もふもふ虐める奴は許せん!

「あ、そうなんだ」

【魔素泉は中規模だと、大抵テリトリーにしてる妖精がいるわ。ここも中規模だけど、流れて来た大規模なスタンピードに襲われて前にいた妖精が放棄しちゃったみたい。長い間放置されてかなり荒れてたから、私が整備してテリトリーにしたのよ】

「へえ、そういうこともあるんだ。…あれ? じゃあここに住んでた人も、妖精化してたの?」

【ここは魔素泉から少し離れてるし、半年くらいしか住んでないんじゃ全然無理よ。しかもここにいた人間は老人だったから、細胞の成長なんてほとんど無いわ】

「あ、若い方がレベルアップしやすいんだ」

【身体の成長と同じよ。子どもの方が、老人よりはるかにレベルアップが早いわね。だけど魔素泉の上に赤ちゃんが住んでても、半妖精化に五十年はかかるわ。母胎内にいるうちから濃い魔素を浴び続けてないと、妖精化は難しいのよ】

「そうなんだ。じゃあ濃い魔素の影響で、ここに住んでた人は寿命が延びたくらい?」

【少しはレベル上がってたわね。だけど毒草でポーション作っちゃって、それを自分で飲んで中毒になったのよ】

「…まじ? ひょっとして、ポーションにして毒性上げちゃった?」

【そうよ。少しはレベルが上がってたから即死はしなかったけど、あれじゃ助からないわね】

「女神様は亡くなってるって言ってた」

【そう。…言い方は悪いけど、死んでくれて良かったわ。あいつ、ここの動物捕まえてポーションの実験に使ってたのよ。生きるために狩って食べるならまだしも、わざと怪我させたり弱らせるために殴る蹴るして餌も与えず怪しげなポーション飲ませるだけ。そして奇跡的に回復したら、また同じことの繰り返し。人のためになるポーションを開発してるんだからって我慢してたけど、そのうち無意味に動物をいたぶるようになってたから、私が始末しようかと悩んでたの】

「うげぇ…。ひょっとしてこの塔の中で?」

【隣に実験用の小屋があったのよ。犠牲になった子たちの骨とかもあったから、花が咲いてる場所に移して埋めてあげたの。小屋は気分悪かったから、塵にしてやったわ】

「私、そんなことやってた人の住処に住んでるんだ…」

【あいつは死んじゃったんだからざまあ見ろよ。この塔も壊しちゃおうかと思ったんだけど、塔では悪い事してなかったし、苔や蔦が生えてたからそのままにしたの。嫌な奴が住んでた場所だけど、ヒマリが有効活用してくれたら嫌なイメージが払拭されるわ】

「…思った以上の事故物件だった。犠牲になった子の霊とか出ないかな?」

【それは大丈夫よ。苦痛に呼応した魔素が溜まってた小屋は跡形も無く消して、土地も塔も魔法で浄化してあるから。でもね、間違ってポーションにした毒性の高い変異種の薬草、小屋の脇に生えてたのよ。見た目は完全に体力回復の薬草だったのに、苦痛に呼応した魔素で変異してたの】

「…ちゃんと復讐は果たせたんだね。小屋のあった場所に鎮魂碑でも作ってお参りしようかな」

【もう慰霊樹の苗が植えてあるわ。こちらでは、慰霊のために植える木だから、誰も手出ししないはずよ】

「ああ、女神様の基本情報にあった! あの小さな木が慰霊樹なんだ。毎日お祈りしよう。お供えもした方がいいかな?」

【お祈りはいいけどお供えは止めなさい。大切な食料を無駄にするのは、亡くなった子たちもよろこばないはずだから】

「ああ、そうなんだ。つい前世の考えしちゃってた」

【こっちでは食べ物無駄にするのは、お供えだとしても悪い事よ】

「うん、基本情報ではそうなってた。まだ前世の感覚が抜けてないな」

【こっち来て三日目じゃ仕方ないわよ。ヒマリは妖精で転生者でもあるから、いきなり人間のいる町に転生しなくて正解よ。でもここだと実体験で慣れるのは難しい環境だから、女神様の情報をよく思い出して、徐々に慣れていきなさい】

「うん、そうするよ」

【ちょっと長居しちゃったわね。じゃあそろそろ行くわ】

「うん、色々教えてくれて助かるよ」

【大したことじゃないわ。じゃあまたね】

「うん、ありがとう」


ルナは帰ったのでひとりに戻ったけど、やることが出来てしまった。

おっさんのベッドや衣類使うのに抵抗があって放置してたけど、ルナの話を聞いて燃やすことにしました。

この塔使わせてもらうからと感謝してたんだけど、動物虐待するような奴は許せん。


ベッドを魔法で壊し、衣類と一緒に竈に突っ込んで着火。

出来るだけ虐待ジジイの痕跡は無くしてやる!


燃えるの待つ間に、犠牲になった動物たちの冥福を祈ってこよう。



……竈が小さくて天蓋付きのベッド燃やすのに時間がかかった。

研究日誌や椅子、木製の食器類とかも燃やしたから、余計時間がかかったんだけどね。

気付いたら夜が明けてたよ。

まあ、妖精は睡眠もあまり必要じゃないから、徹夜しても問題は無いけど。


二階の機材はどうしようかな?

ポーションづくりには必要だけど、あの器材で作られたポーションが残酷な動物実験に使われたかと思うと使いたくない。


そういえば木箱に新品っぽい器材が詰められて、積んであったな。

あれ多分予備だろうから、あっち使おう。

棚に並んでた瓶や材料も、使われた形跡があるのは全部廃棄してやる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る