第5話 試される忠誠

夜の廃工場は冷たい静けさに包まれていた。

先日の作戦で明らかになった千夏の裏切りの未遂は、ヴィラン連合の間に不穏な空気を残していた。

彼女が再び信頼を得るには、自らの行動で証明するほかない。


玲司は作戦後の会議で、全員に次の目標を告げた。


玲司「次のターゲットは『第3施設』だ。ここにはプロメテウス計画の主要なデータが保管されている。

今回の成功で計画の全貌がほぼ見えるはずだ」


真希「ふーん。次はもっと厳しいセキュリティが待ってるんじゃない?」


玲司「その通りだ。今回の施設はこれまでよりも高度な監視システムと、直接守備するヒーローが配備されている」


蓮「具体的には?」


玲司はホログラムを操作し、施設の警備体制を示す映像を映し出した。


玲司「今回は、『白のヒーロー』と呼ばれる存在が相手だ。

彼はプロメテウス計画の直接的な指揮官でもある。極めて危険な人物だ」


白のヒーロー――その名を聞いた瞬間、場の空気が一段と重くなった。

彼は冷徹な戦闘能力と徹底した管理体制で知られ、過去に反逆者を幾度も抹殺してきた。


千夏「…あんたたち、本当にそれに立ち向かうつもりなの?」


彼女の声にはわずかな怯えが混じっていたが、真希がその空気を切り裂くように笑った。


真希「何言ってんの、千夏。私たちは最初からやる気満々でしょ?」


蓮「覚悟がないなら、ここにいる必要はない」


玲司「蓮、やめろ」


玲司の一言で場の空気が収まる。彼は全員を見渡しながら話を続けた。


玲司「どんな危険があろうと、この計画を止めることが俺たちの目的だ。

全員がそれを理解して動いてくれ」


作戦準備が進む中、大和は施設の警備ルートを確認しながら頭を抱えていた。

再び囮役を任された彼は、今回の相手が白のヒーローであることに不安を拭えずにいた。


大和「俺があいつを引きつけるなんて無理だろ…死ぬの確定じゃねえか」


その時、真希が彼の肩を軽く叩いた。


真希「大和くん、そんな顔しないでよ。あんたには前回ちゃんとやれた実績があるんだからさ」


大和「実績って…死ななかっただけだろ」


真希「生き延びることが何よりの実績でしょ?」


真希の明るい言葉に、大和は苦笑しつつも少しだけ心が軽くなった。


作戦当日、ヴィラン連合は深夜の施設へ向かう。

施設周辺は明るいライトに照らされ、至る所にセンサーが設置されている。


千夏「セキュリティの突破は私がやるわ。…今度こそ、ちゃんとね」


蓮「頼む。ここでしくじれば全てが終わる」


千夏は緊張した面持ちで頷き、ハッキングを開始する。

その間、大和は白のヒーローが現れるだろう正面ゲートに向かっていた。


大和「…やるしかねえか」


自らの小ささを感じながらも、彼は深呼吸をして気持ちを整える。


施設内では、蓮が影のように動き、中枢データの保管庫に近づいていた。

真希は外周で仕掛けた爆弾を操作し、警備を分散させる。


真希「これで正面から来るやつは全員そっちに向かうはず。大和くん、頑張ってね」


無線越しの言葉に、大和は苦笑を浮かべる。


大和「俺が失敗したら、あんたが助けに来いよな」


その直後、白い影が視界に飛び込んできた。

鋭い目つきと冷徹な表情を持つ白のヒーローが、まっすぐ大和を見据えていた。


白のヒーロー「お前が騒ぎを起こしている張本人か」


その低い声に、大和の全身が震えた。


一方で、千夏がセキュリティを解除し、蓮がデータの回収を進めていた。

だが、システムの中には意外なトラップが仕掛けられており、千夏は苦戦を強いられる。


千夏「まずい…予想以上にセキュリティが複雑…」


蓮「時間を稼げ。俺がもう少しで到達する」


千夏は懸命にキーボードを叩き続ける。


正面では、大和が白のヒーローの攻撃を必死でかわしていた。

彼の動きは研ぎ澄まされており、まともに戦えば即座に倒されることは明白だった。


大和「くそっ、こいつ化け物かよ…!」


それでも、大和はわざと大きな音を立てたり、挑発的な言葉を投げかけたりして、白のヒーローの注意を引き続けた。


その瞬間、背後で爆発音が響き、真希の仕掛けた爆弾が施設の一部を崩壊させた。


真希「よし、大和くん、今のうちに逃げな!」


大和「言われなくても!」


作戦はギリギリの中、なんとか成功を収めた。

データを持ち帰った連合の面々は、それを解析し、プロメテウス計画の全貌に近づいていく。


玲司「これで次が最終段階だ。全てを終わらせる準備を始めるぞ」

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