脱退代行編

第10話


メリルガを出た私達は次なる街を目指していた。


「ラモンズさん!次はどこ行くんですか。」


「次は仲間集めは一旦お休みして、俺が1番世話になってた街に行きたいんだけどどうかな?」


「ウチはどこでもいいですよ、借りを返せれば。」


エレカさんは未だに借りを返すと言って旅に同行してくれています。すっかり私達の仲間です。


「2人とも”トライ”って街知ってる?」


「トライって言ったらこの国1番のギルドがある冒険者が集う街ですよね!」


「ラモンズさんはそこの出身なんですか?」


「いや、出身は違うけどそこの街で色々なダンジョンに行ったりクエストをこなしたんだよね。」


「でもなんでトライに?」


「仲間に会いに行くんだよ。」


「ラモンズさんの仲間ねぇ〜」


「まあ凄く良い人だし会えば2人とも仲良くなれるんじゃないかな?」


ラモンズさんの仲間…きっと癖の強くてでも強い方なんだろうな…


なんて私とエレカさんは考えていた。


道中は中々の距離があって数日かけてトライまで向かうという話になった。


ぐおおおお!


「う、うわああ」


「どうしたんですか?」


馬車の御者さんが突然叫んだ。


「ジャ、ジャイアントベアの群れだ!」


時間帯が悪かったのか目の前にはジャイアントベアの群れが現れた。


「御者さん一旦馬を止めてください!アイリス、エレカ行くぞ!」


「はい!」


「おう!」


なるべく戦闘を避けつつジャイアントベアを他の所に興味を持たせるしかない…


「アイリスは出来るだけ攻撃魔法は避けてあまりあいつらを興奮させないように。」


「はい!」


「エレカは短刀で戦いつつ閃光玉を使ってくれ。」


「分かりました。」


この旅でエレカは本当に器用な事が分かった。

武器を作ったり、目眩しや状態異常にさせられるようなアイテムや罠など色々な物を想像や一回見ただけである程度作れる本当に成長も早くて凄い子だ。


「俺は、最前線に出る。」


ジャイアントベアは基本群れをなさない事で有名なのだが繁殖期の数ヶ月は一匹のボスと沢山のメスが集団で移動する事がある。


厄介だがボスを見つけれられれば…


「スリープ!!スリープ!!」


ぐおお…


アイリスも相当成長しており、今では瞬時に魔法を使い分けたり、昔よりも恥ずかしさみたいなものは薄れてきているのかもしれない。


何匹か眠らせる事は出来たのだが、やはりボスが見当たらない…


「ま、まさか…」


ぐおおおおおお!!!!!


そのまさかだった。

ボスは敵に出会した時、一度穴を掘り姿を隠し相手の後ろに回り込む習性があった。


「人相手にもやるとは…クソ、届け!!ライトニング・パニッシュメント!」


光よりも早く、敵に一直線に!!


斬る!!!!!


ぐ、ぐおおお…


「間に合ったな…」


なんとかボスのジャイアントベアを気絶させる事ができた。


「ボスがやられたらメスのジャイアントベア達は俺らを襲ってくる事はない。御者さん今の内に行きましょう、良い連携だったな!アイリス!エレカ!」


「はい!なんとかなりましたね。」


「当たり前じゃないですか。」


2人の成長スピードは凄まじい…俺も負けてられないな。


「皆さん本当にありがとうございました。あと数時間でトライに着くと思いますので。」


「はい!」


遂にラモンズさんが育った街トライに行けるみたいです。


.


.


.


「着きましたよ。」


「ありがとうございます。」


「ここが、冒険の街…トライ!」


街自体はそこまで広くないのだが強そうで色々な職種の人がいた。


それに…


「エルフや、獣人もいるんですね。」


そこは人種の壁を越え色々な者たちが住み着いていた。


「おい!それってどういう事だ?」


「私たち何も聞いてないんですけど…?」


「いや、だからですね〜」


なにかパーティが揉め事を起こしているみたいだった。


「それになんだよ!脱退代行って!」


「何と言われましてもね…」


「なんだか揉めてますね。」


「あ、あぁその〜今問いただされてるのが俺の友達なんだ…忙しそうだし後で声かけるか…」


.


.


.


私達は街の中心部に来た。


「いや〜メリルガと違って綺麗ですね。」


「エレカはメリルガ意外の街には行った事ないのか?」


「ウチはスティール・リフトでも基本はあそこの倉庫にいてみんなが盗んできた物を解錠したりするのが仕事だったんですよね〜」


「そうなのか、アイリスも基本はライズ村に居たんだろうからさぞかし…」


「す、凄いです!怖い人とあまり居ないし、なんだか空気が美味しいです!!」


「なに?私の地元バカにしてる?」


「いや…そういう訳じゃ…」


「冗談よ。」


すっかりアイリスとエレカは仲良しになっていた、今まで男女2人で行動してたからアイリスを気を使う所があったのかもな。


「そういえば、さっきのラモンズさんのお友達っていうのは…」


「ああ、奴はかなり特殊な仕事をしててな…」


俺の仲間バイスという男は、パーティ脱退代行サービスという本人に代わってパーティに脱退の意思を伝えたり、脱退手続きやその後の活動をサポートしたりするサービスをやっている男なのだ。


特にスキルがあったり強いという訳ではなく、ただ人情があり素直で優しい銀髪の丸メガネイケメンだ。


ー続くー

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