お風呂作るぞ

起きた。

目覚めは鳥の鳴き声だったけど、チュンチュンとかじゃなくてギアーギアー。

上の方から聞こえるから鳥だとは思うんだけど、目覚めのBGMには合わない。


起きたら少し空腹を感じたので、昨日採って来た一粒がピンポン玉サイズの巨大マスカットを三粒食べた。

昨日はお茶飲んだだけで何も食べてないのに、この程度の食事で充分なんだよね。

ああ、昨日はあっちこっち飛び回ってたし光球点けっぱなしだったから、魔素消費した分おなか空いたのか。納得。


よし、今日はまずお風呂作ろう。


昨日着てたワンピースとズボンに着替え、お外に岩を探しに行きます。

え、ばっちい?

妖精種、汗も掻かなければ表皮からの分泌物もありません。角質だって元気なままだし。

だから着替えは、出歩いて汚れたら替えればいい程度。半分は気分なんだよね。便利な身体だ。


森に出るのに生足出したくないから、昨日の服装でお出かけなのです。

だってまだ、ズボンの替えは作ってないから。


森の中、結構岩が転がってるの。みんな苔むしてるけど。

良さげなサイズの岩をその場でカットして、中をホジホジ。魔法、便利!


この岩、多分黒曜石だな。

黒に近いけど、若干ガラス質っぽい透明感がある。

80cmx50cmx40cmの浴槽できました。


え、小さい? 足洗い場のサイズ的に、この大きさしか置けないんだよ。それに私、身長1mに届いてないし。ぐすん。


作った浴槽を異空庫に入れて塔に戻り、早速浴槽を設置したんだけど…。

洗い場が無い。

これだと、空の浴槽に入って体を洗い、その後でお湯を張って浸かるってこと?

浴槽を横に置こうにも、片側はすぐに壁だし反対側は煙突付きのかまどが固定されてるの。


ぐぬぬ、うまくいかないな。

でもまあ、お風呂に入れるんだからこれで我慢しよう。

漏水チェックにお水張ってみたけど、漏れはなさそう。


…お水もったいないから、洗濯でもしよう。

どうせ服脱ぐんだから、身体も洗っちゃえ。


洗濯と身体洗い終了したから、作った紐パンとワンピース装備した。

洗濯物から水分抜いて、ズボンを型紙代わりにしてシーツをチョキチョキ。

さて、縫うぞ。


…縫うのって、魔法でパパっと出来ないのかな?

魔法で布と針を操ることは出来るんだけど、それじゃ手縫いと大差ない。


シャツ改造ワンピもダボダボだから、出来れば服も買いたいな。

だけど最寄りの町は、ここから直線で50km以上離れてる。

今の私じゃそんなに飛べないし、たとえ町に行けたとしてもお金が無い。しかも幼女じゃ買い物すらさせてもらえそうにない気がする。

ぐぬぬ、前途多難だな。


ズボン縫ってたらルナが来てくれたので、色々と聞いてみた。

服、何とか手に入るらしいよ。


最寄り(50km北東)の町近くに半妖精が住んでるから、薬草や果実を持って行けば物々交換してくれるらしい。

ただし最初はルナ同伴で紹介してもらわないといけないから、往復100kmを高速で飛べるようになるまではお預けなの。

ルナは自分のテリトリーを毎日巡回警備してるから、あまり長くここを離れたくないそうだ。

往復二時間以内って、時速50km以上出さないとダメなんですが…。


当分服は、手作りで我慢しよう。

その日は頑張って、ズボン一着とダボダボじゃないワンピース一着仕上げた。




今日もギアーギアーの声で目覚めた。

あの鳴き声の主、いったいどんな動物なんだろう。


今日は周辺をお散歩しようかと思ってたのに、朝から雨が降ってる。

森の木々が傘代わりにならないかと外を見てみたら、上の方で葉が重なってる分、雨粒が集約されてドボドボ落ちて来てた。

雨に濡れるのも嫌なので、二階で読書でもしよう。


ここにいた研究者さん、どうやら新たなポーションを開発しようとしてたみたいで、研究日誌に試行錯誤した記述がいっぱいあった。


地球みたいな各種の分析器なんて無いから、ほとんどカットアンドトライの域。

〇〇の葉何グラムと△△の根何グラムを何分間煮出してとか、◇◇の茎何グラムを乾燥させて加えなんて記述だらけ。


本棚に並んでた本は、手書きの植物図鑑がずらり。従来のポーションの作り方なんかもあった。


みんな手書きで筆跡も違うから、かなり貴重な本を集めたみたい。

こんな森奥に塔建てて物資輸送隊も定期的に来させてただろうから、きっとお金持ちな上位貴族だったんだろうね。


雨は止みそうになくて暇なので、ちょっとポーションづくりでもトライしてみよう。



夕方までかかって傷用ポーションらしき物は出来た。

薬草名だけ書かれててもどの草がその薬草なのか分かんないから、図鑑と睨めっこしながらざるや籠に入ってた乾燥した草を探し、机の上にあったポーション作成器材と思われるものを使って、本の記述通りだろうと思われる方法でポーション作成。


だろうや思われるばっかり。つまり、出来上がった物は、限りなく怪しいポーションかもしれない物体X。

しかも私は妖精だから、怪我しても魔素さえあれば割とすぐに治っちゃうはず。

だから自分の身体で人体実験すら出来ないの。


暇つぶしだから出来上がったのがポーションじゃなくてもいいんだけど、怪しさ満点で怖くて使えない。

既存のポーションと取り違えるといけないから、小分けせずにドクロマークのラベル張って異空庫の肥やしにしよう。

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