第4話 親心
ムーと別れたときには日が傾きかけていた。
教えてもらった魔力回復のキノコを少し採取し
家路につくことにした。
森の中の帰り道、ライトは生活魔法のトーチの練習をしながら歩いていた。
普通、生活魔法は魔術師ギルドや魔法学院で教わるものなので
まだ幼いライトが生活魔法を使えるのは稀なことである。
ライトは無意識にも顔がニヤニヤとしてしまう。
新しくできることが増えたのが嬉しくてしかたない。
ただ、何度も右手の人差し指の先にトーチを点けたり消したりしていたら頭の奥のほうにボーっとする違和感がする。
「これが魔力が減ってきたってことかな?」
ライトは魔法を使うのを止めて今度は体内の魔力を動かしてみた。
最初はムーが手をつないでライトの体内にある魔力を動かしてくれた。
魔力の存在を意識することはできたが中々自分では動かすことは難しかったが
ライトの魔法を使うと指の先に向かって魔力が動くのはなんとなくわかる。
「ん~~」
胸の奥にある魔力を動かそうとお腹に力をいれてみる。
「はぁ~~、まだちょっとしか動かないや」
魔力の感覚はあるが思う通りには動かない。
魔力を使うと魔力が増える
魔法を使うと熟練度があがる
魔力を動かすと魔力効率があがる
ってムーが言ってたな。
あとサンダーボルトとキノコは秘密。
生活魔法は使っていい。
「早くサンダーボルトをみんなに自慢したいなぁ
でも内緒!
明日からは早くドラゴンやっつけられるように魔法の練習しよ!」
そうひとりごちり暮れかかる空のした家路を急ぐライトだった。
「ただいま!」
背負い籠を扉の横に降ろしながらライトが声をあげる。
「おかえりライト」
キッチンで夕食の支度をしている母親が応える。
「ねぇねぇ母さん、今日、森で魔法使いの人に会ったよ」
嬉しそうにライトは報告をする。
「変な人じゃなかった?」
母親は心配そうにライトのほうに顔を向ける。
「うん、親切な人だったよ、キノコをあげたら魔法をおしえてくれた!」
急ぎ足で母親に近づいていくライトに母親はキョトンとした顔をしてライトの顔を覗き込む
「魔法を?キノコで?」
母親はすぐには事態を飲み込めずにいる。
もともとライトはあまり莫迦なことを言う子供ではなかったので困惑してしまう。
「うん、そうだよ、ほら、トーチ!」
そう言ってライトは右手の人差し指を立てその先を光らせて見せる。
ドドドドドドドドドッ
「なにそれー!」
どこからともなく妹のティファが走って来てライトの右手を両手で掴み自分の目の前に引っ張り
光っているライトの指をまじまじと見つめる。
「いいないいな~おにいちゃんいいな~ティファもやる!」
ライトの腕をガシガシ引っ張りながらティファがねだるように言ってくる。
「ちょ、ちょ、まってティファ落ち着いて」
ライトがなだめるもまったく聞く様子はない。
ティファは掴んだライトの腕を右に左にゆすりながら視線はその先の光をみつめていたが
ふいにティファの右手が伸ばしたライトの指をくるみこんだ。
そのくるんだ手越しにも淡い光がもれているのも一瞬光が消えた。
「あ、消えちゃった」
ティファのテンションも下がる。
「消したんだよ、ティファが話を聞かないから」
ライトはツンと顔をそらしながら言った。
「おにいちゃんのケチ!」
ティファは舌を出して悪態をついて見せた。
「さ、話は夕食にしながらしましょう
お料理を運ぶの手伝ってちょうだい」
母親が言うと二人はそろって
「はーい!」
素直な返事をする。
山菜サラダ、そら豆入りパン、キノコのスープを二人で仲良く運ぶ
そう、ライトの家では食事の優先順位は何よりも高いのである。
「困っていた魔法使いにキノコを上げたらお礼に生活魔法を教えてくれたってことだな」
「そうだよ父さん」
今日の一連の出来事を家族に話し父親のまとめに相槌をうつ。
もちろん、サンダーボルトと希少キノコは内緒だ。
「幸運なことだな、神に感謝を」
そう言って父親な手を組み目を閉じて祈りを捧げる、母親とティファもそれに続くのでライトも目を閉じて祈りを捧げた。
「ライト、その魔法はあまり人前で使ってはいけないよ」
「なんで?」
「お前を守るためだよ
便利な力があるとそれを利用しようと考える人がいるかもしれないからね
この村には悪人はいないがよそから来た者にお前が連れ去られたら大変だ」
「うん」
「世の中には様々な悪意や不幸が転がっている
それがいつ自分に降りかかるかわからない
父さんが守れる範囲は全力を尽くすが
手が届かないときは母さんとティファは男のお前が守るんだぞ」
「僕が母さんとティファを守る・・・
うん、わかったよ父さん」
ライトはいつも穏やかな父親からいつもとは違う重さのある言葉を
しっかりと胸の奥で受け取った感じがした。
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