第10話:現実を繋ぐ鍵
翔平は、全てのキーコードを手に入れ、アンノウン・コードの中心部へと足を踏み入れた。
そこは何もない虚無の空間だった。
上下も左右も分からないほどの無限の白。
その中にただ一つ、巨大なコンソールのような光の装置が浮かんでいた。
「これが…アンノウン・コードの中枢か」
翔平が一歩踏み出すと、空間に波紋のような揺れが走った。
その中央で、再びシグマの声が響いた。
「翔平、ここで全てのキーコードを統合し、アンノウン・コードの修正を完了させるのだ」
翔平は頷き、ブレスレットに集中する。
キーコードの力が彼の腕を通じて放たれ、コンソールに向かって輝くラインとなって流れ込む。
その瞬間、空間全体が激しく震え、アンノウン・コードの修正が始まった。
だが、その時、異常な音が響き渡った。
どこからともなく黒い霧が現れ、それが人型を成していく。
翔平が驚いて目を見開くと、そこに現れたのは父・天城慎司の姿だった。
「父さん…まだ消えてなかったのか」
慎司は静かに笑い、翔平に近づいた。
「私は消えるわけにはいかない。このプログラムは私そのものだ。
そして、お前が修正を終えることは、このプログラムに宿る可能性を永遠に失うことを意味する」
「何度も言っただろう。俺は現実を守る。それが正しいと思っている!」
翔平は剣を構えたが、慎司は冷静な声で言葉を続けた。
「翔平、本当にそれが正しいのか? このプログラムには、現実を超えた可能性が眠っている。
お前がそれを否定すれば、人類が新たな未来を手にするチャンスを失うことになる」
翔平の心が揺れた。
慎司の言葉は真実であり、アンノウン・コードが持つ力は確かに未知の可能性を秘めている。
だが、それを手にするために現実を犠牲にすることは、翔平にはどうしても受け入れられなかった。
「可能性なんて言葉で、今の現実を捨てることはできない!
俺は、今ここにいる人たちの世界を守りたいんだ!」
翔平は叫び、剣を振りかざして父に向かって突進した。
慎司は黒い霧と融合しながら、巨大な形態へと変化していった。
それはまるで現実とプログラムの境界そのものを象徴するような存在だった。
翔平は剣を握りしめ、全力でその存在に立ち向かった。
「来い…これで終わらせてやる!」
翔平の剣は光を増し、周囲の空間を照らす。
守護者となった慎司の攻撃は熾烈を極めたが、翔平は一歩も引かずに応戦した。
「父さん、俺は負けない!」
翔平が最後の一撃を振り下ろした瞬間、剣が慎司の中心を貫いた。
巨大な存在が崩れ落ち、霧となって消えていく中、慎司の姿が再び現れた。
「………翔平…お前が選んだ未来を信じるよ……」
慎司はそう言うと、静かに微笑みながら消えていった。
翔平は胸に込み上げる感情を押し殺し、最後の修正を完了させるためにコンソールに向き直った。
キーコードが全て統合され、アンノウン・コードが静かに収束していく。
その瞬間、空間全体が輝き、翔平の周囲が現実世界の風景へと変わっていった。
空にはもう異常な模様はなく、街は穏やかな姿を取り戻していた。
「終わったのか…?」
翔平は息をつき、空を見上げた。
シグマの声が最後に響いた。
「アンノウン・コードは修正された。この世界は安定を取り戻すだろう。
だが、お前が守った現実の未来は、これからの人々に委ねられる」
「それでいいんだ。それが、俺たちが生きる世界だから」
翔平は微かに笑みを浮かべた。
彼の中には父との戦いで得た決意が、確かな形で残っていた。
こうして、天城翔平の戦いは幕を閉じた。
だが、彼が守った現実の中で、新たな未来がどのように進んでいくかは、これからの人々の手に委ねられている――。
(完)
プログラマー翔平と目覚める異次元のプログラム 魔石収集家 @kaku-kaku7
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