第7話:仲間の犠牲
翔平は、ナタリアとの対峙の後、中央管理区画への道を再び進み始めた。
シグマの指示で彼が向かう先は、「データの交差点」と呼ばれる場所だった。
そこはプログラム世界の中で特に混沌としたエリアであり、次のキーコードが隠されている可能性が高いとされていた。
「ここがデータの交差点か…」
翔平の目の前には、幾重にも重なったデータのラインが交差し、絶えず動き続ける光の迷路が広がっていた。
地面も空もなく、すべてが宙に浮かぶ無重力の空間で構成されている。
その光景に、翔平は思わず息を呑んだ。
「これは、どうやって進めばいいんだ」
「お前のブレスレットに刻まれたキーコードが、この空間を進むための道筋を示してくれるはずだ」
シグマの言葉に、翔平はブレスレットを見つめた。
すると、青白い光が脈動し、目の前のデータラインに一筋の道が浮かび上がった。
「これが道標か。行くしかないな」
翔平は覚悟を決め、その道筋をたどり始めた。
だが、その背後に新たな影が忍び寄っていることに、まだ気づいていなかった。
道を進むにつれ、データのラインが徐々に不安定になり始めた。
足元が突然消えかけることもあり、翔平は何度もバランスを崩しそうになる。
「気をつけろ。空間の安定性が低下している。
これは、他の勢力が干渉している可能性が高い」
シグマの警告が響いた直後、遠くから爆発音が聞こえた。
翔平が振り返ると、データのラインが次々と崩壊し、追いかけるようにして闇が広がっていた。
「何だ、あれは…」
その闇の中から現れたのは、アセンブラーの一団だった。
彼らは黒い装備を身につけ、データ化された武器を手にしている。
その中心に立つのは、ナタリアではなく、新たな敵のリーダーと思しき男だった。
「天城翔平、ここでお前の旅を終わらせてもらう」
男の冷たい声が響き渡る。
翔平は剣を構え、身構えた。
「またアセンブラーかよ。いい加減にしてくれ!」
だが、敵の数は多く、彼一人で全てを相手にするのは困難だった。
アセンブラーの兵士たちは次々とデータ化された弾丸を放ち、翔平を追い詰めていく。
「くそっ、このままじゃ…」
その時、シグマが鋭い声で言った。
「防御に徹するな。進め。お前が止まれば、キーコードを手に入れるチャンスはなくなる」
「だけど、この数を突破するなんて無理だ!」
翔平の声が焦りに満ちる中、遠くから別の声が聞こえた。
「翔平、下がってろ!」
その声と共に現れたのは、横浜エリアで出会ったアーサーだった。
彼は手にした武器で敵の攻撃を弾き返しながら、翔平の横に立った。
「アーサー! なんでここに…」
「お前を助けに来たに決まってるだろう」
アーサーは微笑みながら言った。
だが、その目には決意の色が強く宿っていた。
二人でアセンブラーの兵士たちに立ち向かったものの、その数の多さは圧倒的だった。
翔平は次々と攻撃を繰り出すが、敵の攻撃を全て防ぎきることはできず、次第に追い詰められていった。
「翔平、聞け。俺が奴らを引きつける間に、次のキーコードを手に入れるんだ」
「何を言ってるんだ! そんなの無茶だ!」
「無茶でもやらなきゃ、俺たちには未来がない」
アーサーはそう言い残し、一人で敵の大群の中に飛び込んだ。
彼の姿が敵の攻撃に飲み込まれていくのを見ながら、翔平は叫んだ。
「アーサー! 戻ってこい!」
だが、その声は届かず、アーサーの姿は徐々に見えなくなった。
翔平は必死に涙をこらえながら、ブレスレットが示す道筋を追った。
その先に浮かんでいたのは、輝くキーコードの球体だった。
彼は手を伸ばし、それをブレスレットに吸収させた。
「これで…これでいいんだよな」
胸の中に空虚感を抱えながらも、翔平は再び進む決意を固めた。
アーサーの犠牲を無駄にしないためにも、彼は歩みを止めるわけにはいかなかった。
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