第4話:プログラムの守護者

天城翔平とシグマは次のキーコードを探すため、プログラム世界の奥深くへと進んでいた。

歪んだ街並みを抜け、彼らがたどり着いたのは、無限に続くかのような階段が広がる空間だった。

階段の表面にはコードが走り、データの断片がチカチカと光を放ちながら宙を漂っている。


「これが次のキーコードへの道か?」


翔平は眉をひそめながら尋ねた。

シグマは静かに頷く。


「この階段の先に次のキーコードがある。だが、ここにはこの空間を守るプログラムの守護者がいるはずだ」


「守護者…またバグモンスターみたいなやつか?」


「いや、それよりも高度で、強力だ」


シグマの冷静な言葉に、翔平は無意識にブレスレットを握りしめた。

先ほど手に入れたキーコードがブレスレットに吸収されたことで、自分の中に新たな力が宿っているのを感じてはいた。

しかし、それを使いこなせる自信はまだない。


「上に進むしかないんだろうな」


翔平は不安を飲み込み、階段を登り始めた。


階段を上がるたびに、周囲の景色が変わっていく。

最初は数列や記号が踊る空間だったが、次第にそれが美しい幾何学模様のように統一され、やがて青い光が空間全体を照らし始めた。

翔平はその光景に一瞬見惚れたが、同時に異様な静けさに気づいた。


「シグマ…ここ、何かおかしくないか?」


「間違いない。守護者が近い」


その瞬間、階段の上から重低音のような音が響き渡り、空間が震えた。

翔平が顔を上げると、そこには巨大な存在が立ちはだかっていた。


その存在は人型ではあるが、その姿は完全にデータで構築されていた。

身体全体が青い光の線で縁取られ、まるで高精度のホログラムのように輝いている。

目は鋭く光り、その動きは機械のように正確だった。


「これが守護者か」


翔平は喉が渇くのを感じながらつぶやいた。

守護者はゆっくりと翔平を見下ろし、冷たい声を発した。


「不正アクセスを確認。アクセス者を排除する」


その言葉とともに、守護者の手から光の刃が形成され、一気に翔平に向かって振り下ろされた。


「くそっ!」


翔平はとっさに身をかわし、階段を転げ落ちそうになりながら体勢を立て直した。


「どうする、シグマ! あんなのに勝てるのか?」


「お前のブレスレットがあれば可能だ。新たに手に入れたキーコードの力を引き出せ」


「そんなこと言われても…!」


翔平は歯を食いしばりながら、ブレスレットに集中する。

すると、再び青白い光が放たれ、彼の手に光で構成された剣が現れた。


「これでやるしかないってわけか」


翔平は剣を構え、守護者に向かって突進した。

守護者は無数の光の刃を放ちながら翔平を迎え撃つ。

その攻撃の精度とスピードは尋常ではなく、翔平は何度も避けきれずにかすり傷を負った。


「くそっ…!」


翔平は必死に攻撃を繰り返すが、守護者の防御は堅く、その身体に剣を通すことができない。


「どうすれば…」


翔平が動揺していると、シグマの声が冷たく響いた。


「迷うな。守護者はお前の心の弱さを見抜いている。

キーコードの力を完全に解放するには、お前自身がその力を受け入れる必要がある」


「受け入れる…?」


翔平はその言葉を反芻した。

今まで自分は、この力が怖かった。

未知の力に翻弄される自分自身が、何よりも信じられなかったのだ。


だが、目の前にある危機を前に、逃げることはできない。


「分かった…やってやる!」


翔平は剣を握り直し、再び守護者に立ち向かった。

その瞬間、剣の光がさらに強く輝き、翔平の全身を包み込んだ。


剣が守護者の防御を貫き、その身体を切り裂いた。

守護者はわずかに揺らぎ、崩れるようにして消滅していった。

最後に残ったのは、小さな光の球体だった。


「これが…キーコードか」


翔平はその光を慎重に手に取り、ブレスレットに吸収させた。

再び腕から力がみなぎるのを感じた。


「次のキーコードを探すぞ。まだ終わりじゃない」


翔平は自分の中に芽生えた自信を感じながら、階段の先を見上げた。

新たな試練と謎が、彼を待ち受けている。

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