第4話 裏切りの影

廃工場に戻ったヴィラン連合の面々は、それぞれの持ち場で作戦の振り返りを始めていた。

作戦は混乱の中なんとか成功したが、危機的な状況も多く、次の行動に向けた課題が山積していることは明白だった。


玲司「全員、聞け。今回の作戦で奪取したデータは、プロメテウス計画の一部だ。

だが、これだけでは計画の全貌を掴むことはできない」


彼はホログラムに浮かび上がる計画書の断片を指差しながら説明を続けた。


玲司「次の段階として、このデータに基づいて他の施設への侵入が必要だ。

だが、その前に――裏切り者を洗い出す」


その言葉に、場の空気が一瞬で凍りついた。


千夏「裏切り者?どういうこと?」


玲司は冷静にデータを閉じ、鋭い目で全員を見回した。


玲司「今回の作戦中、明らかに敵側がこちらの動きを予期していた痕跡がある。

施設の警報が早すぎた。誰かが情報を漏らしている可能性が高い」


真希「待てよ、ちょっと待ってくれ。私たちの中に裏切り者がいるって言うの?」


彼女は信じられないという顔で玲司を見つめた。


蓮「理にかなう。敵に内部情報が漏れていなければ、あの警報のタイミングは説明がつかない」


その冷静な分析に、千夏が苛立ったように声を上げる。


千夏「だからって、いきなり疑われるのはたまったもんじゃない! 私が情報を漏らすわけないでしょ!」


玲司「そう思うなら、自分の潔白を証明する機会を与える。

だが、警戒を怠れば次は命を落とす。覚悟しておけ」


その夜、工場内の空気は重苦しく、全員が互いを疑う視線を送り合っていた。

大和は一人、工場の隅で頭を抱えていた。


大和「俺は何もしてないのに、ここにいるだけで疑われそうだな…」


その時、蓮が近づいてきた。影のように静かな足取りで、大和の隣に座る。


蓮「疑われる理由があるなら、それを無くせばいい」


大和「簡単に言うなよ。俺なんか、ただの詐欺師だぞ」


蓮は無言で視線を投げかけ、ゆっくりと言葉を継いだ。


蓮「詐欺師だからこそ、嘘を見抜く目を持っているはずだ」


その言葉に、大和はハッとした。


翌日、玲司の指示で全員が再び作戦会議に集められた。

裏切り者の存在を確認しつつも、次の作戦に向けた準備を進める必要があった。


玲司「次の目標は、プロメテウス計画の第2段階データだ。

これを手に入れれば、敵の計画全体を暴く鍵が見つかる可能性がある」


千夏「ターゲットの施設は、前回よりセキュリティが厳しいわけね?」


玲司「その通りだ。今回の作戦では、チーム全員の能力を最大限に活用する必要がある」


真希「つまり、またド派手にやるってことね! 任せときな」


彼女の明るい口調に、大和は少しだけ緊張をほぐされた。だが、蓮の一言が再び場の空気を引き締める。


蓮「裏切り者が再び動けば、全てが無駄になる。次は失敗が許されない」


大和は再び囮役を任されることになった。

その役割を果たす中で、彼は施設周辺の警備体制に隠された不自然な点を見つける。


大和「これ、誰かが内部情報を渡してるとしか思えないな…」


その報告を受けた玲司は、大和に向かって静かに命令した。


玲司「お前がその不自然な点を洗い出せ。裏切り者を見つける手掛かりになる」


大和「マジかよ…囮だけでも大変なのに?」


玲司「だからこそ、お前に任せる。誰もが予想しないところで力を見せてみろ」


作戦中、大和は警備員たちを引きつけつつも、不自然な点を追求していく。

やがて、施設の一角で仲間の情報を持ち出そうとしている影を発見する。


その人物は―― 千夏だった。


大和「おい、何やってんだよ!」


千夏は驚いた顔を見せるが、すぐに冷静さを取り戻し、大和を睨みつけた。


千夏「…あんたには関係ないでしょ」


だが、大和は千夏が持っていたデバイスを奪い、玲司の元へ持ち帰った。


廃工場に戻り、全員が集められた。

玲司は千夏の行動を静かに問いただす。


玲司「千夏、なぜ情報を持ち出そうとした?」


千夏は一瞬躊躇した後、口を開いた。


千夏「…家族が人質に取られてるのよ。それを守るためには仕方なかったの」


その言葉に、真希が驚きと怒りの入り混じった声を上げる。


真希「何それ! そんなこと言って、私たちを裏切ったわけ?」


千夏「裏切るつもりなんてなかった!でも…家族を見捨てるなんて、私にはできなかった…」


玲司はしばらく考え込んだ後、深い息を吐き出した。


玲司「今回の行動は許されるものではないが…お前の事情も理解した。

今後は家族の問題もこちらで対処する。それでもこのチームに残るか?」


千夏は目を伏せながら、小さく頷いた。


作戦は無事に終わり、千夏の裏切りも未遂に終わった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る