第28話

「トムのおやっさん、いるか」


「ん?あー生意気な孤児院の初心者か。生きてて何よりだな。今日は何のようだ?」


「親父さんのとこでムチを頼めるってきいたんだ。俺達さがしてるんだよ。」


 注文するものらしいが、使ってるやつが少ないならしょうがないだろう。後は金だが。


「ムチだぁ?また珍しいもん使うな。おまえ、えーと、ヒロってのか。ヒロがつかうのか?」


「いや、俺じゃねえ。パーティ仲間のこっちのリリーが使ってるんだ。」


「何?そんな小さい女がムチ使えんのか?・・・へー、ほんとなのか。今もってるのはあるか。


 ちょっとこっちの裏の試し切りのスペースへきて使ってみてくれるか?」


 親父さんは半信半疑ながらも、使っているところをみないとアドバイスしようがないっていうので、実際にみてもらった。


「ダブルススパイクッ!」(パンッパンッ)


 そういえば命名はおれだ。技名があるとかっこいいしな。


「へーこりゃ驚いた。女の・・ああ、リリーだったか。おまえかなり器用だな。確かにムチは器用さが重要だが、見た感じそれだけじゃ説明できないくらい威力がでてる。


 しかもツタの自家製のはずなのに、妙に一体感があってまるでムチの植物だな。


 ・・・まあいい。冒険者の秘密には基本ふれねえよ。だが、そうだな?・・・お、そうだ。ちょっとまってろ。」


 トムの親父は奥へ入っていったかと思ったら、何かの植物でできているだろうムチを2本持ってきた。


「ムチなんざ当分使うやつがいなかったから忘れてたぜ。これなら2本で銀貨3枚でいいぜ。かなり攻撃力があがるうえに、多分リリーと相性いいんだろ。」


 さすが評判のいい武器屋の親父だ。植物がリリーと相性がいいとわかってる。


(ヒュン、ヒュン・・・)


「こ、これすごく手になじむ。・・・攻撃力もすごくなりそう。


 ト、トムさんありがとう。これがいいです。」


「そうか、うちも売れない在庫が減ってたすかるぜ。ああ、物は悪くねえぞ。ただほとんど在庫ってない武器だから次は期待すんなよ。」


 注文を覚悟してたけど、出来合いで丁度いいのが手に入ってよかった。出費はでかいがこれも必要経費だ。リリーの攻撃力が上がるってことは、命の安全も上がるからな。


 武器屋では試さなかったが、リリーに聞けばあとでムチを成長できる植物素材らしい。柳の仲間らしく、聞けばなんとなく納得の樹種だな。今より強くできるってことだし、植物魔法でメンテナンスがいらないのは大きい。


 俺?おれはナイフだけだな。当面は後衛みたいなもんだし後回しだろ。体術もあるし接近戦がダメってこともないからな。


 リリーの接近戦?混戦じゃなきゃ、黒を召喚して壁にできるからとりあえずは何とかなるのさ。


 ・・・・・


 やっぱり休日ってのはいいね。


 武器屋で買い物を終えたので、そのままリリーと定番の串肉の店へいく。


「お、今日はおじさんもどってるんだな。いつもの2本たのむぜ。」


 俺達のソウルフードになりつつある串肉。とにかく最初に食べたうまいもんがこれだ。リリーと二人お気に入りになった。タンパク質とかも足りてなくて必要だし丁度いい。一本といってもかなり量はあるんだ。


「ヒロとリリーちゃんか?おう、うちのはちょっと他所と違うからな。お前らはよくわかってるぜ。へへ。ほら、2本・・・ああ鉄銭2枚たしかに。ありがとよ。」


 いや、他ではまだ食っていないんだがな?ま、いいか。


「そういえばこの間奥さんが店番してただろ?会ったぜ俺達。・・・結婚するのに土下座ってほんとか?」


「当然だね。あんないい女だぞ。ぞっこんほれてたんだからしょうがねえだろ。子供にゃわからん。俺なんか幼馴染ってことぐらいしか嫁さんにきてもらえる理由がなかったんだ。土下座で結婚できるなら安いもんよ。


 それにいやなら土下座くらいで夫婦になんかなってくれねぇって。少しくらいは脈があったって事さ。そこはかみさんをたてときゃいいのさ。俺に不満はねえ」



 尻に敷かれてそうだがいっそ清々しいな。いろんな夫婦があるもんだ。


(・・・土下座。い、いけるのかしら?いいえリリー、見た目が悪すぎるわ。ヒロに引かれたら辛すぎるし、ないわね。)


 リリーがぶつぶついってるが、土下座求婚は思うところもあるだろう(笑)


 さて、果実水は決定としてもう一品はどうするかな?


「ヒロ。あ、あれなんかどうかな?」


「どれどれ。あーポトフっぽいスープだな。うまそうだしあれにするか?(コクコク)」


 入れ物は料金だった。ふむ、これもまた考えるか。


 俺達は今日は串肉、ポトフ、果実水をもって噴水広場の芝生へいく。


 食べながらで行儀は悪いんだが、平民でそんなことをいうやつはいない。


「おー随分強くなったな。もう3子じゃかてねえ。次2子だな。昇級おめでとうリリー。」


「あ、ありがと。し、昇級ってなに?」


「あー、ジーオーの腕前があがったってことだな。いま20級くらいだろ。


 数え方がレベルアップと違うんだ。そのくらいだと冒険者ならF級だぞ。」


 そういえば級位、アマ段位順番について簡単に説明した。プロ段位は省略だな。


「そ、そうなんだ。最初が多くて上達で数が減るんだね。ヒロはどれくらいの強さなの?」


 ちなみに1子置く前にハンデをつける方法がある。コミっていう計算上の調整だ。

 囲碁は通常先手が有利なので、コミハンデで何目かある。普通はこれで同級対等なんだが、これが無しになるのが1子分あるわけだ。


「俺か?そうだな。たぶん2級くらいだろ。」


「え、これだけ強くて2級なの?冒険者だとどれくらい?」


「うん?なんとなくでいいか?多分、D級くらいじゃないかな?Cあるかなぁ」


「ええー、そんなに強いのに。だ、ダンの人ってどれだけ強いの。


 ・・・あれ、このゲームこれから広まるんだよね?いるの?強い人。」


(それはそうだな。うーん、しかし事実はそうだんしな。うむ、ならば。)


「女神様に教えてもらったっていっただろ。たぶん神様の中にいるんだろ。人はこれからだな。ふむ。つまりこの世界で一番強いのは今のとこおれだな(笑)


 ・・・でも、2キュウなんだよなぁ。」


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