは時々わからないことを言う。
○
俺は幼なじみとのことを思い出していた。
のじゃのじゃという語尾で話す変な女の子で、今思えばツンデレロリババアの属性持ちだったと思う。
素直になれない奴で俺に憎まれ口ばかり叩いてたっけ。もっとハッキリいえば罵倒されていた。
建前ばかりを言うのに本音を見抜いてもらえないとすぐ拗ねる。めんどくさい奴だった。
そのめんどくささを面倒だとは思わせないくらいの魅力がある女の子だったがな。苦労が苦労じゃなくなった。まあ、俺はアイツが好きだったのだろう。でも、その好きが恋愛感情だったかといわれるとNoだ。幼なじみは恋愛の負けフラグである。異論は認める。
意識する異性に意地悪をする小学生男児のような奴だった、女の子のクセに。
そんなアイツに意地悪ばかりされていた俺は、まあつまりそういうことだったのだろう。
俺にとってもアイツは憎めないやつだった。ふとした表情や仕草がとても可愛らしいのだ。大好き。まあ男友達(喧嘩友達?)という感覚での付き合いであったが。アイツとの下ネタ話って、すげえ盛り上がった。アイツ、俺よりスケベだぞ。
アイツの本質は底抜けに優しい。そんなお人好しなところが好きだった。
アイツと一緒に居るだけで、うれしい、たのしい、しあわせという気持ちが溢れだした。
それはアイツも同じだったのだと思う。
アイツから常に、うれしい、たのしい、しあわせという気持ちが光の輝きとなって、俺に向かって放たれていた。
○
アイツは成人すると口汚く罵りながら俺に性的なアプローチを繰り返すようになった。
で? どうなったかと言うと••••••。
「やっぱダメだ勃たない。•••••••悪いな」
10年前とうとう押し切られて、不覚にも、ことに及ぶことになったが俺の男のシンボルが勃たなかった。
というのもアイツは大人になっても体が子供のままだったのだ。まるで人間とは違う種族のようだ。そして俺はロリコンではなかった。
「ヒロが子供に欲情する変態だったら良かったのに。無念なのじゃ••••••」
口惜しそうなその言葉を最後に、アイツは俺の前からいなくなってしまった。今どこで何をしているのやら。
あー、最後に言った言葉は違ったな。最後に言った言葉はこうだ。
「我は絶対に諦めないのじゃ」
──────────
【あとがき】
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