第4話 クラスとスキル

『 プレイヤー【ヒロ】はクラス【チビデブハゲ 】ギフト【変態】と【元気】を獲得しました』


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「えっ?」


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「アホかーっ! チビデブハゲってクラスちゃう、ただの悪口じゃああああああ!」


たっぷり沈黙したあと、俺は天井に向かって吠えた。


周りにいた人たちがビクってなる。


「ギフト【元気】【変態】ってなんじゃあああ!『チビデブハゲの元気な変態』って誰得だ! そんなもん、どこに需要があるんじゃあああああ!」


興奮のあまり、ゼイゼイと呼吸をした。


やがて落ち着くと、俺はorzのポーズで絶望を体現した。


「いや待て俺。絶望するにはまだ早い。俺が絶望したのは好きな女の子の前でうんこを漏らした時だけだ。変態だって元気だってすごいスキルかもしれないじゃんか。それがラノベの定番だろ? よし落ち着いた。そうだ俺はクレバーなジェントルマンだ」


俺は「ステータス」と唱えて、目の前に現れた 半透明のパネルを見つめた。


何度見直してもクラスはチビデブハゲ。ギフトは変態と元気だった。


チビデブハゲと変態と元気をタッチして詳細を表示する。


ネット情報で「ステータスはスマホみたいに感覚的に使える」とあったのは本当のようだ。


俺は詳細を確認した。


【チビデブハゲ】恋愛対象外。生理的に無理。うわっキモっ! 絶対に近くに来るでないぞ、絶対だぞっ! 絶対にこっちくんな!


【変態】なんでもイケる。


【元気】 取り柄のない子供を褒めるための常套句。


「なぐさめなんかいらねえや、こんちくしょう!」


俺はステータスプレートを放り投げようとした。半透明のステータスプレートはスカッと手を素通りした。


俺は泣きながら愚痴を垂れ流した。


「神様あんまりだ。俺が何をしたって言うんだ」


前世で一体どんな悪事を働けば、こんなキテレツなクラスとスキルを手に入れるんだ?


「こんなヘンテコなスキルで俺はどうやって探索者をすればいいんだろう、どうやって魔物を倒せばいいんだろう」


いくら愚痴を言っても神様は返事をしてくれなかったので、オレは俺に語りかけた。


『よお、ヒロ。お笑いだな』


「ほんと、最悪だよ」


『最悪? そうでもないんじゃないか?』


「どこがだよ」


『だって最高にユニークじゃないか』


「ああ、ユニークなスキルだな」


ユニークなスキルであってユニークスキルじゃないところがまた笑える。


『これだけユニークだと笑うしかないよな』


「そうだな、じゃあ笑おうか」


『ああ、笑えばいいと思うよ』


「よし、わかった。『チビデブハゲの元気な変態』で笑いを取りにいくよ」


『それでいこう』


俺は開き直った。


俺が立ち上がると、


「「「おい、おっさん大丈夫か?」」」


周りの人たちにむっちゃ心配された。


お構いなく、俺は最高にクールなダンディーだ。


「一緒に病院に行ってやろうか?」


「ヒールとキュアをかけましょうか?」


いえ、お構いなく。俺は大丈夫です。


みんな優しい。泣きそう。







探索者ギルド甘南備山頂ダンジョン支部の受付に戻ってきた。受付嬢が笑顔で迎えてくれる。


「どのようなクラスとギフトでしたか~?」


俺は笑顔でサムズアップして朗らかに言った。


「一言で言えば『チビデブハゲの元気な変態』です!」


受付嬢は笑顔のまま小首をかしげた。可愛い。


俺がステータスプレートを出して受付嬢に見せると受付嬢は、


「ステータス表示を公開モードにしていただけますか~」


と言ったので、ステータス表示の片隅にある公開ボタンを探し出してタッチした。


俺のステータスを見た受付嬢は大きく口を開けて絶句した。


たっぷり10秒ほどフリーズした後、受付嬢は慌てて話し出した。


「ユーモアあふれるギフトとクラスですね~。私が知る限り前例がありません~。しかもダブルギフトですか~、珍しいんですよ~。最高7つという話も聞いたことがありますが世界的にみても珍しい話ですし、私は3年間この仕事をしていますがダブルギフトさえ見たことがありません~」


「よっしゃーっ!」


俺はガッツポーズした。掴みはOK!


「詳細を見せていただけませんか~」


受付嬢の要請を受けて俺は詳細表示にした。


詳細を見て受付嬢は目を丸く大きく開いた。


「これでは何もわからないのと同じですね~」


受付嬢は乾いた声で笑った。


「なんか本当にすいません」


急に申し訳なくなって思わず謝ってしまった。


「なにか体調に変化はありませんか~?」


受付嬢の質問に、しばし自身を内観して答えた。


「思春期の頃の暴走しがちな性欲が戻った気がします。できるなら誰でもいいって感じですね。性愛の対象が極端に広がったというタイプの変態です」


守備範囲が8歳~80歳になったってところか。気をつけないと犯罪者になるな俺。


「ずいぶん軽い意味での変態ですね~。変態というよりはえっちといったほうが適切な表現ですね~。生活に支障はありませんか~?」


「これも思春期の頃と同じで押さえきれずに犯罪に走るということはないですね。ソロプレイの回数を増やすくらいで対処できるでしょう。••••••女性から誘惑されれば理性がもたないと思いますが。そうですね理性のタガが外れやすくなっているので、そこのところに注意が必要であると思われます。具体的には密室で女性と二人きりにならないことですね」


「注意さえしていれば社会的に危険なスキルではないとわかって安心しました~」


受付嬢のお姉さんがホッと胸を撫で下ろす。


「ほかになにか感じませんか~?」


「子供の頃の無限の体力が戻った気がします」


子供って元気なのよ。


「まあ! 素敵ですね~!」


そうかな~? 無理やり褒めてない?


「クラスはレベルアップで上級職に転職できたりしますし、スキルもレベルアップで進化したりします。希望を捨てないで頑張って魔石を取って来てください~」


そこかよ。


直訳すれば「変態でもなんでもいいから魔石を持って来てくれればなんの文句もないです」ということだろう。ギルドの方針徹底してんな。


朝のニュースでやってた少子化対策法案も、ダンジョンで魔石を拾って来てくれる人数を増やしたいからではないだろうか?


そんな邪推すら頭に浮かぶ。


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