第6話:敵対する勢力
天城翔平は、横浜エリアでの戦いを終えた直後、アーサーの案内で新たなエリアに向かっていた。
次のキーコードの場所は「中央管理区画」と呼ばれる、アンノウン・コードの中心に近い領域だという。
道中、シグマは翔平に警告するように話しかけた。
「お前はまだ知らないことが多い。特に、アンノウン・コードの修正を巡って他の勢力が動いていることを理解しておけ」
翔平は歩みを止め、シグマを見つめた。
「他の勢力って、どういうことだ」
「このプログラムを完全に制御しようとしている者たちがいる。
彼らは『アセンブラー』と呼ばれる集団で、アンノウン・コードの力を利用して新しい世界を創造しようとしている」
「新しい世界…?」
翔平はその言葉に眉をひそめた。
「そうだ。彼らは現実世界を完全にデータ化しようとしている」
「そんなことが許されるわけがない」
翔平は拳を握りしめ、進むべき道を見据えた。
やがて彼らがたどり着いたのは、中央管理区画に繋がる巨大なデータ橋だった。
その橋は虹色に輝きながら空間に浮かび、どこまでも続いているように見えた。
だが、進もうとしたその時、前方に人影が現れた。
「やはり来たか。天城翔平」
鋭い声と共に現れたのは、黒いローブをまとった女性だった。
その冷たい眼差しには、明らかな敵意が宿っている。
「あなたがアセンブラーの一員か?」
翔平が問いかけると、女性は薄く笑みを浮かべて応えた。
「私はナタリア。アセンブラーの指導者の一人よ」
翔平は彼女の名に聞き覚えがあった。
ナタリアは天才的なプログラマーとして知られ、翔平がアンノウン・コードの開発に関わっていた頃、彼女もまたプロジェクトの一部に関与していたという噂があった。
「ナタリア…お前が何を企んでいるのか知らないが、このキーコードを渡すつもりはない」
「渡せ? 勘違いしないで。私は奪いに来たの」
ナタリアが指を鳴らすと、彼女の背後から無数のバグモンスターが出現した。
それらはこれまでのものよりも精巧に作られており、明らかに高い戦闘能力を備えている。
「シグマ、どうする? 数が多すぎる」
翔平は剣を構えながらシグマに尋ねた。
シグマは冷静な声で応じる。
「お前のブレスレットには既に二つのキーコードが組み込まれている。
その力を連動させれば、この数の敵にも対処できるはずだ」
「やるしかないってことか」
翔平は深呼吸し、意識を集中させた。
ブレスレットが青白い光を放ち始め、彼の手元に再び剣が形成された。
「面白い。では、その力を見せてもらおうか」
ナタリアが冷笑する中、バグモンスターたちが一斉に翔平に襲いかかってきた。
翔平は次々とモンスターを斬り倒していったが、その動きは次第に速く、攻撃も苛烈になっていった。
剣だけでは対処しきれない状況に追い込まれた時、ブレスレットが再び反応を示した。
「これが…新しい力か?」
翔平の手元に今度は盾のようなエネルギーが現れた。
その盾は敵の攻撃を弾き返し、瞬時にモンスターの隊列を崩壊させた。
「さすがね。その力、私たちの計画にも必要だわ」
ナタリアが興味深げに呟いた。
「計画だと? お前たちは何が目的なんだ」
翔平が問い詰めると、ナタリアは静かに答えた。
「新しい秩序を創ることよ。この腐った現実を捨て、人々が真に自由になれる世界を築くの。
アンノウン・コードはその鍵。あなたはその可能性を理解していないだけ」
「俺たちには現実が必要だ。そんな作られた世界で生きるつもりはない」
翔平は剣を構え直し、ナタリアに向き合った。
その時、空間全体が震え、橋のデータが崩れ始めた。
ナタリアは微笑みながら後退し、言い残した。
「次に会う時を楽しみにしているわ。その時までに、自分が何を守りたいのかよく考えることね」
彼女が姿を消すと、残ったバグモンスターも全て霧散した。
翔平は荒い息をつきながら剣を下ろした。
「これが…アセンブラーのやり方か」
「奴らは止めなければならない。お前の持つ力だけがこの崩壊を防ぐ鍵だ」
シグマの言葉に、翔平は拳を握り締めた。
ナタリアの言葉が胸に重く残りながらも、彼は前に進むしかなかった。
次のキーコードを探す旅は、さらに過酷なものになるだろう。
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