雨なので、ルナと色々お話し
使った器材を洗って片付けてたら、今日もルナが来てくれた。
雨降ってるのに、濡れないのかな?
【あら、何してるの?】
「今日は雨降ってるから、本読みながらポーションづくりしてたの。ルナは濡れなかった?」
【魔法で雨除けすればいいじゃない。飛んでたら地面も歩かなくて済むし】
「おお、その手があったか。私って、まだ生活と魔法が結びついてないな」
【元の世界って、魔法無かったの?】
「うん。空想の中にしか登場してなかった」
【ずいぶん不便な世界ね。でも、ポーション作るには自分の魔素使うでしょ?】
「ポーションも架空の産物だったから、作ってみたくて。固有魔素流せって書いてあるところは、適当に魔素を放出してみただけだから、出来たのがポーションかどうかも分からないの」
【見せてみなさい】
「えっと、これなんだけど…」
【なんでポーションに頭蓋骨なんか書いてるのよ?】
「いや、適当に作ったから、毒とかだったら危ないと思って」
【その絵だと、劇毒に見えるわね。でも、ちゃんとポーションになってるじゃない。魔素込めすぎて、大怪我にしか使えないレベルだけど】
「え、ほんとに!?」
【ええ。人では込められないレベルの魔素が含まれてるわ。薄めて使わないと、傷口の細胞が異常増殖しそうなくらいよ。あ、でも使うのがヒマリなら、手足がちぎれたりした時に飲み続けるにはちょうどいいわね】
「おぅ、まさかの規格外品だった」
【水で十倍くらいに薄めたら、人が作ってる傷用ポーションになるわ。でも使った薬草が足りてなくて、劣化が早そうよ。異空庫に入れておきなさい】
「あ、そうなんだ。仕舞っとこう。ルナって、ポーションの見分けも出来ちゃうんだね。どうやってるの?」
【これも魔素感知よ。成分や含まれてる魔素を正確に感知出来れば、そう難しくはないわ。まあ、比べるための見本を覚えてないと難しいけど】
「魔素感知、奥が深いな。昨日から使い続けるようにしてるけど、ポーションの中身なんて、全然気にしてなかったよ」
【漠然と魔素感知してるからよ。索敵ならそれでいいけど、成分を知る時は対象だけに集中して魔素感知しなきゃダメよ】
「おおう、そんな使い方もあるんだ。ついでに聞きたいんだけど、痛み止めポーションに使うのって、この茶色い粉でいいの?」
【ええそうよ。それはキナの樹皮ね】
「あれ? 柳じゃないんだ?」
【柳も痛み止めになるの?】
「前世では柳の樹皮から抽出したサリシンっていうのが、痛み止めや解熱剤の元になってたの」
【それは知らなかったわ。こっちにも柳はあるから、試してみたら?】
「やってみたいかも。でも、効くかどうか自分じゃ試せないの」
【ああそうよね。でも町に行けるようになったら試せるかもしれないから、一応作っておけば? 効けば売れるでしょうし】
「そうだね。柳見つけたら作ってみるよ」
【私のテリトリーにあるから、柳の樹皮くらい持ってきてあげるわ。ついでに薬草も色々届けてあげる】
「え、いいの? 手間じゃない?」
【見回りのついでに魔法で採ってくるだけだから、手間じゃないわ】
「じゃあ、お願いします。ポーションづくり楽しそうだから、材料もちゃんと覚えたい」
【いいわよ。だけどヒマリ、あなた前世は薬関係の仕事でもしてたの?】
「違うよ。柳の樹皮から痛み止めが出来たのは、割と有名だったから知ってただけ」
【変な世界ね。薬の原料なんて、秘密にするのが普通なのに】
「便利な物は、最初は秘伝でも、ある程度年数が経つと公開されてたりしたの」
【それはすごいことよ。こっちだと、秘伝にしちゃって失伝することも多いから】
「そうならないように、公開はするけど発見者に利益が行くような仕組みがあって、何十年かすると無料で利用できるようになるの」
【そういった意味では、考え方が進んでたのね】
「そうかも。でも私は、ルナがそんなに知ってることの方がびっくりだよ」
【私はここに来るまで、長年あちこちを放浪してたのよ。人に興味を持って、色々調べてた時期もあるの】
「そうなんだ。妖精の大先輩だね」
【元はただのウサギよ。母親が住んでた巣穴がたまたま魔素泉の上で、母親の胎内にいる時から多量の魔素を浴び続けて、産まれてからもそこで生活してるうちに妖精化しちゃったのよ。だけど変質魔素の塊が吹き出しちゃって、近くの動物か魔物化し始めたの。だから住みにくくなって放浪を始めたわ】
「え? ルナは変質魔素、大丈夫だったの?」
【半妖精くらい固有魔素持ってたら、変質魔素の塊の中にいても影響は受けないわ。それに付近の動物を魔物化した分、変質魔素は薄れるし。だけど仲の良かった動物が魔物化しちゃうとねぇ…】
「嫌な事思い出させちゃってごめんなさい」
【昔のことだから別にいいわ。ヒマリもいつかは経験するかもしれないから、覚えておきなさい】
「妖精になると、そういう覚悟も必要なんだね。話してくれてありがとう」
【覚悟してくれたらいいわ。ついでだから言っておくけど、この近くにも魔素泉があって、ここも魔素が濃いのよ】
「あ、そうなんだ」
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