第2話

 孤児院は教会に併設されている。どこの世界でもそんなものらしい。


 孤児院の常として、貧乏である。世間が裕福であればそもそも孤児はそんなに増えないだろう。


 その底辺の受け皿が孤児院だろう。


 貧乏なので、働ける奴は働かないといけない。


 小さい子は教会の掃除や、もっと小さい子の世話。


 少し大きくなると、簡単な読み書きの勉強と、シスターのお手伝い。


 12歳になると晴れて独立となる。


 では、10歳といえばスキル受領の儀式による大幅な労働力?のアップにより、世間の仕事の見習いへと進む。


 ここからは孤児院での寝泊まりはできるが、お金を稼いでくることを求められる。

 もちろん独立してもかまわないが、普通に厳しいだろう。

 研修期間ってもんだな。


 スキルの種類が戦闘型である場合、教会の仲間で冒険者になるものが多い。


 スキルの種類が生産型である場合、農家や職人の弟子入りができないか探していく。


 どちらの場合も孤児院からでは厳しい現実がある。


 武器・防具、工具・知識にどうしても差がつくことが多く、また伝手が弱い孤児院だと条件が悪い就職先になってしまうようだ。


「ヒロ。スキルはもらえたの?わ、私も教えるから教えあいこしようよ。」


 仲のよい、赤い髪の女の子のリリーがスキル取得の礼拝堂から出てきたところで声をかけてきた。もじもじとしながらも、ヒロの事をたよりにしている感じがする。

 少し気が弱いリリーだが、気の優しいヒロが気になっている。


 また、ヒロはどうも大人びており、他の男の子のようにからかってきたり、いたずらしたりしないのもいい。


「おう、いいぞ。といっても俺のはまだよくわかっていないんだけどな。」


「わからない?そんな事ってあるの?・・・もしかしてレアスキル!」


「レアスキルといえば、そうかもしれんが・・・orz」


「な、なんでそこで落ち込むの?」


 なんでといわれて、ここまでマイナーで不可思議なスキルがあるだろうか?


 まだ将棋スキルとかいったほうが、攻撃スキルとして使えそうでわかる。


 囲碁ってなんだよ。どうすんだよ。もう笑うしかないよ。あはは。


「ヒロ、床に倒れ込んで、ぶ、不気味な笑いはやめて。」


「・・・。ま、それもそうだな。よし、リリーが言い出しっぺだからリリーからだな。」


「う、うん。えーとね。えーと、私のスキルはね。えーと、植物魔法だったんだけど。どうしたらいいのかなって、実は相談もしたいの。」


 おお、魔法スキルなら普通にあたりだろう。本人はよくわかっていないみたいだが。


「なにができるかによるが、普通にあたりだと思うぞ。そうだなー、例えば農家で野菜育てるとか、はちみつを取る農家で花畑育てるとか、いけるかもな。


 リリーはそうゆうの好きそうだからいいんじゃないか。」


「そ、そっか。農家いいね。でも、就職先ってあるかな。」


 そこなんだよな。孤児院からだと、少々スキルが良くても、どうもこき使われるのに給料が少なかったり、出世できなかったりするらしいんだよな。


 ま、農家や職人にも家族や親戚がいたら優先するだろうし、孤児院出身は貧乏だからなにかと最初は金がかかるしな。見た目も汚くはみえるだろ。


「それだよな。まずはスキルで何ができるか調べてみなよ。あとはシスターや神父に相談しかないかな。」


「うーん。わかった。まずはスキルを調べるんだね。そ、それでヒロはどうだったの?」


「おれか?いまのところさっぱりわからん。IGOってスキルだな。」


「あい・じー・おー?」


 正直に囲碁っていって、説明なんかしようがない。これは読みで通すしかないな。そもそもローマ字読みを説明できない。


「そうだ。IGO。とにかく調べないとわからんが、英雄や王様にはなれそうにないな。せめて役に立つところがあればいいがなぁ。」


 そこで近くにいた男の子のハリーが口をだす。


「ヒロおまえハズレスキルじゃないのか、それ?おまえは変わってるから、変わったスキルになったんだろ。


 俺なんか、剣術スキルをもらったぜ。これからは冒険者で強くなって稼いでやるぜ。


 きっとうまいもん毎日食える生活がまってるんだ。へん、悔しいだろ。」


 ハリーは言いたい事いって、さっさと他の子のところへいった。


 あいつ自慢したくて、あちこち言いふらしてるんじゃないのか?


「そ、そんな事ないからね。ヒロはちょっとなだけだよ。」


 リリー、おまえそれ意味わかっていってないだろ。


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