第11話

バイスの歳は俺よりも上で


上司からハラスメントを受けている



引き留めや引き延ばしに遭っている



退職を伝えるハードルが高い



職場の雰囲気が悪い


退職を相談する度に上司に引き延ばされる


などなど辛い状況で逃げ場のない人を助けたりしてるのに、その傍らダンジョンに行ったりもしている。


俺の仲間であり俺がもっと尊敬している人だろう。


「なんだか、凄い人ですね。」


「そうなんだよ、まず脱退代行なんて考えつくのが凄いんだよね。」


「でもなんでこのタイミングで会いに?」


「一つは馬車で話した事、それにちょうどトライで明後日に年に一度のお祭りがあるんだ。たまには休暇もいいかもなってさ!」


「流石ですね、ラモンズさん!」


どうやらバイスさんに会うついでにそのお祭りも楽しめるらしい。


「まあ会うのは夕方頃だからそこまでは自由行動しようか。」


「じゃあウチはラモンズさんとデートに…」


「え!じ、じゃあ私もラモンズさんと!!」


「ええ??」


まさかこんな異世界ハーレム作品みたいな展開になると思ってなかった俺は変な声が出てしまった。


「良いじゃない、ウチが来るまでは2人で旅してたんだし!」


「ダメですよ!わ、私もラモンズさんと話したい事があるんです!」


「もう…分かりました。ここはラモンズさんに決めてもらいましょうか。」


「そうですね、エレカさん!」


じーっと2人が見つめてくる。


「ブ、ブースト!」


「あ、逃げた!!」


「アイリス!拘束魔法使ってください!」


「はい」


「たまには2人でゆっくりしなよ!じゃ!」


咄嗟に逃げてしまった。


「はぁ、まあ良いです私あなたが初めての友達なの。」


「私もですよ、エレカさん。」


「じゃあこっそりラモンズさん逃げる前にスティールした子の財布で食べ歩きでもしますか〜」


「え!ダメですよ!それに財布無くしたって焦るんじゃ…」


「大丈夫ですよ、代わりに石の詰まった財布と変えといたので。」


「アハハ…」


エレカさんは豪快だなぁ…


その後はエレカさんと2人でトライの街を堪能した。


「いや〜でも不思議だなぁ…」


「何がですか?」


「まさかこうやってさ、旅をして縛られないで生きていけるっていう未来があったんだなって思ってさ…てか私の事気軽にエレカって呼んでよ。」


「でも…」


「初めて出来た友達なんだから…当たり前でしょ?」


「そ、そうですよね。」


「その敬語もやめていいからね?」


「は、はい!分かりました!じゃなくて…分かった。」


「ラモンズの力になりたいね。」


「はい!」


私達はやはり自分の事のように力になるラモンズさんに救われて不器用でもまっすぐな人間に憧れているんだと思った。


「お〜い!」


「お、来たよ。」


「そうだね。」


「そろそろバイスに会いに行こうか!」


「はい!」


「てか、エレカ…財布スティールしただろ?」


「てへへ…」


「ま、2人が楽しかったなら良かった。じゃあ行こうか!」


2人で遊んだ時間はあっという間だった。

こんな楽しい日々が来るとは思ってなかったし、両親の後ろめたさなのか楽しんではいけないとか勝手に自分ながらに思っていたのかもしれない。


.


.


.


「ここだよ!」


そう言って酒場にやってきた。


ガランガラン〜


「いらっしゃいませ〜」


「すいません、バイスで予約してるのですが…」


「はい!もうお待ちになってますよ!」


店員さんの案内で2階の席に向かった。


「おぉ久しぶりだね、ラモンズ君。」


「会いたかったよ!バイス!」


しっかり者で年上のイメージしかないラモンズさんが犬のように懐いていた。


「こんにちは!」


「こ、こ、こんにちは…」


友達の友達…

人見知りの私には1番苦手なシチュエーションだった。


「紹介するよ、魔導士のアイリスに盗賊のエレカだよ!」


「おぉ、もう2人も見つけてきたんだね。」


「よろしくお願いします。エレカです。」


「お、お願いします。」


「ちょうど良かったよ、俺も何故か懐かれてな最近パーティを組んだんだ。紹介するよ。


そう言って奥に座っている人達が立ち上がった。


「このクールな男の子がアレク。無口だけど、女の人が苦手なだけだから気にしないでくれ。僕の初めての脱退代行のお客さんでね、元のパーティでは雑用として扱われていたが相手の弱点を瞬時に把握したり、バフをかけたり…何より火、水、風、土、光、闇全ての魔法が使えるんだよね。」


「……。」


紹介の後、アレクさんは一言も発さなかった。


「私と同じですね。」


「なるほど…流石はラモンズが見つけてきただけあるね。」


「あ、ありがとうございます。」


全属性の魔法を使えるのはやはり凄い事なのだろうか…


「次はモナ、モカの獣人だよ。双子の狩人で弓と槍を得意としているだけど、2人とも耳もよく咄嗟の判断で敵と戦える天才だよ。」


「姉のモナですニャ!」


「妹のモカです」


お姉さんの方は語尾にニャが付いているけど、妹さんの方は普通に話していた。


「そして彼が…」


「俺の名前はルーク。斧使いの闘士だ!よろしくな!!!」


「彼はかなり力があってね、最前線で相手を裕に薙ぎ倒す事が出来るんだ。」


「これが今の僕のパーティ…というよりは脱退代行会社”ライフオブホープ”の社員だね。」


意外とアンバランスそうでこの5人が揃う事できっと私達とは比べものにならないぐらい手練れ達なんだろうと思わされた。


ー続くー

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