第13話
ヒロは随分変わった子だ。孤児院の中でも特別変わっているのだが、乱暴でも積極的でもなかったので、大したことがないやつだと下に見られがちだった。
リリーは早くに両親を流行り病で失くしてしまい、悲しんでいる暇もなく身寄りのない状況で途方に暮れた。
結局近所の人が孤児院へ連れてきてくれてから、雑用をしながら今までなんとか生活してきた。
孤児院はどうしても男の子が乱暴で、女の子でも気が強い子とかもいて、リリーのように気が弱い子はびくびくしながらの生活だった。
おまけに孤児院は貧乏で、食べるものが朝晩の少しだけだ。
衣服もびっくりするくらいぼろぼろだ。
今までの生活がどれほどありがたかったか。両親にどれほど大切にされていたのか。
リリーは思い知らされた。
それでも、なんとかペースをつかんで生活できるようになった時、変わった男の子がいる事に気が付いた。
その子はヒロと呼ばれていて、どうも他の男の子と違う。
威張ってわがままをいうでもなく、掃除や手伝いはちゃんとする。いや、だれよりも上手にやっているようにみえるが、気が付いていない子もいるようだ。
だれかが喧嘩をしていたら、よく上手に仲裁にはいったり、手伝いを失敗して泣いている子がいたら、大丈夫といいながら手伝っていたり、表立っては存在感をだしていないが、立場の弱い子からすると、とても頼れる防波堤のような子供だ。
気が付くとヒロのとくしゅといわれている(シスターと神父が話をしていた)部分かどうかわからないが、特別に変わっているのがわかる。
ヒロは泣かない。ヒロは失敗して焦ることがない。(失敗はしているが・・・。)
でも、そんなことより弱い立場の子にとって、とても頼もしいのだ。
お父さんお母さんがいない事に改めて気が付いて、夜中に泣いていたことがあった。
・・・知らないうちに側にきていたヒロが、何故か脚をポンポンとリズムよくたたく。
気が付かれていたんだと思って、泣かないように頑張ったけど中々涙がとまらなかった。でも泣き止むように叩いていたんじゃなくて。
「ねーむれー♪ねーむれーははーのーむーねーにーー♪」
聞いたこともない、下手な子守唄を歌っていた。小さい声だからわからなかったけど、それに気が付いたらおかしくなって、知らないうちに泣き止んでいた。
「なんで足をポンポンするの?」
関係ない話だけど気になったので聞いてみたら、
「子供ならお腹をポンポンするのが好きなんだけど、女の子のお腹をポンポンはさすがにエッチかなーと思ってな?
で、頭か脚を思いついたんだが、とりあえず脚が近かったのでやってみた。」
・・・。ヒロはとくしゅ。シスターがいってたのはこうゆうところだろうか?同じ子供とは思えない変な子。むしろ変なお父さん?みたい。
でもシスター達がいっていた雰囲気でもわかるけど、悪い子じゃない。
そう、悪い気がしない。ううん?ちょっと安心する。
ヒロの側は安心する。
・・・・・
スキルの授与は植物魔法スキルだった。うちの家は農家だったから、そうゆう関係でもらいやすかったんだろうといわれた。なるほど。
ちょっとヒロの事が気になる。頑張ってスキルの事を聞いてみた。
???聞いたこともないレアスキルだった。やっぱりヒロはとくしゅだ。
シスターに聞いてみたら農家の就職はいいところがないといわれた。
植物スキルは農家にはたくさんいるらしい。それで他にやりたいことを探してみなさいといわれた。
困った。
ヒロはどうするんだろう?やっぱりヒロに相談してみようと思った。
・・・・・
二人で冒険者をはじめてみた。冒険者ギルドは怖い人がいっぱいいたし、魔物の森に入るのでさえ怖い。
でも、ヒロは相変わらずのマイペースだ。ヒロに怖いものってあるのかしら?
そのおかげで、なんとか冒険者として経験を積み始めた。
植物魔法でいろいろな道具をつくった。背負子1号?1号ってなんで?
あいかわらず端々に変なところがあるけど、あっというまに冒険者として最低限のクエストを受け始めた。
後で聞いたらハリーはスライムの攻撃をよけきれずに火傷をしたと聞いた。
ほんとなら私もそうなっていたんだろうと思う。でも、ヒロがいるとそうはならない。
ヒロから攻撃に参加するように言われた。
魔物に攻撃は怖い。とても自分にできるとは思えない。
そして何より、それで冒険者をあきらめないといけないと思ったことで怖くなった。
そっか。ヒロと離れるのが怖いんだ。どうしようもなく悲しくなった。
そんな私にやっと気がついた。
「な?これでも十分な武器だ。リリーはまだ接近戦は無理だろうから、中距離からのこれなら試せるだろ。
あとやれるかどうかだが、ツタなら植物魔法で操作の補助ができるかもしれん。
コツは先端で丁度スナップを利かせた波?が届くタイミングで目標に当てないといけないから、腕力よりそっちのが重要だ。
何?大丈夫だよ。最初からうまくできないからって見捨てやしないって。
これがうまくいかなくてもしばらくレベル上がるまでは付き合うから泣きそうな顔するなって。」
やっぱりヒロは見捨てない。でも、冒険者の道が私には危ないと思ったらとめられそうだとは分かった。
先ずはこのムチを練習してみよう。こんどは泣くのはあとでいい。
ヒロが大丈夫だといってるんだ。これがだめでも道はあるっていってるんだ。
変な子だけど、ヒロは間違えない。
なら、頑張ればきっとなんとかなる。
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