1999年 4月 ③
新汰はあづみの友人らのひとりで、去年、4年生のときもクラスがおなじだった。にこにこしながら新汰が言う。
「いっきもかずも、おんなじクラスだよ」
野坂樹と駒田数。あづみがとくに親しくしている友人は、新汰を含めてこの3人。あづみの学年がふたクラスしかないことを鑑みても、あづみにとってついているクラス替えだった。
「よかったねぇー」
あづみが笑うと、新汰は「おまえ、他人事みたいに言うなって。また遊べるな」とあづみの髪をわしゃわしゃかき回した。
「あづ、きょう始業式のあとかずんち行こうぜ」
「きょうはお兄ちゃんと出かけるから」
「おまえんち、きょうだい仲いいよなー。兄ちゃん、すっげえ優しいもんな!」
俺んちのもああいうふうだったらなーと新汰は自分の坊主頭をつるりと撫ぜる。そして、あづみの手元を見ると「相変わらず、本が好きだな……」とちょっと呆れたように言った。短く手を挙げると、「大造じいさんとがん」の邪魔にならないようにだろう、自分の席のほうに歩いていった。
ホームルームを終えて家に帰ると、「あづみくん!」と兄の部屋からまどかが顔を出した。自分の部屋のまえを素通りして、ちぐさの部屋に飛び込む。
「まどかちゃん、ひさしぶりー」
「受験が大詰めになってから、会うことなかったからねえ。あれ?また背が伸びたみたい」
まどかが大人びたようすで目を細めるので、あづみはちょっと居心地悪くもじもじした。
ちぐさもそうだけれど、大学生になって、どこか見えないところが急に大人にぐんっと近づいたような気がする。大好きなまどかから、ぎこちなく視線を逸らした。
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