第9話:父との決別
深層領域の中心に立つ天城翔平は、目の前に広がる異形の守護者に立ち向かおうとしていた。
それは光と闇が渦巻き、形を持たない不定形の存在だった。
だが、その圧倒的な存在感は、翔平の体を動かすのを躊躇わせるほどの威圧感を放っていた。
「これが…最後の守護者か」
翔平は自らを奮い立たせるようにブレスレットを握りしめた。
その瞬間、ブレスレットが強く脈動し、青白い光が剣となって現れる。
「俺は…ここで止まるわけにはいかない!」
翔平が叫ぶと同時に、守護者が動き始めた。
その動きは滑らかで、まるで空間そのものが彼に反応しているかのようだった。
守護者の一部が鋭い光の刃となり、翔平に向かって迫ってくる。
「くそっ!」
翔平は剣で防御するが、その衝撃は想像を超えており、彼の身体は後方へ弾き飛ばされた。
「翔平、恐れるな。この守護者はお前の心の迷いを映し出している。
迷えば迷うほど、奴は強大になる」
シグマの声が響く。
だが、翔平は守護者の攻撃をかわすだけで精一杯だった。
「迷い…? 俺の心がこれを作り出しているっていうのか?」
守護者の攻撃が続く中、翔平は父との会話を思い出していた。
父が語った「現実を超えた可能性」という言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
「そんなの…俺には分からない」
翔平の心が揺れるたび、守護者はさらに大きく、強大になっていく。
その姿に、翔平の手は震え始めた。
その時、ふと守護者の中に父・慎司の顔が浮かび上がった。
それは笑みを浮かべながらも、どこか哀しげな表情だった。
「翔平、お前はまだ分かっていない。
現実という枠組みを超えた先にこそ、本当の自由がある。
私の夢を否定するのか?」
その言葉に、翔平は剣を握る手をさらに強く握りしめた。
「父さんの夢が間違っていたなんて、俺には言えない。
でも、俺は現実を諦めるつもりはないんだ!」
翔平はブレスレットに力を込め、守護者に向かって突進した。
剣が守護者の一部を切り裂くと、そこから光が溢れ出した。
「やったのか…?」
翔平が立ち止まった瞬間、守護者の形が崩れ始めた。
だが、同時に空間そのものが震え始め、周囲の景色が歪みだした。
「翔平、守護者を倒したことで空間が不安定になっている。
早くキーコードを取り出せ」
シグマの声に促され、翔平は守護者が崩れた跡に浮かぶ光の球体に近づいた。
それは他のキーコードよりも大きく、強い輝きを放っていた。
「これが…最後のキーコード…」
翔平が手を伸ばした瞬間、再び父の声が響いた。
「翔平、これを手にすればお前は現実世界を守るだろう。
だが、それと同時に、このプログラムに宿る可能性も失われる」
「そんなの関係ない! 俺は…俺は俺の世界を守る!」
翔平の叫びと共に、キーコードがブレスレットに吸収された。
その瞬間、空間が一瞬の静寂に包まれ、全てが光に飲み込まれた。
次に翔平が目を開けた時、彼は元のプログラム世界に立っていた。
だが、その空間は以前とは異なり、安定した構造を持つように見えた。
「これで…終わったのか?」
「まだだ。残るキーコードを統合し、最終修正を行わなければならない」
シグマの言葉に、翔平は深く息を吐いた。
「俺がやる。絶対に、この世界を救ってみせる」
翔平は決意を新たにし、最後の試練へと足を進めた。
そこには、現実世界を守るための最終決戦が待っている――。
次の更新予定
2024年11月20日 07:00
プログラマー翔平と目覚める異次元のプログラム 魔石収集家 @kaku-kaku7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。 プログラマー翔平と目覚める異次元のプログラム の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。