第3話 最初の作戦
廃工場の中央に浮かび上がるホログラムには、巨大な施設の構造図が映し出されていた。
それはジャポネ政府の極秘施設であり、「プロメテウス計画」の中枢ともいえる場所だった。
玲司「これがターゲットだ。プロメテウス計画のデータを保管している施設。
このデータを奪えば、計画の詳細が明らかになる。そして、奴らの野望を食い止めるための武器が手に入る」
玲司は全員を見渡し、静かに言葉を続けた。
玲司「作戦は単純だ。千夏がセキュリティを解除し、蓮が内部に潜入してデータを回収する。
真希は突破口を開く役目だ。そして――」
玲司の視線が、大和に向けられた。
玲司「お前の役割は囮だ。施設周辺の警備を引きつける。
ヒーローたちの目を逸らせば、作戦が成功する確率は格段に上がる」
大和「囮って…俺が捕まるリスクが一番高いじゃねえか!」
玲司の冷静な視線が、大和の抗議を押し返した。
玲司「ヒーローをかく乱するにはお前の手口が最適だ。逃げる術と機転はお前の武器だろう」
千夏「ま、成功すれば英雄扱い。失敗すればただの役立たずってところね」
千夏が皮肉っぽく笑うと、真希が肩をすくめた。
真希「大丈夫、大和くん。万が一の時は私がド派手に救ってあげるから」
蓮「時間を無駄にするな。役立つかどうかは、行動次第だ」
冷たい言葉が大和を苛立たせたが、反論する気力は湧いてこなかった。
玲司「作戦開始は明日の夜。それまでに準備を整えろ」
全員がそれぞれの持ち場に散っていく中、大和は工場の片隅に腰を下ろし、拳を握りしめていた。
自分が本当にこのチームの一員として役に立つのか。疑問と不安が胸を締めつける。
「俺にできるのか…?」
頭を抱え込む大和の前に、玲司が静かに現れた。
玲司「恐れるのは当然だ。だが、その恐怖を乗り越えなければ、何も掴めない」
玲司の言葉には力強さがあった。
大和はその言葉に勇気をもらい、小さく頷いた。
大和「…やってみるよ」
翌夜、作戦は静かに始まった。
施設の外周を警備するセンサーの間を縫うように、大和は走り抜けていく。
耳元では、千夏の声が無線から聞こえていた。
千夏「もう少しで正面の警備員たちの視界に入る。そこからが本番よ」
大和は深呼吸をし、目の前に立つ警備員たちを見据えた。
彼らは政府直属のヒーローに匹敵する力を持つと言われる精鋭だった。
「やるしかねえ…!」
大和は地面に転がっていた小石を蹴り、音を立てる。
警備員たちがその音に反応し、大和に向かって近づき始めた。
大和「おっと、やりすぎたか?」
施設内部では、蓮が静かに動いていた。
影を利用して死角を縫うように進み、千夏の指示を受けながらセキュリティを突破する。
千夏「次の角を左。そこにあるドアのロックを解除するから待ってて」
蓮「了解」
その間、外では真希が設置した爆弾が遠隔操作で爆発し、大きな混乱が起きていた。
真希「さあ、これでみんな忙しくなるよね」
彼女は爆発音を楽しむように笑いながら、無線に向かって話しかけた。
真希「蓮、次のルートも空けたよ。あんたの好きに動きな」
一方、大和は警備員たちを引きつけることに成功していた。
しかし、その動きが徐々に追いつかれそうになり、焦り始めていた。
大和「ちょ、ちょっと待て…これじゃ捕まる!」
無線で状況を確認していた玲司の声が届く。
玲司「落ち着け。お前の役目は逃げ切ることじゃない。彼らを完全にこちらに引きつけることだ」
大和「そりゃ分かってるけど、命がけだろ!」
だが、大和の頭の中には、自分の役割がチームの成功を左右することへの重圧が渦巻いていた。
彼は全力で走り続け、警備員たちをさらに深いエリアへ誘導した。
その間、蓮が中枢部に到達し、データの回収を始める。
千夏「いいわね、データ転送中…あと30秒で完了する」
しかし、その瞬間、施設全体に警報が鳴り響いた。
千夏「まずい! センサーが作動した。誰かが気づいたみたい!」
玲司「全員、予定通り退避に移れ。蓮、データの回収を最優先に!」
外では、大和が警備員たちに追い詰められていた。
数人に囲まれ、ついに足を止めざるを得なかった彼は、冷たい汗を流して立ち尽くしていた。
大和「…ここまでか?」
その時、背後から真希の声が響いた。
真希「おまたせー! いいところで助けに来たよ」
真希が設置した新たな爆弾が爆発し、警備員たちは混乱の中に飲み込まれた。
真希「さ、撤退の時間だよ、大和くん」
作戦は混乱の中、なんとか成功した。
廃工場に戻ったメンバーたちを待っていたのは、回収された「プロメテウス計画」のデータだった。
玲司「第一段階はクリアだ。だが、ここからが本番だぞ」
大和は肩で息をしながら、少しだけ安堵した表情を見せた。
自分の力が少しだけ役に立ったことが、彼の中で小さな自信となって芽生え始めていた。
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