第2話 ヴィランたちの集結
廃工場の中、薄暗い蛍光灯が鈍く光り、床に散らばった鉄屑が冷たい空気を漂わせていた。
大和は、ここが自分の居場所ではないと感じながら、周囲を見渡していた。
玲司「これからの話を始めるぞ」
工場の中央に立つ玲司が、低く響く声で呼びかけた。
そこには、彼が集めた「ヴィラン連合」のメンバーたちが揃っていた。
玲司「紹介する。こいつが新入りだ。名前は大和。まだ何ができるか分からないが、役に立つ可能性はある」
その言葉に、一人の女性がノートPCを操作しながら顔を上げた。
短髪で鋭い目つきをした彼女――千夏が冷笑を浮かべる。
千夏「可能性ねぇ…ただの詐欺師でしょ?どこにそんな価値があるわけ?」
壁にもたれていた無口な男――蓮も低い声で呟いた。
蓮「ただの詐欺師なら、ここにいる意味はないな」
爆弾を弄っていた真希は、軽い調子で肩をすくめながら口を挟んだ。
真希「まあまあ、そんなにイライラしなくてもいいじゃない。どうせ役立たずなら、そのうち消えるでしょ」
その言葉に、大和は反発したい気持ちを覚えたが、口を開く勇気が出なかった。
玲司「黙れ」
玲司の一喝で場の空気がピリッと引き締まった。
彼は冷静に大和を見つめながら言葉を続ける。
玲司「大和、お前の手口はくだらない。だが、応用次第では役に立つ。
ヒーロー社会を相手にするには、ただ力を振りかざすだけじゃダメだ。策略が必要だ」
玲司の目に宿る冷徹な光が、大和の胸に突き刺さるようだった。
彼は反発しつつも、返す言葉を見つけられなかった。
玲司「さて、本題に入る。俺たちが動き出す理由は一つだ。『プロメテウス計画』を阻止する」
その言葉に、千夏がキーボードを叩く手を止め、目を見開いた。
千夏「プロメテウス計画…それって噂の奴? 本当に存在するの?」
玲司はポケットから小型のデバイスを取り出し、それを操作した。
瞬間、ホログラムが空間に浮かび上がり、複雑な施設の構造図が映し出された。
玲司「これが、プロメテウス計画の中枢だ。ジャポネ政府がヒーローをさらに強化し、完全な支配体制を築こうとしている」
真希「ヒーローをさらに強化って…十分手に負えないのに、それ以上の怪物を作るつもり?」
蓮「つまり、俺たちみたいな存在を徹底的に排除するための兵器を作る計画だということか」
玲司「その通りだ。そして、それが完成すれば、この社会に自由はなくなる」
説明が進む中、大和は混乱していた。
自分がこれまで関わってきた小さな詐欺とは次元が違う話だった。
思わず手を挙げて口を開く。
大和「待てよ。俺たちがそれを止めるって言うのか?相手はヒーローだぞ。無理だろ、そんなの!」
玲司は大和の言葉を静かに聞きながら、鋭い目で見つめ返した。
玲司「無理かどうかは、お前が決めることじゃない。だが、ここにいる限り、お前にもその責任がある」
その目は揺るがず、大和の反発を押し込めるような力を持っていた。
作戦はシンプルだった。
施設に潜入し、データを盗み出す。
千夏のハッキング、真希の爆弾技術、蓮の潜入能力が鍵を握る。
だが、大和に割り振られた役割は「囮」だった。
玲司「お前は、施設の警備を引きつける役だ。自分の手口を使って敵を混乱させろ」
その言葉に、大和は驚きと反発を露わにした。
大和「囮って…俺を捨て駒にする気かよ!」
千夏「捨て駒かどうかは、自分次第でしょ?」
真希「まあ、上手くやれば命くらいは助かるんじゃない?」
蓮「役に立たなければ、それまでだ」
冷たい言葉が大和の胸に突き刺さる。
彼は顔を歪めながら言い返そうとしたが、言葉が出てこなかった。
夜が更け、ヴィランたちはそれぞれ作戦の準備を進めていた。
大和は廃工場の片隅で、一人膝を抱えていた。
「俺に、本当にできるのか…」
自分がこのチームに必要とされているのか。疑念が胸の中で渦巻く。
その時、玲司が近づいてきて、大和の肩に手を置いた。
玲司「何を考えている?」
大和「俺にできるのか分からない。詐欺師が、こんな大それたことに加わるなんて」
玲司は軽く頷き、大和の目を見つめた。
玲司「誰だって、最初は分からない。だが、やる前から無理だと決めつければ、何も変わらない。
ここで逃げるか、挑むか。選ぶのはお前だ」
玲司の静かな言葉に、大和は拳を握りしめた。
大和「…分かった。やってみる」
こうして、大和はヴィラン連合の一員として初めて動き出す決意を固めた。
だが、その先に待ち受ける運命は、彼が想像する以上に苛烈で危険なものだった――。
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