第32話

「副会頭?お時間ですがお昼はどのようにいたしますか?」


「ああ。ん?もうお昼ですか。3人分こちらへお願いします。ヒロ君達は食べれないものはありますか?ふむそうですな。


 マリー食べやすいサンドイッチのようなものをお願いします。彼らの年齢から、飲み物は果実水でいいでしょう。サンドイッチなら食べながらでもゲームができますからな。


 食後に菓子もたのみます。これも焼き菓子のような手でつまめるものがいいです。」


 キーンさんと9路盤囲碁を始めてみた。最初はもうみんな7子からだ。いきなり5子で勝てるやつなんかいない。囲碁の奥深さを味わってもらおう。


 9路盤で7子で負けたときのキーンさんは、瞳に炎が入ったようにみえたが、俺の気のせいではないだろう。


 商会の副会頭ともなれば、頭は切れきれのINTたっぷりのはずだ。間違いない。


 その天才的な頭脳の持ち主が40レベル差以上のハンデルールでゲームをして負けるとか想定もしてなかったはずだ。


 その後恐ろしいほどの集中力と理解をみせてはいるものの、囲碁は三千年の歴史のゲームだ。おもしろいものの、簡単に強くなれない。


 簡単にはなれないのさ、キーンさん。わかる。わかるよ。くやしいよね。くくく。

・・・あ、しまった。


「ふふふ。ヒロ君。まあ見ていたまえ。リバーシとて私にかかれば数時間で上達しました。なにせ3日あります。その自信をくつがえしてみせましょう。」


 うっかり考えていることが表情にでてしまった。しかし、いいのかね?


「これは失礼しました。しかし、キーンさん。本来の目的はよかったんですか?」


「え?本来の目的。・・・あ。おっといけません。少々脱線したようですな。


 いや、遊び方の決定やルールといったお話でしたが、ヒロ君の決めてあることで十分ですとも。ジーオーの遊び方もよいですが、キュウの認定も素晴らしい。


 特にリバーシにはまだないハンデなる調整ルールがすばらしい。もちろん追加報酬をお出ししますとも。(リバーシも前世ではハンデらしいものはあった)


 ですから、そのあたりはゲームをしながらお話を聞く程度で大丈夫ですよ。


 明日には注文の試作品が届く予定です。いや、これは仕事ですからな。


 大変ですが真摯に取り組まねば。しばらくお付き合い願いますぞ。」


 本音がだだもれだが、こちらに依存はない。しかし、提案はある。


「なるほど。やはり仕事は大事ですからね。キーンさんはすばらしい商人ですね。


 しかし、ちょっと提案があるのですが?」


「おお、なんでもおっしゃってください。あたらしいゲームの開発ですからな。意見は大事ですとも。」


「はい、まずこちらいるリリーは同じくジーオーができます。実力はまだキーンさんより彼女の方が高いでしょうが、今のキーンさんと近いと思います。


 ジーオーはハンデの戦いも面白いですが、実力が近い方が基本です。


 これを試さずして、ジーオーを遊んでいるとはいえませんね。」


「なんと。それではぜひ彼女とも対戦させていただきましょう。いや、仕事ですからな。ヒロ君はよくわかってますね。はっはっは。」


 お互い建前を述べているが、早い話が楽しく遊ぼうってことだ。

 越後屋と悪代官が笑いあっていたらこうだろうって感じで笑いあう。リリーは若干引いている。


 これでクエストが達成できるとか、いいのかね。


「は、はぃぃ・・・。」リリーは緊張しきりだが、横で見ているだけだったので、だいぶ落ち着いていたところで、流れ弾が当たった形だ。


 いや、大丈夫だって、そんなジト目でみるなよ。どうせゲームやってたら集中できるって。


 俺だってお菓子食べながら観戦したいとかじゃないって。


 あ、この菓子うまいな。さすが大商会。


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