第15話

以前、美術館の常設展示を回るギャラリートークのイベントで、ボランティアさんが案内役として付いてくれた。


友人と僕、ボランティアさんの三人で展示を巡りながら、作品についての感想を言い合った。



友人が答える感想と僕の感想は、まるで違う。


何度かやり取りを繰り返した後、「僕ら、性格が真逆なんですよね」と言うと、ボランティアさんは少し驚いた顔をして「なのに、仲がいいんですね」とおっしゃった。


仲がいい?


その言葉に友人も僕も少し固まり、笑いを浮かべて「ハハハ」と濁した。



幼稚園から中学まで、僕らはずっと同じ学校に通っていた。


彼とのいい思い出はひとつもない。


大人になってからも、彼は僕の「友達の友達」だった。



いつからだろう、彼と二人でどこかへ出かけるようになったのは。


長い付き合いにはなるが、今でも彼とは気が合わない。


気が合わないから、いいとも思う。


仲がいいって、なんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る