第6話 練習2

「魔法はイメージが大切」


先ほどの失敗?を反省し今度はサンダーボルトを試そうと並べた石のほうを見る。


視力も完全に回復し魔力残量もまだいけそうな感じがしたので目標に対して適当な距離を取る。


「サンダーボルトは雷を矢の先のようにして

体内の魔力を飛ばし標的を穿つ魔法」


ムーの言葉を反芻する。


そしてムーの放ったサンダーボルトを思い出す。

恰好を威力をどう構えどう放ったか

目を閉じると鮮明に思い出されるそのシーンを再確認する。


左手親指は自然に立ち

人差し指と中指は揃って目標に向かい

薬指と小指は軽く握りこむ。

体勢は目標に向かって半身

肩から腕、指先まで一直線に

首を少し斜めに傾け視線はピッタリとその直線の上に乗せる。


その先には目標の石


人差し指の先から雷の矢が射ち出されるイメージ、魔力は最小になるように意識して唱える。


「サンダーボルト」


一瞬にして体の中心から腕を通り手のひらの魔法陣に魔力が注がれていき指先から魔力が雷サンダーを帯びた矢ボルトと化し放たれる。


パシュンっと乾いた音を発し石に向かって閃光が走り目標としていた中心を捉えたが倒れるだけで割れることはなかった。


「ちゃんと当たったけど、割れなかったな」


ライトの大股5歩程度の距離からの射撃なので当てるだけならばそんなに難しくなさそうだったので


次は倍の10歩の距離をとった。


「石、小さい」


立ててある残りの石に向け魔法を使う。


パシュン、パシュン、パシュン、パシュン、パシュン


5発のうち石に当たったのは1発だけ、それもギリギかする程度だ。


「この距離だと難しいなぁ」


頭の奥のほうが少しボーっとするので来るときに採取しておいた昨日ムーに教えてもらった魔力回復の薬草を齧った。


「にがぁー」

舌をだしながら倒れた石を立てて10歩の位置に戻る。


薬草は思いのほかすぐに効力を発揮してくれたので魔力切れの心配はしなくてすみそうだ。


ライトは夕暮れになるまで時間を忘れてサンダーボルトの練習を繰り返し続けた。

その甲斐あって今の位置からならば半分以上は命中させられるようになってきた。


魔力の減りを感じたらその都度薬草を齧っていたのだがもう何発サンダーボルトを撃ったか数え切れなかった。


ライトがそんなにも魔法を行使できたのは昨日、ムーがリミッターを緩くしてくれたことが理由だが今はそれを知る由もない。


少年はただひたすらにいつかドラゴンを倒せるようになるという目標のために魔法の練習を繰り返すのだった。




練習を終えた帰り道、腕も指も頭も重くいつもは快活だった足取りもいうことをきいてくれない。


ライトはふぁーとため息をつき調子に乗ってやりすぎたと少し反省しながら暮れかかる家路を急ぐ。


家に着いた頃にはもうフラフラだった。


「ただいま~」


背負い籠を重々しく置きながらいう。


「「おかえり」」


母親とティファの声が応じる。


「お兄ちゃん今日は何を採取してきたの?」


ティファが聞いてきた。


「ああ、ティファの好きなカラアゲ鳥があるよ」


「わぁぁぁーやった!お兄ちゃん大好き!」


そう言ってティファが飛びついてくるがライトはクタクタで丁寧な対応はできない。


ティファが胸に顔を埋めぐりぐりしていたがその動作を止めて鼻をひくひくし


「お兄ちゃん、なんか草くさい」


そういいながらライトから離れていく。


薬草の食べ過ぎたあとになんのケアもしていないのだから仕方ない。


その様子を見ていた母親がいう。


「随分と疲れてるみたいだけどどうしたの?」


いつも元気印のライトらしくない姿に自然と問うてきた。


「鳥を追いかけて草むらに突っ込んだからだよ」


「・・・そう、怪我はしてないのね」


「うん、大丈夫だよ母さん」


「それじゃあ夕食にしましょう」


ライトは体がままならなかったし薬草の食べ過ぎだったが夕食はいつも通りちゃんと食べた。


なぜならライトの家では食事の優先順位は何よりも高いからだ。

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