第24話

 さて、冒険者クエストの再開だ。当分レベルアップ重視になるのかね。


 って、思ってたのがフラグだったみたいだ。


 今までのように東の森の浅いところのやや深いところ。ややこしいが、ちょっと深いところだ。いつものように魔物討伐や薬草採取をしていた。


 魔力の回復を兼ねて薬草採取をしていた時だ。薬草採取だから静かに採取していると、遠くからどうも不穏な音が聞こえる。


(ガンッ、ガンッ)(く、まずい。何とかしないと。)


 誰かが戦っている音かね。うーん定番のフラグのような気はするが、流石にほっとくのは気が引けるし、あやうい声も聞こえる。


 俺達で何とかなるかどうかも見極めないとなぁ。


「リリー、どうも近くで危ない状況の奴がいるみたいだ。助けに行きたいが、助けられないとこちらがまずい。


 とりあえず近づいてみるぞ。声を抑えろよ。」


 リリーが頷くのを確認して、ゆっくりと音がする方へ近づいていく。


 ・・・・・


「サム。私を置いて逃げなさい。このままでは二人共やられます。だれかがこの書簡を父に届けなくてはいけないのよ。」


「へっ。お嬢のいうとおりでしょうが、はいそうですかって言えるわけないでしょうが!(ゴンッ)ちっ、くそっ。」


(おいおい、どうも身分が高そうなお姫様と護衛っぽい騎士が苦戦している。相手はベア系の魔物だ。名前は知らんが、絶対FとかGランクじゃないだろ。


 ・・・そうだな。普通に考えてCとかBはありそうだ。Bだと普通の騎士じゃ相手にならん。Cだとしても、あのお姫様っぽい女の人を守りながらだと、圧倒的に不利だ。このあたりに出る魔物じゃありえん。どうゆうわけだ?)


 不利ながら、むしろ良く善戦していると思うが、騎士一人だとこのままだと危ない。


 さて、どうするかな。


 物事ってのは、よく考えて正解をだすのが一番いいか?といえば、実はそうでもないと思っている。


 相変わらず変な事を言ってると思うが、拙速て言葉があるように、素早い対応もいい手なんだ。当然深慮なんかやってる暇はない。


 少し様子をみて、騎士が優秀だと判断した俺は、騎士の視界に入るように遠目からのぞいて、相手の目を見る。


(一瞬おどろいた表情をしたが、こちらが初心者冒険者だと見て取ったようで、小さく首を振る。・・・さすがだな。見立て通りだ。


 おれは通じるかどうか、変わった動作をしてみせる。なに、こちらに手段があると伝わればいいのさ。)


 指を一本たてて、片目をつぶる。そして騎士の目を見る。・・・。・・・。


(騎士は何だ?といった表情をしたあと、何か手段があると伝わったようで小さく頷く。へっ優秀な騎士は違うね。さて、おれは指を3本たてて、次に2本にする。少しゆっくりだ


 ・・・騎士は何かのタイミングだとわかったようだ。


 指を1本にする。さて、行くぞ。)


 黒(ノワール)(コウ)


 ベア(何ベアかしらん?)の前にノワール3匹が現れ(コウ)をかける。


 単騎相手ならフリーズ効果だ。(ピタッ)


 流石に倒れはしないが、ベア系魔物がフリーズする。


(スラッシュ)(ザシュッ)・・・(ドサッ)


 フリーズ効果が効いた瞬間、大技っぽい剣技がベアの首を切り裂く。


「ふー。助かったぜ。お嬢大丈夫か?さてと。・・・(チラッ)」


 あの騎士気配りができるな。こちらとしても助かる。さすがは貴族の護衛っぽい騎士だ。


(相手の目を見ながら小さく首を振り、相手が確認したところで森に隠れる。多分これでこちらが接触したくないと気が付いてもらえる。


 俺達はG級冒険者だ。小さな幸運ならいいが、大きな幸運にはまだ早い。小さな嫉妬や妬みでつぶれてしまうかもしれない底辺の存在だ。


 といって、貴族に囲われていいかどうかも判断できない。今は距離を取りたい。)


「サム。大丈夫ですか?あぁ、こんなに血がでて。いまポーションで治しますのでじっとしていてください。」


「あーお嬢。自分でやれますから大丈夫ですよ。しかし助かりましたね。これで依頼の事も、お嬢の命も助かってやれやれですな。あっはっはっ…痛っ。」


「サム!まだポーションを使ってないのでじっとしていなさい。・・・。はい、これでしばらくは大丈夫でしょう。外傷にはふりかけましたが、こちらのポーションは飲んでおいてね。はぁ、二人共助かってよかったです。


 あれ、そういえばさっき妙な動きがありましたね。あ、いえ、あの魔物の事です。


 側に黒い影が見えたような気がしましたが今はいませんし?あれ?」


「あーお嬢。・・・そうですなぁ、あれは何だったんでしょうね。そうだ、もしかしたら女神様の御助けかもですね。まぁ、たまたま間が悪かっただけだとは思いますが。


 影?うーん自分は気が付かなかったですし、いたとしても影がワイルドベアになにかできるとは思えませんがねえ。C級魔物の上に逆上してましたからね。」


「そうね。そうなんだけどね。うーん。ま、いいわ。とにかく傷が治ったら街道にもどりましょ。散り散りになった他の護衛も街道に戻るでしょ。


 今頃心配してるでしょうし、無理でない範囲でいいから急ぎましょう。」


(やれやれ、なんとかごまかせたかな。・・・しかし、間違いなく遠目に見えたあの初心者ぽい冒険者のスキル?だろうな。助けられたぜ。


 しかも見える範囲の動作だけで、こちらの状況や人物を看破して、連携の提案をして成功させるって、どんだけだ。どうみても初心者風の見た目だぜ。


 さらに、自分の状況が弱い事と、貴族に絡むことの難しさを想定してやがった。


 ちっ。とんでもねえな。


 命の恩人じゃなきゃ強引にスカウトしたのに。・・・。ま、しょうがないか。助かっただけでも儲けものだ。お嬢が無事だった恩は忘れないぜ。変な初心者冒険者よ。


 ・・・イーストの街の冒険者は間違いないだろ。この恩はきっと返すぜ。)













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