初めまして異世界
「私、異界の地に爆誕!」
あ、ごめん。ちょっとノリで宣言してみた。
私、更科日葵(さらしなひまり)です。
年齢は……今、三歳!
転生前? 今現在三歳で生きてるんだから、三歳ったら三歳なの!
どうやら私、日本で死んじゃったみたいなんだけど、その辺の記憶は無いんだよなぁ。
転生させてくれた女神様が、そのあたりの記憶は移植しないって言ってたから。
転生理由もね、神様的事情とかで教えてもらえなかったの。
ただ、この世界で自由に生きなさいって言われただけ。
私の今のボディ、ぷにぷにの三歳児。
魔素ありきな世界なため、根本的に地球人とは細胞の作りからして違うので、私の身体はおニューなのです。
え? 言葉のチョイスで年代がバレる? うっさい、今は三歳だ。
どうやら神様的事情で転生時に使える魔素量が決まってるらしいんだけど、人間の身体能力上限にも転生時の制限があるそうで、人の身体だと平均的な一般人と比べて1.5倍程度上の身体能力にしかできないって言われたの。
まあそうだよね。同じ人間なのに、いきなり何倍もの能力持ってたらそりゃずるい。
でもね、お金や宝石類、食べ物は魔素では作れないらしく、金額相当の魔素と交換なんだって。
だから人間に転生した場合は、余った魔素でかなりお金持ちな状態での転生になる。
でも色々とこの世界のことを質問した結果、魔物がいて危ないし、病気や怪我での死亡率も高いと聞いて、身体が魔素で構成された妖精種という種族に生まれ変わらせてもらったの。
妖精って魔素があれば病気しないし、怪我も魔素の補充で治るそうだから。
だけど転生規定の魔素量で妖精種になろうとすると、三歳児サイズが限界だった。しかも無一文で、簡素な服以外持ち物も無し。
ちなみに、人間の場合は裕福な家庭で胎児からとか思ったら、親の心情も考えなさいと叱られた。
だよね。待望の我が子が異世界転生者とか、親が可哀想だ。
だから転生時は、どんな種族を選んでも天涯孤独。
転生自体そんなには無いそうなんだけど、大抵はお金持ちで能力値1.5倍の成人したて(十五歳)のボディで転生することが多いらしい。
だから無一文で三歳児サイズの絶対数が人間よりはるかに少ない妖精種、しかもボッチサバイバルスタートで本当にいいのかと、何度も念押しされちゃったよ。
うん。目線めっちゃ低いし、手足ぷにぷにで短い。
髪の毛は淡い金髪のさらさらストレートだけど、鏡無いから顔は分かんない。
今の私は妖精種になりたての三歳児サイズで、人間の大人やレベルの低い半妖精よりかは強いけど、妖精種では最弱です。
でもまあ、病気しないし怪我しても魔素があれば治るから、わりと安心安全ボディ。妖精種を選んだ理由は、これが決め手。
で、今私がいるのは、森の奥深くにある石造りの塔の中。
元々は学者さんが建てた森林植物研究用の塔らしいんだけど、学者さんが亡くなって放棄された場所。
転生場所も人間だと家付きの候補が多いみたいなんだけど、妖精種だと選べるのが廃村かここしかなかったの。
廃村は人族領域に近いけど、大半の物資は持ち去られた後。
ここは人族領域の町まで50kmはあるけど、物資残ってるからとここを選びました。
前世基準だと不法占拠だけど、こっちの世界では人族の支配領域外なら、放棄された建物には所有権が無いらしい。
でも所有権なんて妖精じゃ主張できないから、結局は無断利用なんだよね。
放棄された塔に幼女ひとりじゃ普通は餓死の危機だけど、妖精種は息してるだけでも空気中の魔素を取り込んで生存可能なの。だから飲食物は、嗜好品と大差無い。
妖精種を選んだのは、これも大きな理由のひとつです。
ただ、大怪我の修復や魔法連発しすぎて固有魔素が激減した時は、食べ物から魔素を補充した方が回復が早いし、四肢が欠損しても生えるのが早い。
そんな便利な妖精種だから、塔でボッチでも生きていけるはず。
それにこの塔は森の奥すぎて放棄時も物資は搬出されてないから、お金や貴金属以外はいっぱい生活物資残ってるし。
さて、何がどこにあるか分からないので、まずは塔内を探索してみよう。
一階には、キッチンやかまど、トイレなんかがあったけど、お風呂は無かった。
しかもキッチン横に大きな水瓶が置いてあったから、水道の魔道具はないんだね。
……段差高けぇよ。三歳児にこの階段は無理だ。
三歳児のボッチサバイバルなんて無謀すぎるけど、よくよく話を聞けば、この世界には魔法があるから何とかなりそうだと思って。
しかも妖精は人間より魔法が使いやすいらしいから、身体能力の不足分は魔法で補うつもりです。
まずは飛行魔法の練習がてら、魔法使って浮きながら二階に上がったよ。
うん、ふよふよだけど、何とか浮けるね。
ふむ、二階はどうやら研究用の部屋みたい。
大きな机が部屋の中央にデンと置かれてて、薬研やら乳鉢、試験官やフラスコなんかのガラス製品もあった。
壁には棚が並び、色んな物が置いてある。
注射器やらシャーレ、メスシリンダーが置いてあるかと思えば、隣の棚にはカサカサになった草っぽい物が、わんさかざるや籠に入ってる。
違う棚にはガラス瓶に入った薬剤がラベル付きでずらりと並んでるし、かと思えば大量の書物もある。
柱時計も置かれてたけど、ゼンマイ巻かれてないから止まってた。
時間分かんないから、時刻合わせのしようがないな。
窓は嵌め殺しな上に、すっごい頑丈そうな面格子まで付いてた。
そういえば、一階の窓にも面格子見えた気がする。
女神様から脳にインストールしてもらった基本情報によると、魔物の侵入を防ぐために、大抵の窓には面格子嵌ってるみたい。
いかんな。ついつい日本の常識で考えて、牢屋かよとか思っちゃった。
この辺は、おいおい慣れてくしかないな。
三階に上がったら、そこは寝室だった。
天蓋付きベッドとワードローブ、タンスや小机が置いてあった。
天蓋付きベッドといい吊るされてる服の豪華さといい、ここにいた研究者は貴族だったんだろうね。
三階なのに、窓にはやはり頑丈な面格子。
三階でも面格子要るんだ…。
次の階への階段は無いから、この塔は三階建てで屋上には上がれないんだね。
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