ヨはヨークのヨ

第11話 初クエスト

ライトが訪れたカインズの街はアカマット村から乗合馬車で7日ほど離れた場所にある。


村周辺から離れたことのないライトにとって

ここまでの道のりだけでもすでに大冒険なのだがそれはまた別の話だ。


カインズの街は周囲を壁に守られていて途中でみたどの村や町よりも大きく人も多かった。


見るもの全てが真新しくキョロキョロとしている様子はそのまんまおのぼりさんである。


街に着いてからもいろんな人にギルドの場所を聞きながらようやくたどり着いたのがさっきの話。


G級が受けられるクエストは主に採取や狩猟、あとは簡単なお手伝いなどだが、

ライトは最初、採取と狩猟を中心で活動するつもりだ。


ギルド内にあるクエストボードに張ってある依頼書を見てみるとよくわからなかった。


聞いたことのない植物らしき名前ばかりでライトは困惑してしまう。

(村とは色々と違うみたいだな)


そんなことを考えながらクエストボードを見ていると一番左側に常設クエストの欄を見つけた。



・食用の小動物5匹 銅貨25枚

・薬草(回復、魔法回復)20束 銅貨10枚

(これなら出来そうだけど)


そう思ったもののどこに行けばいいのかもわからない。


ライトが途方に暮れていたところ見かねたサイファが声を掛けてきてくれた。


「ライトさん、なにかお困りですか?」


少し屈んで目線を合わせてサイファが聞いてくれる。(ぽよん)


「こ、このクエストをやりたいんですけど、場所がわからなくて」

クエスト欄に指さしながら目は泳ぎながらもサイファを見てライトが応える。


「常設クエストなら北門からでてしばらく歩いて左手にある森がおすすめですよ」

サイファが丁寧に教えてくれた。


「あ、ありがとうサイファさん、北門からでて、しばらく歩いて左ですね、行ってきます!」


「はい、いってらっしゃいませ、ご無事なお戻りをお待ちしています。」


ライトはサイファに手を振って軽快に駆け出していく。


(胸ぽよんの大きなお姉さんだった)


もちろん北門もわからないが駆け出していく。


お日様は真上よりちょっと手前なのでほぼ背にして道を掛けていたがライトは急に立ち止まる。


スンスンと鼻を働かしてその匂いをたどり足を向けるとそこには串焼きの屋台があった。


「らっしゃい!一本銅貨2枚だよ」

目があっただけで屋台のおっちゃんが声をかけてきた。


「二本ください!」

ライトも元気よく応える。


「はいよ!」

サッとおっちゃんが串を差し出してくる。


「はい」

ライトもサッと銅貨4枚を渡して串を受け取る。


「うまそう~、おじさん、これなんの肉?」

そう聞きながら肉に齧りつく。


「おう、坊主、これはホーンラビットのモモ肉だよ」


焼きたての肉にいきなり大きく口を開けかぶり付く。


歯ごたえのある肉は甘辛いたれがよく絡んでいて中々嚙み切れないが噛めば噛むほどしっかりとした肉の味がしみだしてくる。


「ふまひへほほほひふ(美味いねこのお肉)、はめははふほほ(嚙めば噛むほど)ゴクッ味が出てくるね」


「お、坊主、わかるか!」

おっちゃんは嬉しそうな笑顔を返してくれる。


「ホーンラビットは北門の先の森にいる?」

「ああ、たくさんいるぜ」

「じゃあ、たくさん捕ってくるね!」


ライトはおっちゃんに手を振り串焼きを食べながらなんとなくの方向へ北門に向かっていく。


初めての大きな町は思いのほか建物も多くライトはすぐに北門にたどり着くことはできなかった。


それでも迷子になるすんでのところで人に道を尋ねようやく北門にたどり着いた。


入るときもそうだったがこの町の門は見張りは居るが出入りは自由のようでただ日没と同時に閉まるそうだ。


北門を抜けると街道はそのまま北に向かって伸びていてその両脇には青々とした麦畑が続いている。


更に道の先を眺めるとそこには森が広がっておりライトは少し安心する。




「森だ」


街道から少し外れた森の中

木漏れ日の下、土や草の匂いを吸い込み自分のフィールドに戻ってきた感触を確かめている。


しばらくはこの町とこの森が活動の中心になる。


「お金を稼ぐ、町での生活に慣れる、冒険者としての知識と経験を積む、魔法の練習・・・」


やることは山積みだでも、

ライトは目を閉じて森を感じてジッと耳を澄ます。


木々を揺らす風の音、鳥たちの鳴き声、小動物の気配、アカマットの森と差異を感じ取ってみる。


ゆっくりと目を開き気配のした方に自然と体が一連の動作をしてくれる。


「サンダーボルト」


もう何千何万と唱え指先から放たれるボルトは目標を的確に捉える。


「キュ、」


短い悲鳴。倒れる標的。


「これが串焼き肉ホーンラビットかな」


文字通り額から小さな角を生やしたウサギがそこに倒れていた。


ムーから貰ったマジックバックにホーンラビットをしまう。





日が赤く染まり始めたころには薬草20束と串焼き肉8羽、カラアゲ鳥が2羽を獲物として得ていた。


特筆すべきは放った10発のサンダーボルトが全てヒットして無駄なく獲物を得られている点である。


(まずまず順調かな)


ライトはそう心の中で呟いて町へ冒険者ギルトへと戻っていく。






「採取してきたものはどうすればいいのですか?」

ライトがギルドのカウンターで尋ねる。


「あちらの買取カウンターへおねがいします」

ギルド嬢が奥のエリアのカウンターに手を向けて教えてくれる。


「ありがとう、お姉さん」

ライトは丁寧にお礼をして奥の買取カウンターに向かう。


「買取おねがいします」

買取カウンターの前で言うと


「じゃあ、このカウンターの上に出して」

細身の男性の買取担当の職員から受付よりも少し低くなっているカウンターに出すように言われる。


「はい、おねがいします」

マジックバックから今日の獲物たちを並べていく。


「薬草20、ホーンラビット8、モリバト2だね、全部買取でいいね。

ギルドカードは持ってるかい?」


「はい」

っとギルドカードも渡す。


「はいよ、薬草も丁寧に処理されてるね、獲物にも目立った傷はないからそのままの査定で大丈夫」


ギルド職員はテキパキと獲物を確認して査定を終わらせていく。


「常設クエストの薬草採取と狩猟×2完了です。これをもって受付カウンターにいってくれ」


そう言ってギルドカードと査定表と書かれた紙を渡された。


「おねがいします」

ライトが元気よく受付カウンターで声を出すと


「こちらへどうぞ」

と呼ぶ声がする方へ向かう。


「おかえりなさい、ライトさん」

そこにはサイファが居た。


「た、ただいま」

いきなりだったのでライトはちょっと驚いた。


「無事なお戻りを嬉しく思います」

サイファは笑顔でそう言いながらライトの方に手を伸ばす。(ぽよん)


ライトは少し後ずさりしおずおずとギルドカードと査定表を手渡す。


「初日にちゃんとクエストをこなせるのは素晴らしいです、経験があったのですか?」


ギルドカードを受け取り査定表を見ながらサイファがいう。


「・・村で、いつも、採取して、いたから」

口がスムーズに動かない、なぜか顔と耳が熱くなってくる。


「そうなんですね、はい銅貨60枚とG級3ポイントです、ご確認ください。」

そう言って木のトレイにのった銅貨60枚とギルドカードがライトの前に差し出される。


ライトは慌てて数えもせずに銅貨とカードをマジックバックにしまい、トレイをサイファに返す。


「クエストお疲れさまでした。またのお越しをお待ちしております」


「は、はい、ありがとうございました」

逃げるようにその場を立ち去ろうとしたが

戻って来てサイファに聞いた。


「あ、あの、僕が泊まれそうな宿屋を教えて欲しいんですけど」


「そうですね。

大部屋で毛布だけを借りてみんなで寝る部屋は一番安いです

あとは食事なしで眠るだけの小さい個室

ご飯の美味しい「そこで!」」


「はい?」


「ご飯の美味しい宿をおしえてください!」


そう、ライトの家庭では食事の優先順位は何よりも高いのである。

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