第8話 運命の決着

施設全体が鳴り響く警報音の中で、ヴィラン連合の最終戦いは激化していた。

大和は建物外で、白のヒーローと一対一の戦いに追い詰められていた。

その頃、施設内部では、玲司と蓮が中央コアに到達し、指揮官との直接対決を繰り広げていた。


白のヒーローの槍が風を切り、大和のすぐ脇を通り過ぎる。

その圧倒的な力に、大和は息を荒らしながらも必死に足を動かしていた。


白のヒーロー「逃げるだけか?それが仲間を救う手段だと思うのか」


挑発的な言葉に、大和は一瞬立ち止まり、振り返った。


大和「逃げてるだけじゃない!俺がここにいることで、時間を稼げてるんだ。

仲間を信じてるから俺はこうして立ち向かってんだよ!」


その言葉に、白のヒーローの目が鋭く光った。


白のヒーロー「その信念、見届けてやろう」


再び槍が振り下ろされ、大和は紙一重でかわす。

しかしその動きは徐々に限界に近づいていた。


施設内部では、玲司が指揮官と対峙していた。

その男は冷たい笑みを浮かべ、玲司に語りかける。


指揮官「君がここまで辿り着いたのは驚きだ。だが、結局無意味だ。

この中央コアを破壊したところで、計画の根幹は揺るがない」


玲司「お前たちの『正義』は腐りきっている。だから俺たちはここにいるんだ」


指揮官は手元の端末を操作し、コアから放たれるエネルギーが玲司たちを囲むように光り始めた。


蓮「玲司、ここからどうする?」


玲司「簡単だ。このコアを叩き壊す」


玲司の目には迷いがなかった。彼は迷わず、中央コアに向かって突進する。


一方、外では真希が大和の窮地を感じ取り、無線で彼に呼びかけていた。


真希「大和くん、まだ頑張ってるの?」


大和「当たり前だろ!でも、そろそろ限界だ…助けが必要だ!」


真希は微笑を浮かべながら爆弾を準備する。


真希「じゃあ、ド派手に助けてあげるよ。逃げる準備はしといてね」


数秒後、建物の外壁が爆発し、白のヒーローが一瞬ひるむ。


真希「ほら、チャンスよ!」


大和はその隙を突き、全力で白のヒーローから距離を取った。


施設の最深部では、玲司が指揮官との戦闘を続けていた。

蓮が影を操り、指揮官の動きを封じ込める中、玲司が決定的な一撃を繰り出す。


玲司「これで終わりだ!」


彼の拳が中央コアに直撃し、轟音と共に施設全体が揺れた。


指揮官「お前たちの反抗がどれほど無意味か…これで理解するだろう」


コアが破壊された瞬間、施設の電源が落ち、全てのセキュリティが停止した。

指揮官は倒れ込みながらも冷笑を浮かべていた。


指揮官「だが、これが終わりだと思うなよ。計画はまだ生きている…」


玲司「黙れ。その計画も、お前も、ここで終わりだ」


外に出た連合のメンバーたちは、揺れる施設を背にして全員が集結した。

爆煙の中で、彼らの顔にはそれぞれの疲労と達成感が浮かんでいた。


玲司「全員、生きて戻ったか」


大和「ギリギリだけど、なんとかね…」


真希「また派手にやっちゃったね。まあ、これで一旦は平和ってことでしょ?」


蓮「まだだ。計画の全てを終わらせたわけじゃない」


千夏「でも、これで大きな一歩を踏み出せたのは確かよ」


玲司は全員を見渡し、静かに言葉を紡いだ。


玲司「俺たちがここまで来られたのは、全員が力を尽くしたからだ。

だが、これが終わりではない。プロメテウス計画の影響はまだ残っている。

それを完全に消し去るまで、俺たちは進み続ける」



廃工場に戻ったヴィラン連合の面々は、今回の作戦で得た情報を整理しながら、次の行動を話し合っていた。

中央コアの破壊は、プロメテウス計画に大きな打撃を与えたものの、計画そのものを完全に終わらせたわけではなかった。


千夏「解析した結果だけど、プロメテウス計画のデータがまだ他の場所に分散されてるみたい。

中央コアはあくまで拠点の一つでしかなかったのよ」


真希「はぁ?どんだけしつこいのよ、この計画」


蓮「次のターゲットはどこだ?」


千夏はホログラムを操作し、新たな施設の情報を表示した。

それは政府の極秘研究所だった。


千夏「ここが次の目標ね。この研究所では計画の最終段階に必要な『試作兵器』が開発されてる」


玲司「つまり、この研究所を破壊すれば、計画の完全な実行は不可能になる」


蓮「だが、これまで以上に厳重な防衛が予想される」


玲司は頷きながら、静かに全員を見渡した。


玲司「今回の作戦では、全員が一つのチームとして動く。

個々の役割は変わらないが、全員が同じ目標に向かって最大限の力を尽くす必要がある」


大和は一人、廃工場の片隅で考え込んでいた。

これまで何度も命を賭けたが、自分がこの戦いにどれだけの意味を持つのか、答えは見つからないままだった。


その時、真希が彼の隣に腰を下ろした。


真希「また悩んでるの?」


大和「…正直、俺がこのチームにいていいのか分からないんだ。

囮役しかできないし、いつも足を引っ張ってる気がしてさ」


真希は軽く笑いながら、大和の肩を叩いた。


真希「あんたさ、何でそんなに自分を低く見積もるの?

囮役ってのは、あんたにしかできない大事な仕事だよ」


大和「…でも」


真希「でもじゃない!あんたがいたから、私たちは生き延びられたの。

それだけで十分意味があるでしょ?」


その言葉に、大和は少しだけ顔を上げた。


作戦当日、ヴィラン連合は研究所に向かって静かに動き出した。

玲司の指揮の下、全員がそれぞれの役割を担い、最後の目標に挑む。


千夏「セキュリティを解除するのに少し時間がかかりそう。みんな、その間に配置について」


真希「了解。ド派手にやる準備はできてるわよ」


蓮「俺は影を使って内部への道を確保する」


大和は再び囮役を任されていた。

彼は深呼吸をし、自分を奮い立たせながら建物の正面に立った。


大和「よし、行くぞ…!」


研究所内では、プロメテウス計画の最終責任者が冷静な目で監視モニターを見つめていた。

その男――黒のヒーローと呼ばれる存在は、プロメテウス計画の根幹を守る最後の砦だった。


黒のヒーロー「反逆者たちがここまで来るとはな。だが、ここで全てを終わらせる」


彼は指を鳴らし、研究所内の全警備を厳戒態勢に移行させた。


外では、大和が警備員たちを引きつけるために、いつものように派手な音を立て、挑発的な言葉を投げかけていた。


大和「おーい、こっちだ!俺が反逆者のボスだぞ!捕まえられるもんなら捕まえてみろ!」


その叫びに警備員たちが一斉に動き出す。

彼らの足音が響く中、大和は全力で走り続けた。


大和「やべえ…今回は数が多すぎる!」


施設内部では、千夏が懸命にセキュリティの解除を試みていた。

しかし、黒のヒーローの指揮の下で強化された防衛システムが、彼女を阻む。


千夏「こんな難しいセキュリティ、どうなってんのよ!」


玲司「落ち着け。時間を稼ぐ。それがお前の役目だ」


蓮「俺がサポートに入る。お前は集中しろ」


千夏は深呼吸をし、再びキーボードを叩き始めた。


その頃、真希は施設外周で仕掛けた爆弾を次々と爆発させ、警備の注意を分散させていた。


真希「これで少しは楽になったでしょ?大和くん、逃げる時間は稼いだわよ!」


大和「助かる!でも、もっと稼いでくれ!」


施設の最深部では、玲司が黒のヒーローと直接対峙していた。

二人の間にあるのは、計画の全データを内包する端末だった。


黒のヒーロー「お前のような反逆者に、この計画を止める資格はない」


玲司「資格なんてものは関係ない。俺たちは、この腐った社会を変えるために戦っている」


黒のヒーロー「正義に背く者が、何を変えられるというのか」


玲司「お前たちの『正義』が人々を苦しめている。だから俺たちはここにいる」


激しい戦闘が始まり、施設全体が揺れる中、最終決戦が繰り広げられた。


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