第2話 貧乏生活の始まり
10年前、世界中にダンジョンが現れた。
世界は大混乱となったが、10年も経てば落ち着くもので、法整備も終わり平穏な日々が戻ってきていた。もうダンジョンがあることは普通になった。
そんな世界観の現代日本で、俺の新しい生活が始まった。
一言で言うと貧乏生活だ。
貧乏だからといって捨てられないものがある。
まずはスマホだ。
新居に固定電話はおかず、しかしスマホは確保した。
月額約6,000円。
光熱費(水道代込み)は月額約1万3000円と試算した。
新居はワンルームマンションを確保した。
幽霊が出るという噂の物件で、破格で入居することができた。
月額5000円
食費は月2万円に押さえようと考えている。
ここまでで合計月額約4万円。
失業保険が月約10万円入るので、固定費と食費以外は6万円でやりくりしなくてはならない計算だ。一人暮らしの月の生活費はだいたい16万円だと聞いている。働かなければ6万円足りないということになる。
また、失業保険を受け取るまで3ヶ月から4ヶ月かかる。それまでは貯金でやりくりしなければならない。
一人暮らしの初期費用で30万かかったのは痛かった。
冷蔵庫に洗濯機・電子レンジに調理器具など。
ああ、もちろん自炊するつもりだ。外食などもってのほかだからな。
手元に残ったお金は60万円。金銭的に不利な状況だが俺はこれで勝負する。気分はポーカーだ。
お金がないと気持ちに余裕がなくなるね。焦る。
何にせよ早急に次の仕事を見つけなければならない。
俺にとって今回のリストラは計画的であったため、もちろん次の仕事をすでに探してあった。
だが、家から追放されたことで状況が変わった。老後資金を稼がなくてはならなくなったのだ。予定していた再就職先では、到底2,000万円など貯められない。
入念な検討を繰り返した結果、再就職に最もふさわしい職業はダンジョン探索者だった。
家庭から追い出されなければコネを使って普通のサラリーマンをするつもりだったのだが、そういうわけにはいかなくなった。まったく計算外だぜ。まさか追い出されるとは••••••。あそこまで恨まれていたとは思わなかった。
ダンジョン探索者は、簡単に言うと肉体労働者だ。
ダンジョンに潜りモンスターと戦いダンジョン資源を持ち帰る仕事だ。50歳の体には相当厳しい仕事になるだろう。
ただ老後資金の2000万円を貯めることを考えると、この仕事以外に選択肢がなかった。
ダンジョン探索者(以後単に探索者と呼ぶ)は国のダンジョン庁に勤める公務員という扱いになるが、給料は時給制ではなく歩合制である。
探索者がダンジョンから持ち帰った魔石やモンスターのドロップアイテム、ダンジョンで採取できる素材などのダンジョン資源の質と量によって、もらえる金額が変わる。
魔石とはダンジョンのモンスターを倒した時に得られる、黒い絵の具が固まったような石で、これは化石燃料の代わりにできるエネルギー資源だ。
ダンジョン庁は、この魔石の採集を目的に設立されたといって過言ではない。
魔石以外のダンジョン資源はダンジョン庁以外との取引が許可されているが、魔石に限ってはダンジョン庁以外で取引されることは原則禁止されている。
魔石以外のダンジョン資源をダンジョン庁以外で取引をするとダンジョン庁という中間マージンを省くことができるので割高で売却することができるというメリットがある。
しかしダンジョン資源をダンジョン庁以外で取引すると、そこに税金がかかるため確定申告する必要がある。必要経費などの報告が必要なため、とても面倒くさいことになっている。かかった経費を引いてもらわないと儲かった金額以上に税金を払わなければいけないなどということがザラにある。
ダンジョン庁の下部組織である探索者ギルドで 売却すると、そこで税金の天引きがされるため そういう手間を省くことができる。
確定申告も慣れていないと抜けが発生するため 、探索者の脱税が割と頻繁に起こっていたりする。
探索者という職業には1年間のお試し期間がある。このお試し期間の間は無職扱いとなって失業保険が適用されるのだ。これはいい。
とにかくやってみてダメだったら普通のサラリーマンをしよう。ああでもその場合、老後どうしようかな~。どう考えても老後資金2000万円など貯めることはできない。
まあ、なんとかなるか。
○
新居に入居してすぐに神棚を設置して幽霊を祀った。
神棚を前にして手を合わせて祈る。
「幽霊様幽霊様。あなた様のおかげで安く住めることになりました。本当に、ありがとうございます。感謝しております」
ふと幽霊様と呼ぶのはどうだろうと思った。
幽霊様の名前を知らないので勝手に名前をつけることにした。
「幽霊様。あなた様の名前をこれから難陀様と呼ぶようにいたします」
仏教を守護する八大龍王の長、難陀龍王から頂いた名前だ。
難陀様の名前を呼んで、神棚に感謝の祈りを捧げた。
その途端、清らかな水の香りがしたような気がした。
なにか急に肩が軽くなった。
••••••気にせいだよな?
深く考えないようにした。
とりあえず、毎朝神棚に祈るようにした。
──────────
【あとがき】
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