第12話

 さて、今日からは少し奥へ行こうと思う。


 俺達の装備をみて、シスターも納得してくれた。むしろちょっと驚いていた。


 流石に三日でポーションや中古とはいえナイフや防具を揃え始めるとは思っていなかったようだ。


 まだリリーには危ないと思いながらも、俺達の成長が早いのでしばらく見守る感じだな。


 ハリーはまだ火傷治療中らしく、お留守番らしい。さすがにポーションを渡すわけにはいかない。生死がかかっているならともかく、人のケガを直すのに渡す余裕はない。


「リリー、今日はもう少し奥へいくぞ。


 今日は薬草採取もいいが、少し魔物討伐を手伝ってくれ。どのみち戦闘に参加しないと強くなれないしな。」


 リリーはやはり怖いのだろう、不安な様子で聞いてくる。


「わ、私は魔物を攻撃するスキルじゃないから、な、何をしたらいいのか、わ、わからないんだけど。」


 今のところリリーができそうなのは、近くの植物をすこし操って猫だましするだけだ。


 確かにこれでは攻撃ができない。


 といって、この先何もできないなら冒険者は無理だろう。ポーションの代わりでもできる僧侶系ではないし、ラノベのエルフのように植物魔法による攻撃手段がほしい。


 いや、タンクでもいいんだが、今のままじゃ遠い未来だな。


 ・・・。いや、逆転の発想だな。レベルが上がらないから植物魔法は冒険者にいないんだ。


 なら、冒険者で通用するかどうかはレベルを上げてから判断するしかない。

 ここはレベリングだな。


 しかし危ないのは何とかしないといけないので、そこは考えるか?


「リリー今もツタで作ったロープはもってるな?


 よし、武器の中にはムチってのがある。無知じゃねえよ。そんなつっこみはいらん。


 ムチって武器だ。ちょっと貸してみろ。」


 おれは3メートル位に加工したツタのロープの端に小枝を添えて括り付けるように指示して、簡易的な植物のムチをつくらせた。


 ・・・器用が低いんだよ。悪かったな。リリーは器用がどうも高いんだ。


 できたムチでちょっと先の木へ振り出して手首を返してスナップを利かせる。


 先端はツタのままだが少し丈夫にしてある。先端がパチン!と樹木をたたく。


「な?これでも十分な武器だ。リリーはまだ接近戦は無理だろうから、中距離からのこれなら試せるだろ。


 あとやれるかどうかだが、ツタなら植物魔法で操作の補助ができるかもしれん。


 コツは先端で丁度スナップを利かせた波?が届くタイミングで目標に当てないといけないから、腕力よりそっちのが重要だ。


 何?大丈夫だよ。最初からうまくできないからって見捨てやしないって。


 これがうまくいかなくてもしばらくレベル上がるまでは付き合うから泣きそうな顔するなって。」


 リリーはどうも放り出される未来を想像したみたいで、泣きそうになっている。


 今までいろいろ役に立ってるんだから、そんなことする訳はないんだが、今までのように役に立つ部分が見えないと怖いんだろうな。


 遠い未来はたしかにしょうがないかもな。冒険者は死んでしまうかもしれないから無理強いはできない。


「そうだな。無理かどうか判断するのに1年くらいは付き合うぞ?え、2年にしろ?いや、いいけど目安の問題なんだがな。


 ま、レベルが上がったら弓とかでもつかえるかもだし、そんなに落ち込むなって。」


 どうもリリーの気持ちの事を軽く考えていたみたいだ。確かに冒険者向きではない(といわれてる)スキルなら、冒険者としてやっていけるか不安でしょうがなかっただろう。


 やれやれ、前世合わせると多分オジサンだってのに、気配りが足りなかったな。


 とにかくこの世界では魔物を倒したやつに経験値が入る。


 僧侶系は治療したり補助した分で経験値が入るらしい。


 わずかでも攻撃に参加させないとレベリングできないからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る