第3話 居たのかよ!
トイレから出て再び部屋に戻った俺はベッドに寝転がって、そばにいるであろう精霊に呼びかけた。
「なぁ?」
「ん?」
「お前さ。名前なんてぇの?」
「名前は無いよぉ」
それを聞いて溜め息。
「それじゃ俺が困んだよ」
「いちおうシルフィードとは呼ばれてる」
「名前、あるじゃねぇか!」
「人間が勝手につけて、そう呼んでるだけだよぉ」
「ほぉ。それで呼んでいいのか?」
「ど~ぞ~」
「んじゃあ。長くて呼びにくいからフィーって呼ぶわ」
「へーい」
姿さえ見せることなく会話は終了。時間は深夜だ。この宿の一階は閉まることのない酒場なので喧騒が聞こえる。しばらくぼんやりしていたら隣の部屋から男女の睦み合う声が聞こえてきた。
「励んでるねぇ」
フィーだ。しかし声を聞いてたら俺がムズムズしてきた。しかし俺のそばにはフィーが居る。流石に子供を抱く趣味はない。でもムズムズはする。一人でするにしても誰かとするにしても正直、困った状況だ。
「なぁフィー?」
「んー?」
「お前しばらく俺のそばから離れてくんね?」
「なんでー?」
「俺もしたいからだよ! 言わせんな!」
「発情してんの?」
「そうだよ!」
「私、別に気にしないよぉ?」
「俺が気にすんだよ!」
そう怒ったら「やれやれ」という声が聞こえてきて彼女は言い放った。
「レントは犬や猫の交尾を見てどう思う?」
「何とも思わねぇよ」
「それと一緒なんだけどなぁ」
フィーの言葉に納得しかけるが、違う。そうじゃないと気を取り直して俺は言った。
「見ているお前は良くても、見られている俺が気にするんだよ!」
するとフィーは「しょうがないなー」と言いながら気配が遠ざかった。
俺はその後、一階の酒場で売りもやっている女給に声をかけて金を払って……した。
明け方。その女性が出ていった後にフィーに声をかけてみた。
「フィー?」
するとすぐ返事があった。
「ん?」
「……お前。さては、ずっといたな?」
「…………」
居なくなったフリしただけかよ!
あぁあああああ!
しばらくベッドの上で俺は身悶えた。
※
※
※
いつまでも済んだことを嘆いていても始まらない。とりあえず仕事に行こうと朝の身支度を済ませて、冒険者ギルドへと足を運んだのだった。
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