第707話A いよいよキャンプイン(12回目)
自主トレが終わると、いよいよキャンプインだ。
12回目を迎えるが、何度経験しても武者震いというか、高揚した気分となる。
1月終わりということは、もしポスティング申請していたら、結果がでているはずだ。
どうなっていたんだろうと思わなくもないが、悩んで迷って決めた選択。
これが正しいと思いたいし、思わなければならない。
ということで、今日は真冬の札幌に家族を残し、沖縄のキャンプ地に旅立つ。
「行っちゃうの…?」
身の回りの荷物を入れたキャリーケースと、野球道具、そして水着とか沖縄の観光ガイドブックが少々入ったバッグを傍らに置いて、玄関で靴を履いていると、翔斗が悲しそうに行った。
僕は優しく翔斗の頭を撫でた。
「なに、生きていればまた会えることもあるさ。
だから翔斗もママの言う事を良く聞いて、強く生きるんだよ。翔斗は男の子なんだから、ママと結茉を守るんだよ」
「うん、わかった」
翔斗はしっかりと頷いた。
「そうだ。それでこそ、我が息子だ。じゃあ達者でな」
僕は立ち上がり、翔斗を高く持ち上げた。
翔斗は涙をこらえている。
「何バカなことを言っているのよ、翔斗。
来週にはパパの応援に沖縄に行くんでしょ。
嫌でもすぐに会えるわよ」
結茉を抱いた結衣が言った。
「いや、でも来週まで会えないし…」
「シーズン中は2週間くらい会えないことも、普通にあるでしょ。何言ってんの今さら。
ほら、早く行かないと飛行機に送れるわよ」
「アイアイサー」
ということで僕は待たせていたタクシーに駆け込んだ。
やばい、チームの集合時間に遅れるかも…。
ドラ◯エIIIのレベル上げを徹夜でやるんじゃなかった。後悔先立たず…。
新千歳空港は猛吹雪だったが、さすが雪国。
定時で離陸した。
しかしながら改めて、北海道の公共交通機関(飛行機、JR、バスなど)は凄いと思う。
よっぽどの事がない限り、雪で運休することは無い。そう考えると頭が下がる。
それでも運休になるのは、よっぽどの時である。
首都圏とかで、少しの雪で公共交通機関が麻痺すると、「それくらいの雪で…笑笑」という人がいる。
そういうのを“”北から目線“”というらしい。
ということで羽田で乗り換えて、無事に沖縄に着いた。
札幌は吹雪だったのに、沖縄は暖かい。
同じ日本でもえらい違いだ。
日本は南北に長いので、気候区分も亜寒帯から亜熱帯までまたがるそうだ。
ちなみに道東に阿寒湖いう湖があるが、“”亜寒帯にある湖“”が縮まって、亜寒湖→阿寒湖となったそうだ。
先日、球団職員の美園さんに教えてもらった。
(誰も信じないとは思いますが、もちろん嘘です。作者より)
ちなみに北海道にはクッチャロ湖、屈斜路湖、倶多楽湖と似た名前の湖がある。
これらがある場所とその形をすぐに答えられば、北海道人として初級はクリアである。
なお北海道の地名は、アイヌ語由来が多いが、地味に入植者の故郷をつけた地名も多い。(伊達とか新十津川とか北広島とか)
さらに言うと函館の地名には、五稜郭の戦いでの旧幕府側の人物から取ったものがある。
榎本町、梁川町、人見町、中島町とか。
残念ながら、土方町というのはない。
そんな事をとりとめとなく考えていると、バスはホテルに着いた。
今日はホテルに泊まって、明日は選手会主催の決起集会。
そして明後日からはいよいよキャンプが始まる。
チームメート、球団スタッフさんとも2ヶ月ぶりくらいに会った。
会う人、会う人に、「何でいるんだ」と言われた。
その度に「いちゃいけませんか?」、と返すのも感じ悪いので、「このチームで優勝したいから、残りました」(キリッ)と答えるようにしている。
さあいよいよ12年目のキャンプが始まる。
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